76-13 各国の技術 2
「こちらは、フランツ王国からの作品です」
「ほう、あそこも頑張っているのだな」
それはいわゆる『エアコン』であった。
「ふむ……今は温度の調整しかできないが、いずれ湿気も調整できるようにしたい、と書いてあるな」
「発展途上の技術ということですね」
「これもまた期待できるな」
発想を形にする技術と知識が育っていることを感じさせてくれる品であった。
* * *
マリッカの『風力式浮揚機』が別室で紹介されていたことでもあり、『ノルド連邦』からは特産品の『キュービックジルコニア』を使った『食器』である。
「おお、これは美しい」
「見事ですね」
「素晴らしい……」
作品作りに『工学魔法』を駆使した、ということである。
べつに、魔導具や魔導機を作るだけが工学魔法の使い途ではないのだから。
* * *
ミツホからは最新式の自転車が贈られてきていた。
それも、仁の目には『マウンテンバイク』に見えるようなものである。
舗装された道路を走るだけでなく、悪路も走破できる機能性とタフさを備えている。
工場の設定を変更して作り上げたのであろうが、発想とデザインが素晴らしいな、と仁は内心で大いに称賛していた。
「これはいいですな」
「丈夫そうだ。郊外でも使用できるでしょう」
「それどころか、上級者は山も登れるそうですよ」
「ううむ……」
新たな『足』として普及するかどうか、それはまだわからないが。為政者たちの目に止まったことは確かだった。
* * *
そして最後はショウロ皇国。
皇室から贈られた作品だ。
「ベルリッヒ工房の作ですね」
「さすが『魔法工学師』、わかりますか」
それは『農作業用ゴーレム』であった。
現代日本で言えば『コンバイン』にあたるもの。
それ1体でさまざまな農作業をこなしてくれる。
しかも、仁が見たところ、かなりのコストダウンがなされており、一般的な農家ならなんとか購入できるくらいの価格帯に収められているようなのだ。
それを見た仁は、いつだったか、ベルリッヒ工房を訪れた際に起きた、農作業用ゴーレムの暴走事件を思い出した。
(あの時、副工房長のルドヴィヒは、エミール……だったかな? ……の家が詐欺にあったことを憤っていたものな)
杜撰な作りの農作業用ゴーレムが暴走して果樹園をめちゃくちゃにしてしまったのだ。
たまたま居合わせた礼子がそれを止め、仁はエミールの家に旧型っぽくみえる農作業用ゴーレム『アグリー』の下位バージョンを贈ったのだった。
「人々の役に立つゴーレム。それは『初代』の願いの1つでもあります」
「ふむ、こういう農作業用ゴーレムを使うことで生産量がアップするのは喜ばしいことだ」
「そうですわね」
* * *
パンドア大陸のメルカーナ公国と、ジャグス・ミマカ・ノルハ・ダーラトの4公国からは贈られてきていないため、これで一応、各国からの作品の紹介は終わる。
「この部屋の展示は、随時入れ替えていきたいと思います」
「なるほど」
「そういうことなのですな」
会議国は、それぞれの国が寄贈した作品が1点ずつで展示されていることに一応満足したのである。
それと同時に、『魔法工学師』の技術の高さを知り、生半可な作品はかえって国の恥を晒すことにもなりかねないと、気を引き締めたのは余談である。
* * *
その次に仁が招待客を案内したのは南西の部屋。
「こちらは資料室です」
「ほう」
「これは……」
「す、すごい!」
技術系の者には、その価値と意味がわかったようで、思わず声を上げてしまった者もいた。
『資料室』の名のとおり、そこには魔法工学に関する様々な資料が展示されている。
例えば、ゴーレムのスケルトンモデル。
『アドリアナ式』ゴーレムの構造がわかりやすく観察できる模型だ。
見る者によっては少々グロテスクに感じるかもしれないが……。
「いやいや、これはわかりやすいですな」
「左様。関節部や筋肉の付き方がよくわかります」
もちろん、それを見ただけでアドリアナ式のゴーレムを作れるようになるわけではないが、志す者には大きな意味があるだろう。
その他にも『風魔法推進器』のスライスモデル(半分にカットして内部構造を見せたもの)や、『魔導ランプ』の動作シーケンスの解説など、多岐にわたる資料が展示されている。
さらに仁は、
「今回は私やエルザが解説しましたが、一般開放時には自動人形やゴーレムの説明員を用意します」
と言って、ここで初めて職員のお披露目を行った。
「おお!」
30体の自動人形。
すべて女性型であり、緑色の髪をしている。
『アヴァロン』のトマックス・バートマンに贈った『マノン』『シモーヌ』と同スペックの自動人形である。
「『スタフィ』といいます。1から30までおります。館内の案内、清掃、売店の店員、厨房スタッフ、庭園の整備など、いろいろこなしてくれます」
「これはこれは……」
「頼もしいですな」
仁が作った自動人形であるから、全て老君の配下でもあり、何かあったらすぐに蓬莱島が介入することになることは秘密だ。
* * *
そして2階最後の案内として、西と北西の部屋へ。
「この2つの部屋は図書関連施設です。北西の部屋が図書室、西の部屋が閲覧室となります」
司書として、先程の『スタフィ』がつめているので、読みたい本、探している本があれば聞いてもらえばすぐにわかる、と説明する仁。
「ううむ、これはいいですなあ」
「我が国にも欲しいくらいですよ……」
招待客たちは皆、図書室の蔵書の多さと、司書としての自動人形の優秀さを羨んだのである。
そして、いつの日か、自国にも同様の文化施設を建設したいと思うのであった。
* * *
時刻は午後3時近くになったので、仁はちょうど切りがいいと、招待客を再び展望台食堂へと連れて行った。
ティータイムである。
「飲み物としてジュース系とお茶系が用意されています。もちろんアルコール類はなしです」
「もちろんそうであろうな」
「ご要望は『スタフィ』かメイドゴーレムに仰ってください」
この日だけは、来賓に失礼がないようにと、スタフィだけではなく5色ゴーレムメイドも接待役を務めている。
「それでは、私はペルシカジュースを」
「私は煎茶をいただくわ」
「シトランジュースをもらおうか」
「はちみつラモン、というのをくださいな」
「クゥへを所望する」
等々の注文を、20秒以内に対応していくので、客たちは喜ぶやら驚くやら。
飲み物が行き渡ったことを確認した仁は、
「何かご質問がありましたらどうぞ」
と言い、ペルシカジュースを一口飲んだのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210217 修正
(誤)それ見た仁は、いつだったか、ベルリッヒ工房を訪れた際に起きた
(正)それを見た仁は、いつだったか、ベルリッヒ工房を訪れた際に起きた
(旧)
まずは自動人形。
すべて女性型であり、緑色の髪をしている。
『アヴァロン』のトマックス・バートマンに贈った『マノン』『シモーヌ』と同スペックの自動人形である。
「『スタフィ』といいます。1から20までおります。館内の案内、清掃、売店の店員、厨房スタッフなど、いろいろこなしてくれます」
「これはこれは……」
「頼もしいですな」
次はゴーレム。
「『エンプロイ』です。1から20までおります。『スタフィ』の補助として、館内の案内、警備、清掃、庭園の整備、厨房スタッフなど、こちらもいろいろこなしてくれます」
「素晴らしい!」
仁が作ったゴーレム・自動人形であるから、全て老君の配下でもあり、何かあったらすぐに蓬莱島が介入することになることは秘密だ。
(新)
30体の自動人形。
すべて女性型であり、緑色の髪をしている。
『アヴァロン』のトマックス・バートマンに贈った『マノン』『シモーヌ』と同スペックの自動人形である。
「『スタフィ』といいます。1から30までおります。館内の案内、清掃、売店の店員、厨房スタッフ、庭園の整備など、いろいろこなしてくれます」
「これはこれは……」
「頼もしいですな」
仁が作った自動人形であるから、全て老君の配下でもあり、何かあったらすぐに蓬莱島が介入することになることは秘密だ。




