79-07 作戦開始、だが……
老君による『島基地』の調査報告が続いている。
『内部の資材は、持ち出された結果、ほぼ0です。そのため、今後も施設を使うなら、資材を持ち込む必要があります』
「なるほど。……地理的には結構重要な場所なんだよなあ」
外洋航海とまではいかないが、ショウロ皇国とセルロア王国を船で結ぶなら、途中の寄港地として使用することもできるわけだ。
リゾート地にもなるだろう。
「その時の管理はユミィとヴェラに任せるか」
『はい、御主人様。……だいぶ前に各国に配った『アルス儀』にはよく見るとあの島々も描かれています。これまで気にした人はいなかったようですが。それはすなわち関心の薄さを示しております』
「それはそうか」
『はい。ですので、そこを御主人様が、あるいはマキナ3世が借り受けて管理し、寄港地として整備するのがベターでしょう』
「おお、なるほどな。今回の騒動が終わったら申し入れてみよう」
『それがよろしいかと』
ショウロ皇国には『アドリアナ記念館』、フランツ王国にはサーキット、クライン王国には飛行レース場を建設したり整備したりしてきた仁である。
セルロア王国にはマリンリゾート……というのもいいかもしれない。
『併せて『船の博物館』的なものを建てたらいかがでしょう』
「お、それはいいな」
仁が意図せず貯め込んだ莫大な財産を使い、経済を活性化する目的にも適う。
『その場合、建築・土木業者はセルロア王国に依頼することになるかと』
「それはそうだ。……だが、それはまた今度だな」
こういう検討の方が楽しくて好きなのだが、まだやるべきことが残っているので、嫌々ながら話題を転換する仁。
『御主人様、『島基地』についての報告は以上です。引き続き調査を続行します』
「わかった」
* * *
いよいよ、『ルトグラ砦』の攻略についての打ち合わせだ。
「今の『島基地』の報告を聞いて、おぼろげながら目指す方向が見えてきたよ」
『それは何よりです。お聞かせください、御主人様』
「うん。大半の武装を削いでからセルロア王国に引き渡そう」
『なるほど、そういうことですか。では、武力制圧ですね』
「うん」
老君には、仁の意図することが理解できた。
武力制圧なら、地下施設の武装が破壊され、使用不能になってもおかしくはない。
そして魔導頭脳も最後まで敵対したので『仕方なく』破壊あるいは無力化されるのである。
その後、仁たちが復旧するわけだ。その際、危険性を減じるため、元どおりではなく『多少』都合よく改変することもあるだろう、というわけである。
『そういうことですね?』
「そうだ。さすが老君」
『お褒めいただきありがとうございます』
そこで仁と老君は……主に老君が……制圧のための作戦を立案していく。
一番の問題は、セルロア王国の関係者が注目しているということである。
彼らにとって未知の兵器を大量に投入、というやり方は避けたい仁であった。
『主戦力はデウス・エクス・マキナ3世としましょう。御主人様は支援の役目ですね』
「まあ妥当だな」
『実際には礼子さんと従騎士レイを先頭に制圧します』
礼子は有名であるし、レイもその存在は目立つ。
正に『漆黒の破壊姫』と『白銀の聖騎士』だ。
ここにエレナが加わったら、さしずめ『黄金の戦乙女』とでも名付けるかなあ……という考えがちらと横切った仁。
「……エレナは何か知っているかな?」
エレナが作られたのは『魔導大戦』の前。
そして『魔導大戦』時には戦場を駆け巡っていたわけなので、当時のことをよく知っているはずなのである。
『そうですね、いずれ聞いてみるのもいいかもしれません』
が、今は『ルトグラ砦』のことが先だ。
それからも1時間ほど、仁は老君と相談を続けたのであった。
* * *
2月17日、現地時間午前7時、『デウス・エクス・マキナ3世』の『アリストテレス』と『仁』の『ハリケーン』は、『ルトグラ砦』上空にいた。
大型の飛行船2機が浮かぶ様は壮観である。
これは、これからルトグラ砦の制圧を行うというパフォーマンスでもあった。
昨日のうちに、セルロア王国の了解を取りつけてある。
もちろん、制圧後はセルロア王国のものとして再整備に協力する、という約束を交わして。
『御主人様、それでは予定どおりに行います』
「『導師』も頼むぞ」
『はい、お任せください』
仁Dは老君が、マキナ3世は『導師』が、それぞれ操縦して電撃作戦を行うことになったのである。
仁は今回基本的にはオブザーバーだが、不慮の事態が起きた時の判断を任されている。
その『不慮の事態』がいきなり起きた。
『御主人様、『ギガース』です』
「……うん、見えた」
『ルトグラ砦』から岩の巨人が2体出現したのである。
見覚えのある形状、周囲の自由魔力素や魔力素を取り込んで動作する『ギガース』だ。
もしかしたら『ギガース改』かもしれないが、見た目では判別ができない。
「しかし、どうして今頃繰り出してきたんだ?」
『上空の『アリストテレス』と『ハリケーン』を検知したのではないでしょうか』
そして警戒のために『ギガース改』を出してきたのでは、と老君。
『エイラさんたちを救出した時点で、砦の魔導頭脳は警戒を強めたでしょうし』
「我々を敵と認識しているのかな?」
『わかりません。……『魔導大戦』時には飛行機の類はなかったでしょうし』
「どう判定するか、か」
『はい。……ですが、エイラさんを救出した時点で、洗脳された奴隷であると判定されている可能性が高いです』
「エイラの味方をしたんだもんなあ」
だとすれば、警戒するのもわかる、と仁も納得した。
が、それとこれとは別である。
「あのギガース、暴走していないな?」
『はい、御主人様。やはり『改』なのでしょうか』
「だとすると、かなり安定しているな」
仁たちの知る『ギガース』は無差別攻撃を行い、なぜか高いところを目指す習性があった。
が、この2体は、まるで門番のようにおとなしく、静かに佇んでいた。
まるで、嵐の前の静けさのように……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日6月10日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20210610 修正
(誤)仁が意図せず貯め込んだ莫大な財産を使い、経済を活性化する目的にも叶う。
(正)仁が意図せず貯め込んだ莫大な財産を使い、経済を活性化する目的にも適う。
(誤)見覚えのある形状、周囲の周囲の自由魔力素や魔力素を取り込んで動作する『ギガース』だ。
(正)見覚えのある形状、周囲の自由魔力素や魔力素を取り込んで動作する『ギガース』だ。




