78-27 調査して見えてきたもの
遅れました <(_ _)>
『忍部隊』が転移した先はホールであった。大きさは小学校の体育館くらい。磨かれた石材でできている。
が、全体的に薄汚れている印象。
『エーテル発光体』が使われているので暗くはないが、その光量もなんとなく頼りない。
かなり古いものであることが窺えた。
それに加え、整備もなされていないようだ。
〈ここが目的地ですか?〉
〈少なくともその一部だな〉
耳を澄ましてみるが、何も聞こえない。
機器の作動音や、ゴーレムなどの立てる音もしないのだ。
〈この施設は、まだ生きているのでしょうか?〉
『忍参』が言った。
〈わからん。先程同様、ツーマンセルでホール内を調査だ〉
〈わかりました〉
手分けして調査を始める『忍部隊』であったが、見た目にもなにもないホール、すぐに『なにもなし』の結論が出てしまった。
〈……すると、残る調査対象は……〉
〈あの通路の向こうでしょうね〉
『忍伍』が指差す方向には、このホール唯一の出入り口らしき開口部があった。
その先の通路は真っ暗……とまでは行かないが、かなり暗い。暗視機能をオンにしないと安全確認ができないほどだ。
〈慎重に行くぞ〉
〈はい〉
前後左右、そして上下に気を配りながら、10体は通路を奥へと進んでいく。
通路の幅は3メートルほど、高さも同じ。材質はホールと同じく石材。
そんな通路は30メートルほどで終わり、小部屋に続いていた。
部屋の中はがらんどう。ただ……。
〈ここは……〉
〈床に転移魔法陣がありますね〉
〈これは……まだ『生きて』いますよ〉
転移魔法陣を調べた『忍漆』が報告した。
〈つまり、この部屋に何者かが出入りしている可能性があるわけだ〉
〈そうなりますね。床に埃が積もっていない。定期的な清掃が行われているのでしょう〉
その言葉を裏付けるように、何かがその小部屋に現れた。
『不可視化』で姿を消している『忍部隊』には何の注意も払わないあたり、センサーの機能は大したことがないと思われた。
〈あれは?〉
〈どうやら清掃専門のゴーレムのようですね〉
身体の形状は扁平な円柱。昆虫のように6本の脚が生えており、それを器用に動かして歩き回る。
円柱の下部には吸入口が付いており、そこから埃を吸い込んでいるようだ。
〈知らない型だな〉
〈ええ。我々の知る『始祖』の型にはありませんね〉
〈だからといって『始祖』のものではないと言うことはできないがな〉
そういう意味で、この『6本脚のお掃除ゴーレム』は、この施設を作った者、あるは維持管理をしている者の正体を掴む上でも重要な鍵である。
しばらく『忍部隊』は観察に徹した。
そしておよそ10分後、掃除が終わったとみえ、『6本脚のお掃除ゴーレム』は小部屋を出ていったのである。
〈掃き掃除を行わないのは、床に刻まれた魔法陣を摩耗させないためだろうな〉
〈足さばきも、床面をこすらないよう気をつけているようでした〉
〈足裏の材質も、軟らかなものが使われているとみえ、足音がしませんでしたね〉
などなど、観察結果が出る。それらは全て老君に送られているのだ。
〈では、あの『お掃除ゴーレム』が出ていった通路へと行ってみることにしよう〉
自分たちがやって来た通路の他には、そこにしか開口部はなかったのである。
その通路もまた、幅は3メートルほど、高さも同じ。材質も同じ石材であった。
が、今度は10メートルほどで次の小部屋に辿り着いた。
〈『お掃除ゴーレム』はいないな〉
〈この部屋の掃除はすでに終えていて、別の部屋に向かったか、待機状態になったんだろう〉
〈では、この部屋の調査を行うか〉
この部屋は、これまでのものと比べて、大きく違っている点が1つあった。
複数の魔導具と魔導機が置かれていたのである。
〈……これは『始祖』の技術ではないな〉
〈同意します〉
〈おそらくは……〉
〈……旧国家、ディナール王国のもの、でしょうね〉
『その推測は正しいでしょう』
老君からも意見が寄せられた。
『私の推測では、この施設は『魔導大戦』末期の『魔素暴走』により空間の自由魔力素濃度が下がり、長いこと停止していたのでしょう。それが、自由魔力素濃度の回復により再起動したと思われます。それ以上の推測は、まだ情報が少ないため、差し控えます。引き続き調査をしてください』
〈了解〉
調べれば調べるほど、この施設が『旧ディナール王国』の技術で作られていることが明らかになった。
〈当時『魔族』と呼ばれていた『北方民族』は当然北から南下して攻めてきたわけですよね?〉
〈そうなるな〉
〈なら、なぜここのような、いわば『南の果て』に施設を作ったのでしょう?〉
〈当時の人々が何を考えていたのか……知るすべがないからな〉
が、それに関しては老君が推論を立てていた。
『もう少し調査してみないと確証は得られませんが……』
と前置きしつつ、
『……ここは言うなれば『最後の砦』だったのではないでしょうか』
と推測を述べた。
『戦線から最も遠い場所であり、陸地とこの島の間には速い海流が流れています。そして転移でしか移動できなくしてあるというのもリスクを少なくするためでしょう』
〈なるほど〉
『ですが、まだ未完成な印象も受けますね。引き続き調査してください』
〈了解です〉
再び『忍部隊』は調査を始めた。
〈うーん、間違いなく『旧ディナール王国』のモノ、と言えるような物証はないですね〉
〈『始祖』のものではない、ということは99パーセント間違いないがな〉
〈まあ、『旧ディナール王国』なんて書いてあるわけもないし〉
〈いや、あったぞ〉
〈え?〉
〈『旧ディナール王国』の紋章が入った書物だ〉
〈これは……〉
その書物は黒い革の表紙で、金色の文字が書かれており、描かれているのは確かに『旧ディナール王国』の紋章であった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20210522 修正
(誤)〈では、この経屋の調査を行うか〉
(正)〈では、この部屋の調査を行うか〉




