78-30 判明したこと
2体の『青髪の自動人形』。
その修理をしていて気が付いたことは2つ。
「基本的なパワーが高いな……」
同じロットであるはずのレファよりも、……そう、レファの3倍ほどのパワーがあるようだと仁は分析していた。
「おそらく『最後の砦』の警備も担当していたんだろうな」
仁はそう推測したのである。
そしてもう1点。
「武器が内蔵されているな」
これもまた、警備、もしくは守備要員としての改造であろうと思われた。
つまり、この2体は大きくカスタマイズされているということである。
「しかも、この武器は……」
『暗器』と呼ばれる武器に相当するもの。
つまり、『それと悟らせずに振るわれる隠し武器』である。
侍女自動人形の武装としてふさわしい……のかもしれないな、と仁は思ったのである。
* * *
そしてひととおりの整備が完了。
最も劣化していたのは『魔素変換器』であった。
低い自由魔力素濃度で酷使されたためと思われる。
それに外部から加えられたと思われる負荷あるいは衝撃による骨格の歪み。
特に膝と腰の関節のダメージが大きかった。
「これでいいだろう」
これ以上は作り直しになってしまう。
「では、再起動するぞ」
『御主人様、念のため、ランド隊10体に同席させます』
礼子がおらず、ミニ礼子だけでは護衛戦力として心許ないと老君が言ったのだ。
「わかった」
その気遣いがわかるので、仁も特に反対はしない。
蛇足ながら、『制御核』を読み取って解析してしまえば、そうした危険はないのだが、それは仁の主義に反するので基本的には行わない。
敵対勢力のものであれば躊躇せずに行うが、今回のような『救出』であれば、自動人形といえどもある程度のプライバシーを認めている仁なのであった。
もっとも、仁が修理し、仁が再起動したならば、その『支配権』は仁に移っているので、罠でもない限り危険はないのである。
* * *
「『起動せよ』」
古い形式の魔鍵語で仁は2体を目覚めさせた。
「はい、ご主人様」
「はい、ご主人様」
ほぼ同時に2体は再起動した。
「具合はどうだ?」
との問いに、2体とも問題なし、と返答する。
「よし。君たちの名前は?」
「私はユミィと申します」
「私はヴェラと申します」
「よし、ユミィとヴェラだな。名前はそのまま継続だ」
「はい、ご主人様」
「はい、ご主人様」
「よし。それじゃあ、幾つか教えてほしいことがある」
「何なりとお尋ねください」
「まず、2人がいた施設の存在意義は? ……ああ、ヴェラに答えてもらおう。ユミィは補足事項があったらその都度教えてくれ」
「はい、わかりました」
「施設は『最終防衛拠点』として準備されました」
「やはりな。……でも未完成だったようだが?」
「はい、仰るとおりです。完成する前に、『魔素暴走』が起きて、『魔導大戦』は終結しましたから」
「……待て、どうして『魔素暴走』が起きたことを知っている?」
『魔素暴走』が起きた時に、当時のゴーレム、自動人形、魔導具など、そのほとんどは停止したはずなのだ。
「はい、それはですね、我々は一旦再起動し、その時にそうした情報を得たのです」
「なるほど、自由魔力素濃度が回復してきたからか」
「そうです」
「それはいつのことかわかるか?」
「はい。大陸暦3775年でした」
それは、奇しくも『魔法連盟』が台頭し、蓬莱島が休眠に入った時期であった。
老君が察知できなかったのも当たり前だな、と仁は感じたのである。
「それからどうした?」
「はい。再起動してみますと、施設内が大分荒れておりましたので、ユミィと一緒に整備を致しました」
「それから?」
「整備にはおよそ半年程掛かりました。その後、外界の情報を得るため、通信装置を起動しました」
「なるほどな。どこと通信するんだ?」
「はい。他の施設とです」
「他の施設……つまり、魔導大戦時に作られたものか?」
「いえ、それ以前のものも幾つかあります」
「そうか。それで?」
「はい。……通信が成立した施設は1箇所しかありませんでした」
「……」
まあそうだろうな、と仁は内心で思っていた。
アルス上の全て、とは言わないが、大半の土地を訪れた仁たち蓬莱島勢が知らない施設がまだゴロゴロしているとは思えなかったのだ。
「その施設の場所を聞いてもいいか?」
「…………申し訳ございません。保安上の理由により、私の権限ではお答えできません」
「と言いますか、知らされていないのです、ご主人様」
ユミィが補足してくれた。
どうやら、他の施設についての情報は、ヴェラやユミィには知らされていないようだ。
確かに、知らない情報は漏らしようがないわけで、これはこれで有効な措置と言える。
仮に彼女たちの制御核の内容を全て抜き出しても無駄というわけだ。そんなことをする仁ではないが。
「……で、その施設から、世界の現状を教えてもらったわけか」
「はい」
「つまり、正常に動作している施設が、この世界のどこかにあるわけだな」
「……はい」
「まあ、そこがどこかを君たちに聞くことはしないよ」
「おそれいります」
「それで、2人がダメージを受けたのはどうしてだ? 何があった?」
「はい、お答えします。……未知の敵の襲撃を受けたからです」
「どんな奴だった?」
「私たちの知らない型のゴーレムでした」
ヴェラとユミィは、そのゴーレムの詳細を描写した。
それは、仁たち……老君のデータバンクにもない形式のものであった。
だが。
「この肩関節や腰部の構成は、『旧ディナール王国』の様式に近いと思うんだが……あ、君たちはもう『ディナール王国』が滅びた……というか分裂したことは知っているのかな?」
「はい。前回の再起動時に知りました」
「そうか。……思うところはないのかい?」
「はい。滅亡ではなく、小群国への分裂ですから、王国の意思や思想は受け継がれていると信じています」
「うん、確かにそうだな」
「ご主人様、それで形式ですが、確かに仰るような特徴が見受けられました。私たちも、見たことのない型であるとは思いましたが、同時に近しいものを感じてもいたのです」
「なるほどな。……ゴーレムの正体は一旦置いておくとして、襲撃の目的は何だと思う?」
「金庫内の兵器かと思われます」
「ご主人様、金庫内に何が残っていたかご存知ですか?」
「いや、何もなかったぞ」
「……それでは、襲撃者は『ギガース改』の魔力核を盗み出していったに違いありません」
「ギガース!?」
聞き覚えのある兵器の名。
それは『魔導大戦』で使われた、未完成にして不完全な兵器である。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210525 修正
(誤)「施設は『最終防衛戦』として準備されました」
(正)「施設は『最終防衛拠点』として準備されました」




