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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
79 捜理協会篇
2991/4342

79-18 思わぬ提案

 アンとチェルの会話をモニタしていた老君は、仁に話しかけた。


御主人様(マイロード)、チェルさんは御主人様(マイロード)に会ってみたい、と思っているようですね』

「そのようだな」

『ですが、お気をつけください。利用しようという腹づもりかもしれません。データ不足なので断定はできませんが』

「そうか」

『はい。……どうやら『第2地下』を担当した技術者もしくは技術者たちは、『第1地下』の担当とは比べものにならないほど有能だったようですね』

「確かに、そんな感じだな」

『注意を怠らないようにしましょう』

「だな」


*   *   *


 そして『乗合自動車』はクゥプに到着した。時刻は午後5時半。まもなく夜のとばりが下りようとしている。


「ここでいいわ」


 町外れで『乗合自動車』を降り、アンは約束の1万トールを支払う。


「まいど。それでは、お気をつけて」


 『乗合自動車』は走り去っていった。


「今夜はどこかに泊まらないといけないでしょうね」


 とアンが言うと、チェルは思いがけない提案を行ってきた。


「ここの南の海上にある島に基地があるはずだから、そこへ行きましょう」

「ご存知なのですか?」

「もちろんよ」


 却下する理由もなく、チェルの案内で海岸方面へと向かう。


「ここよ」


 迷わず、『島基地』への転移魔法陣のある場所へ案内するチェル。


「知っていたのですか?」

「いいえ。ただ、この魔法陣からは微弱な信号が出ているので、それを感知すれば簡単なことですから」

「微弱な信号が?」


 老君はその信号に気が付いていたのだろうか、とアンは思ったが、すぐに疑問を打ち消した。

 あの老君が、気付いていないはずはないから。

 まして、世界一の魔法技術者、仁もいるのだから。


 そして転移魔法陣のある地下室から、一行は『島基地』へと転移したのであった。


*   *   *


「これは予想外だったな」

『はい、御主人様(マイロード)


 蓬莱島では、仁と老君が顔を見合わせて(比喩)いた。


「あの転移魔法陣が余剰魔力を周囲2キロほどに発信していたのはわかっていたが」

『はい、御主人様(マイロード)。それを感知できるとは、『第2地下』の自動人形(オートマタ)は優秀ですね』


 もちろん、仁と老君は、転移魔法陣が微弱な魔力波を発していることは知っていた。

 が、それを感知できるようなゴーレムや自動人形(オートマタ)がいることは予想していなかったのだ。

 おそらく専用の受信機を持っているのだろう、と推測する仁であった。


「しかし……『第1地下』と『第2地下』で、それぞれに所属するゴーレムや自動人形(オートマタ)の性能はばらついているな」

『そうですね、御主人様(マイロード)


 そして仁と老君は、『島基地』の観察を続けるのだった。


*   *   *


「予想よりも荒廃していますね」

「ここは『ルトグラ砦』の戦闘用ゴーレムに荒らされたと聞いています」

「なんですって? ……そうでしたか」


 アンの説明に、チェルは一人納得していた。


「あそこの魔導頭脳……『イザーク』とか呼ばれていましたね? あいつはそこまで利己的だったのですか……」

「そのようですよ」

「……自分の基地の機能維持が最優先なのはわかりますが、そこまで好き勝手するとは……」


 残念そうなチェルであった。


「そうですね。普通なら、『こういう理由で資材が必要なので協力してくれ』と話を持ちかけますよね」

「ええ、そうですね」


 そして、おそらくユミィとヴェラに対しても、『ついては君達も、より完成度の高いこっちの基地に移動して欲しい』と説得するのではないか、とアンは想像していた。


「あそこの『イザーク』は不完全で未完成だったのですね……まあ、だから私たちが目覚めたわけでしょうが」


 チェルの言葉に、アンは疑問に思っていたことを聞いてみることにした。


「それにしても、あなた方は700年も保管されていて、その間大丈夫だったのですか?」

「大丈夫、とは? ……劣化しなかったのか、ということなら、専用のメンテ担当がいましたから、とお答えしましょう」

「専用のメンテ担当?」

「そうですよ。あなたのような青髪ではなく、白髪の自動人形(オートマタ)をはじめとする、高性能な魔導人形には、専用のメンテ担当がいるのです」

「それは、やはりゴーレムなのですか?」

「もちろん。整備専用で、あの基地には5体いました。彼らもまた互いに整備しあっていますので、700年くらいはなんということもないですね」

「そうでしたか」


 これで、『第2地下』の空気がノーマルだった理由も明らかになった。

 その『メンテ担当』ゴーレムが基地内の魔導機(マギマシン)なども整備し続けていたのであろう。


「……それにしても、本当に、見事に何もないですね……」


 呆れたようにチェルは言った。

 今、一行は『島基地』内を見て回っているところだ。

 『職人(スミス)』たちもおらず、『簡易転移門(ワープゲート)』も撤去してあるので、仁たちの痕跡はない……はず。


「ここの部屋は少しマシのようですね。でも、幾つか持ち出されているようですが」


 『薬草の栽培室』を見て、チェルがそう言った。


「一体誰が持ち出したのです? 『イザーク』やその配下ではないでしょうね」


 魔導頭脳やゴーレムには、薬草は不必要なものだから、とチェルは言った。


「多分、偶然ここを見つけた人間です」

「そうですか……それなら仕方ないですね」


 チェルも人間の仕業には寛容なようだ、とアンは感じた。


 それからも施設内を見て回る。

 大金庫室の穴には、呆れ、続いて立腹する。


「『イザーク』……あのぼんくら魔導頭脳は何を考えていたんでしょうね……この施設は人類最後の砦だったというのに」


 その言葉に、アンは聞き返した。


「……やはりここは『最後の砦』だったんですね」

「ええ、もちろんですよ。地理的にも好都合でしたから」

「ですが、未完成に終わってしまったのですね」

「そうですね。おそらく『魔素暴走エーテル・スタンピード』のせいです」

「それを知っているのですか?」

「ええ、一応は」

「でも、自由魔力素(エーテル)が激減して、ゴーレムや魔導具は皆停止したはずですが」


 だが、アンのその言葉に、チェルはふんと鼻を鳴らした。


「わたくしたちは皆、消費魔力は最低限でも動作できるよう製作されていましたからね」

「ああ、『魔族』に探知されないようにですね」

「そうです。わかっているじゃあありませんか」


 やはり、白髪の自動人形(オートマタ)は青髪の自動人形(オートマタ)を見下しているふしがあるな、と感じたアンであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210621 修正

(誤)チェルも人間の仕業には肝要なようだ、とアンは感じた。

(正)チェルも人間の仕業には寛容なようだ、とアンは感じた。

(誤)やはり、白髮の自動人形(オートマタ)は青髪の自動人形(オートマタ)を見下しているふしがあるな、と感じたアンであった。

(正)やはり、白髪の自動人形(オートマタ)は青髪の自動人形(オートマタ)を見下しているふしがあるな、と感じたアンであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱ魔導頭脳イザークの行動は当時の同じ軍の所属でも非常識な行動だったわけですか
[一言] ポンコツイザークよりは出来は良いけど、態度悪い奴だなぁ 人間相手なら、また違った顔を見せるんでしょうけど ラ「造物主である人間には、傲慢な態度取らないだろう……とは言えない」 公「む?言え…
[一言] >あのぼんくら魔導頭脳は何を考えていたんでしょうね まあ、そうですね 実際、言ってる事は青髪だからと見下してる事以外は至極真っ当だし しかし、それなのにここまで見下すとなると……製作者がそ…
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