79-01 分析と対処と
セルロア王国首都エサイア。
2月16日の朝、『デウス・エクス・マキナ3世』の飛行船が来たので城内は大騒ぎになっていた。
前夜の訪問は暗かったので気が付く者がほとんどいなかったのだ。
もちろん、『ルトグラ砦』から直接来たので、『調査団』の全員も一緒である。
セルロア王国国王への報告をしなければならないということで、デウス・エクス・マキナ3世、従騎士レイ、兵士ショウ・ノリジ、世界警備隊のアレオ・ヨカ・ナイツの4人が執務室に向かった。
「お、俺みたいな者が陛下にお目通りしていいんでしょうか」
「君以外にこの国の関係者はいないだろう」
兵士ショウ・ノリジは国王に直截報告をするというので少々腰が引けていた。
それを宥めるアレオ・ヨカ・ナイツ。
どうやら危機を2人で乗り切ったので、友情が生まれたらしい。
ボザール・ヴァロア・ド・セルロア国王の執務室には、宰相ダイン・セーメ・ド・パースと魔法技術相セリイン・コクダン・メメントがいた。
「さて、お疲れのところ申し訳ないが、『ルトグラ砦』で何があったか、お話しいただきたい。……まずはショウ・ノリジ、君からだ」
「は、はいい!」
宰相に命じられたショウ・ノリジは、顔を引きつらせながら、『ルトグラ砦』に到着してからの様子を説明していった。
そして夜営の準備をしている最中に襲われたこと。
辛うじて支えていたが、相手に増援が来てもうどうしようもなくなったこと。
危機一髪のところでマキナ3世の従騎士レイが助けに来てくれたこと。
「ふむ、なるほど。……アレオ・ヨカ・ナイツ殿、何か補足はありますかな?」
「特には」
「わかりました。……ショウ・ノリジ、ご苦労であった。下がってよい」
「は、はい」
宰相はショウ・ノリジだけを退出させた。
残念ではあるが、彼の身分が最も低いからだ。
これから話される内容は、重大機密であるから、平兵士にはちょっと聞かせられないという判断だろうと思われる。
残ったメンバーで、会議を再開することになる。
執務室に隣接している小会議室へ移動。廊下を通らず、直接移動できる。
「まずは掛けてくれ」
会議テーブルに着いたのは、セルロア王国側は国王、宰相、魔法技術相。
『アヴァロン』は『世界警備隊』のアレオ・ヨカ・ナイツ。
そしてマキナ3世と従騎士レイである。
宰相の司会で会議が始まった。
「さて、まずはマキナ殿に、『捜理協会』について聞かせていただきたい」
「わかった」
今回の事件と直接の関わりはないであろうが、どこか根の方で繋がりがありそうだということで、この場での話題となったのだった。
「姿を変え、名を偽って探りを入れたところ、『麻薬』が使用されていることを確認した。それに『暗示』の魔導具を使い、それとなく信者の意志を統一しているようだ」
「なんですと……」
「やはり、な」
「それはなんとも……」
マキナ3世の話を聞いて一番驚いているのは『世界警備隊』のアレオ・ヨカ・ナイツだ。寝耳に水だろうから無理もない。
「そして、ここからが今回の事件とつながりを持ってくるのだが……その麻薬と暗示の魔導具の出どころが、どうやらクゥプ南にある島らしい。今のところ『捜理協会』についてはそのくらいだ。……おっと、忘れるところだった。『聖女』もその『麻薬』を摂取しているぞ。知っているのか知らずになのか、それはわからないが」
「そんなことが……」
「だが、『捜理協会』についてはひとまず置いておこう。今は『ルトグラ砦』についての話し合いだ」
「そうですな」
「そこでだ。……ジンと俺が協力して進めた調査の中間報告をしよう」
「おお!」
「それは、是非とも」
「陛下もご存知のように、この国の南端はクゥプという町だ。その先、海の中に、そこそこの大きさを持つ島がある」
そこには『魔導大戦』時に作られた地下施設があり、未完成だが多少の資材があったようだ、とマキナ3世は説明した。
「どうやってか、そこを発見して、そこからなにがしかの資材……おそらく『麻薬』と『暗示の魔導具』……を持ち出したのが『捜理協会』の人間だ」
「なるほど……」
「そういう風に関わってくるわけですな」
「そして、先日も言ったように、どうやら砦地下の魔導頭脳の時間は『魔導大戦』で止まっているようで、当時『魔族』と呼ばれていた『北方民族』の魔力に過剰反応し、攻撃を加えてくるわけだ」
「それで我々『調査団』が襲われたというんですか? ですが、『北方民族』の方はいませんでしたよ?」
マキナ3世の説明に、アレオ・ヨカ・ナイツが異議を唱えた。
それに対し、マキナ3世は独自の仮説を口にする。
「そう。それが不思議と言えば不思議なんだが、仮説を言えば、『調査団』の誰かの魔力パターンが『北方民族』のそれに酷似していた可能性があると思っている」
「ああ、なるほど」
「そういう意味では、捕まっていたグローマが怪しいと思うんだが」
「確かにそうですね」
「彼は……少なくとも両親は人間だよな?」
「本人に聞かないとわかりませんが、多分」
「後で全員の魔力パターンを計測させてもらうか」
その話は一旦それでケリを付け、魔導頭脳の無力化をどうするか、検討することにした。
そこでマキナ3世は、もう1つの事実を開陳する。
「実は、そのクゥプ南の島の地下にある施設に、『ディナール王家の魔力パターン』でしか開かない大金庫があったんだよ」
「なんですと!?」
「いや、まあ、その大金庫は既に壁に穴を空けるという形で破られているんだが」
補足をするマキナ3世。
「それは残念ですな」
宰相が苦笑いを浮かべながら言った。
「そこで、『王家の魔力パターン』があれば、『ルトグラ砦』地下の魔導頭脳に言うことを聞かせられるのではないかとも思うわけだ」
「確かにそうですな」
「きちんと説得し、もう『魔導大戦』は終わっていて、『北方民族』とも交流していることを説明できないかと思うわけでね」
「なるほど、その話し合いのステージに立たせる必要があるわけですな」
「そういうことだ」
そこでマキナ3世は国王の方をちらりと見た。
若きセルロア王国国王は、いかにも自分が行ってみたいというような顔で宰相の方を見つめていたのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210604 修正
(誤)今のところ『捜理協会についてはそのくらいだ。
(正)今のところ『捜理協会』についてはそのくらいだ。




