78-29 発見されたもの
『忍壱』から『忍陸』までの6体が、穴をくぐって隣の部屋へと向かった。
その穴からも、未知の存在について知ることができる。
〈この穴は非常に整っているな〉
〈工学魔法か、土属性魔法で掘った可能性が高い〉
〈だとすると、掘った相手は侮れないな〉
穴の長さは10メートルほどで、じきに隣の部屋に出た。
〈ここも薄暗いな〉
常夜灯程度の明かりしかない部屋であるが、暗視モードで見ている『忍部隊』なら問題はない。
完全な暗闇となると、赤外線や超音波探知も併用することになるが。わずかでも光があれば大丈夫だ。
そして、彼らの視界に映ったものは……。
〈ゴーレム……か……〉
〈明らかに『始祖』のものとは違いますね〉
〈旧ディナール王国のもので間違いなさそうだな〉
〈あ、あそこを見てください〉
〈何? ……おお、あれは〉
〈アンさんやロルさん、レファさんと同じ系列でしょうか?〉
動かなくなった青髪のオートマタが2体、横たわっていたのである。
『忍肆』と『忍伍』が近付き調べてみると、かなり劣化していることがわかった。
〈これはご主人様に修理していただくのがいいでしょうね〉
〈うむ。直れば、何か有益な情報を教えてくれるかもしれんからな〉
そこで『忍壱』は大金庫前の部屋へ大急ぎで戻り、ランド101と合流し、改めて老君へと報告を行った。
『なるほど、確かに重要そうな自動人形ですね。いいでしょう。簡易転移門を送りますから、その2体を蓬莱島へ送ってください』
〈了解〉
その1秒後、簡易転移門が送られてきた。
自壊装置付きで、仁の魔力パターンを持つ者と一緒に使用しないと崩壊を起こす仕様になっている。
〈ではランド101、青髪の自動人形の1体と『忍陸』を転移門へ運んでください〉
〈わかった〉
青髪の自動人形1体では転移門を利用できないが、『忍陸』が一緒であれば大丈夫。
同じように、もう1体の青髪の自動人形は『忍伍』と共に蓬莱島へと送られたのであった。
そして数秒後、『忍伍』と『忍陸』は戻ってくる。
〈この簡易転移門はもうしばらく残しておきましょう〉
また何か収穫があったら蓬莱島へ送れるだろうというわけだ。
一応ランド101がそばにいて管理することになるが、何者かが勝手に使用したなら自壊するので悪用される心配はないのだが。
* * *
穴の出口の部屋の再捜索が始まった。
〈うーん、侵入者の痕跡がなさすぎるな〉
〈それはいえる〉
〈……人間ではないのかな?〉
〈ゴーレムか、自動人形かもしれん〉
〈その可能性はあるな〉
人間であれば残すであろう痕跡がないので、調査は困難だった。
〈……いや、これは単純に『清掃用ゴーレム』のせいのようだぞ〉
〈ああ、なるほどな〉
単純な、汚れ、ゴミ、埃を除去するゴーレム。
そのおかげで施設内は清潔に保たれているのだが、その反面、侵入者の痕跡がきれいさっぱりなくなっているのだ。
〈青髪の自動人形の解析待ちか?〉
〈基本的にはそうなるが、こちらはこちらでベストを尽くそう〉
〈同感だ〉
* * *
さて、ロイザートでゴウ、ルビーナ、メルツェらと共にいる仁に、老君から報告が入ったのは現地時間で正午前のことである。
ちょうど仁は、自分の工房に礼子と2人でいた。
というよりもそういうタイミングで老君が連絡をつけてきたわけである。
『……というわけです』
「なるほど、青髪の自動人形か……」
『こちらで修理することも出来ますが、御主人様はご自分の目で確認されたいのではないかと判断しました』
「おお、ナイス判断だ、老君」
『ありがとうございます』
「それじゃあ、こっちは『分身人形』に任せ、俺はそっちへ行くか。……礼子、エルザにだけは話しておいてくれ。で、ロイザート側のフォローを頼む」
「……わかりました、お父さま」
* * *
そういうわけで、緊急性のないロイザートは『分身人形』に任せ、仁自身は蓬莱島で新たに見つかった青髪の自動人形を修理・調査することにした。
「これがその自動人形か」
『はい、御主人様』
「少しだけ経過を聞いていたけど、『魔導大戦』時の『人類最後の砦』らしいって?」
『はい。それも、この2体に聞けばはっきりするでしょう』
「そうだな」
仁は、礼子……はいないので、こういう時の『お付き』である『ミニ礼子』と共に解析を始めた。
「お父さま、ここにロットの刻印がありました」
ミニ礼子が、『魔法外皮』の下に隠されていたロットナンバーを発見した。
「これは……アンじゃなくてレファと同じロットだな」
「そうですね」
「よし、まずは修理だ」
それがわかったので、アンとロル、レファを呼び、修理を手伝わせることにした。
「ごしゅじんさま、お呼びですか」
「ロル、参りました。ご主人様」
「ご主人様、レファ、参りました」
「お、来たな。……この2体の修理を手伝ってくれ」
「これは……」
「どうやらレファと同ロットのようだ。……いずれ改良も行うけど、まずは修理して、事情を説明してもらおうと思う」
「わかりました」
ロルとレファがそれぞれ1体を受け持ち、ミニ礼子が細部をチェック。
アンが素材の準備と予備加工を行い、仁が全体を受け持つ、という役割分担で修理を行っていった。
「保存状態は悪くないな」
「そうですね、お父さま」
「ごしゅじんさま、どうやらこの2体は大きな負荷が掛かって故障したようです」
「アンに同意します。こちらの膝と腰の関節がひしゃげていますので」
「はい、こちらも同様です」
「よし、あまりひどい部分は交換しよう」
そんなやり取りをしながら、およそ1時間で修理は完了した。
これだけの時間が掛かったのは、何か新たな発見がないかどうか、じっくり調べながら行ったためである。
そして、その甲斐があり、2点ほど気が付いたことがあったのである……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210524 修正
(誤)〈これはチーフに修理していただくのがいいでしょうね〉
(正)〈これはご主人様に修理していただくのがいいでしょうね〉




