78-39 とりあえずの結末
戦闘用ゴーレム2体を、エイラやグローマの援護で辛うじて防いでいた『GXー027』であったが、3体目が出てきては到底支えられるものではなかった。
「『GXー027』!」
奮戦虚しく、右腕をもがれ、頭部をひしゃげさせ、『GXー027』は床に倒れ込んだのである。
「くっ、エイラ、逃げろ!」
「逃げろったって、どこへさ!」
戦闘用ゴーレムとエイラの間に立ちはだかるグローマであったが、あっさりと捕まってしまう。
「クッ、は、離せ!」
両腕をがっしりと掴まれては、もう逃げられない。自由な足でゴーレムを蹴っては見るが、人間の蹴りではダメージなど与えることもできないのである。
「グローマ!」
「バカ、エイラ、逃げろ!」
「どこへも逃げられないよ!」
正に『行くも地獄、戻るも地獄』。
通路の両側をゴーレムに塞がれ、エイラたちは袋のネズミ状態であった。
だが。
「……?」
グローマ・トレーは、自分を捕まえているゴーレムがおとなしいことに気が付いた。
確かに両腕の付け根を捕まえられており、ろくに身動きもできないのだが、苦しくはないのだ。
つまり、力任せに掴まれているのではないということ。
ゴーレムがその力を振るえば、グローマの腕など簡単に引きちぎることができるのだから……。
だが、エイラは違った。
2体の戦闘用ゴーレムがエイラを壁際に追い詰めている。
そして2体が同時にそのごつい腕を振り上げたのだ。
それが振り下ろされれば、エイラは物言わぬ肉塊になってしまうだろう。
「エイラ!」
思わず叫ぶグローマ。
だが、ゴーレムの腕が振り下ろされることはなかった。
2体の戦闘用ゴーレムは、腰の部分で切り離され、上半身と下半身は泣き別れ……。上半身は床に落下し、下半身は立ったまま動きを止めたのである。
そしてグローマを捕らえていたゴーレムもまた、両腕を切り落とされ、胴体を真二つにされて床に倒れ込んだのであった。
「貴方は……」
「間に合って、よかった」
フルフェイスの冑、全身を覆う白銀色の軽鎧。
跳ね上げた面当ての下に見えるのは、アイスブルーの瞳。
「従騎士、レイ殿」
「グローマさん、エイラさん、でしたね。怪我はありませんか?」
「ああ、はい、おかげさまで」
「それは何より。まずは、ここから出ましょう」
のんびりした会話であるが、それもそのはず。
セルロア王国兵士のショウ・ノリジと世界警備隊のアレオ・ヨカ・ナイツが相手をしている小柄な2体のゴーレムも、既に無力化されていたのである。
「ラザロ殿は私が背負っていこう」
「ではカイン殿は私が」
気を失っている2人はショウ・ノリジとアレオ・ヨカ・ナイツが背負うことで、一行は速やかに砦の外へと脱出した。
外はまだ夜。
月は西の空に高く懸かり、夜明けはまだ遠いことがわかる。
「お、あれは」
「『アリストテレス』だったっけ。デウス・エクス・マキナ3世の乗機だったな」
ほっとした声でエイラが呟いた。
『アリストテレス』が砦横の平地に着陸している。
その前にはデウス・エクス・マキナ3世が立っていた。
「みんな、説明はあとだ。乗ってくれ」
その言葉に、全員が従った。
「よし、離陸」
全員が乗ったことを確認すると、『アリストテレス』は離陸する。
その直後、砦から『火の弾丸』が発射され、数秒前まで『アリストテレス』が着陸していた場所に着弾した。
「間一髪だったな。もっとも、あの程度の炎じゃ『アリストテレス』はびくともしないが」
外を見ていたデウス・エクス・マキナ3世はそう呟いた。
そのまま『アリストテレス』は上昇を続け、『火の弾丸』が届きそうもない高度で静止した。高さはおよそ200メートル。
「『ルトグラ砦』の地下に、旧ディナール王国の施設があることがわかってな。無力化するために来たんだが、まさかあんなことになっているとは思わなかったよ」
マキナ3世は、グローマたち一行に説明をする。
クゥプの南に浮かぶ島に、『魔導大戦』時の『施設』があること。
ここ『ルトグラ砦』の地下にも同時期の『施設』があること。
『ルトグラ砦』の『施設』は魔導頭脳が管理しているらしいこと。
その魔導頭脳の指示で、クゥプ南の島の『施設』から資材を持ち出し、ここ『ルトグラ砦』の補修に使ったらしいこと。
その、クゥプ南の島にある施設を悪用した奴らがいるかも知れないこと、を。
「そして、『ルトグラ砦』の魔導頭脳は少し暴走している節があるんだ」
「そうだったんですか」
「だからとるものもとりあえず飛んできたのだ」
「おかげで助かりました」
そんな会話をしていると、『ルトグラ砦』から飛翔体が発射された。
が、それは『アリストテレス』の『物理障壁』で楽々防ぐことができた。
「ふむ、長距離用の矢のようだ」
「200メートル上空まで届くとは驚きですね」
マキナ3世の説明に、グローマ・トレーが驚いている。
「旧ディナール王国は、このアルスの歴史上、最も魔法科学が進んでいた国だからな」
「学ぶことは多いでしょうね」
その後、『ルトグラ砦』の動きがなくなったので、『アリストテレス』は一旦引き上げることにした。
目指すはセルロア王国首都、エサイアである。
夜が明け始め、雲が焼けて美しい。
朝焼けに染まる大地と山々。
『アリストテレス』は黎明の光の中、一路エサイアを目指すのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210602 修正
(誤) その、クゥプ南の島にある施設を悪用した奴ら」がいるかも知れないこと、を。
(正) その、クゥプ南の島にある施設を悪用した奴らがいるかも知れないこと、を。




