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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
76 アドリアナ記念館篇(3901年〜3902年)
2862/4341

76-09 『2代目』

 昼食後、ゆっくり休憩した後、再び仁は招待客の案内を開始した。


「ええと、それでは『2代目』に関する展示室となります。……ここからはエルザに説明してもらうことにいたします」


 さすがに自分の業績を自分で説明するには抵抗が大きすぎる仁であった。


「よろしく、お願い致します」

「うむ、エルザ殿、こちらこそよろしくお願いする」


 招待客はそんな仁の思惑など知るはずもなく、エルザの説明に耳を傾ける。


「『2代目』は、『初代』の知識と技術を受け継ぎましたが、直接ではありませんでした」

「ほう?」

「どういうことですかな?」

「……それは現魔法工学師マギクラフト・マイスターに説明してもらいましょう」


 この話題だけは仁に説明してもらいたいと思ったエルザである。


「それではご説明しましょう。……ええと、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』として……というより、『アドリアナ・バルボラ・ツェツィ』の後継者を名乗るには、1つの壁があります」

「ほう? それはいったいどのような?」

「それは……」


 『知識転写(トランスインフォ)レベル10』なのだが、これについてはまだ秘密である。

 そこで仁は言葉を濁す。


「後継者候補となったものだけに使える……いえ、使えるものだけが後継者候補になれる、ある工学魔法です」


 その詳細は門外不出なので詳細を語ることができません、と詫びる仁。


「なるほど、そのような魔法が……」

「それが使えないと後継者候補にすらなれないというわけか」


 実際には、低レベルの『知識転写(トランスインフォ)』を使える技術者は少なからずいるので、この説明はある意味ミスリードとも言える。


「まあとにかく、それを用いて先代の技術を受け継いだわけです」

「なるほど」

「まさに、誰にでもなれるというわけではないわけですね」


 ここでエルザが再び説明を引き継いだ。


「そういうわけで、『2代目』のご子息でさえ、『3代目魔法工学師マギクラフト・マイスター』は名乗れなかったわけです」

(……そうだったのか……)


 これについては仁も追求していなかったので、初めて知った事実でもある。


「なるほど、一子相伝、ということでもないのですな」

「そういう意味で、『2代目』の後継者候補はジン殿とマキナ殿、そして『森羅しんら』のマリッカ殿というわけですね」


 それなりに理解してもらえた、あるいは納得してもらえたようだ、と仁もエルザもほっとしたのである。


 そしてエルザの説明は続く。


「『魔法工学師マギクラフト・マイスター』の拠点は、わけあって絶対秘密となっております。そしてとある日、『2代目』は実験に失敗し、当時はクライン王国のカイナ村に転移します」

「おお、現在のニドー領カイナ村ですな」


「それまで、ずっと世間とは断絶した生活をしていた『2代目』は世界に関わり始めます」

「なるほど、『ポンプ』ですね」

「はい」


 ポンプのレプリカが展示されている。いや、作った本人の作だから正確にはレプリカではないのだが。


「その後『2代目』はブルーランドでその後『クラフトクイーン』と呼ばれることになるビーナ嬢と出会い、短期間ではありますが弟子にします」

「おお。我家のご先祖様ですな」


 ログレス・ウィン・クズマ侯爵が嬉しそうに呟いた。

 その視線の先には『ライター』『温水器』『冷蔵庫』『ポップコーン製造機』があった。


「その後、ポトロックでのゴーレム艇レースに優勝しました」


 双胴船『白鳥シグナス』とそれを動かすゴーレム『アロー』の絵が飾られていた。


「その後、ショウロ皇国の外交官ラインハルト卿に同行します。その途上、いろいろな出来事がありました」


 ポトロックでラインハルトと共同開発した『蒸留器』のレプリカが飾られている。


「一番はエゲレア王国で行われた『ゴーレム園遊会(パーティー)』でしょう」

「おお、『統一党(ユニファイラー)』が起こした事件ですな?」

「レーコ嬢……いやレーコ卿が大活躍したとか」

「その際に贈られた『ロッテ』は、今も王家の至宝ですよ」


「……話は、少し飛びますが、ショウロ皇国を目指している頃、その『統一党(ユニファイラー)』は初代の『デウス・エクス・マキナ』に滅ぼされていますね」

「ああ、そうだったのですね」

「……」


 端の方にいるエレナが少しだけ苦笑したようだった。


「そして『掃除機』『深井戸ポンプ』『顕微鏡』などを作りながら、『2代目』はショウロ皇国に到着します」

「当時の女皇帝陛下が色々便宜を図られたのですよね」

「そうです。……その後行われた『技術博覧会』で『飛行船』と『ミニ職人(スミス)』をお披露目し、その後行われた『魔導人形競技(ゴンクレンツ)』にも優勝し、女皇帝陛下から『魔法工学師マギクラフト・マイスター』の称号をいただきました」

「ああ、我が家にもそのお話は伝わっておりますよ。レーコ卿が大活躍されたのですよね」


 皇帝エルンスト2世は目を細めながらその説明を聞いていたのだった。


「それからも『2代目』は、いろいろな出来事や事件に関わっていきます」


 当時『魔族』と呼ばれていた『北方民族』との軋轢あつれきを解消したのもこの頃である。


「ショウロ皇国の新造船『ベルンシュタイン』の建造プロジェクトにも参加し、その際は『方位磁石』を提供しましたし、旧レナード王国の遺跡から生じた『化け物』を退治もしました」


 それにはエルザの実兄フリッツも大いに関わっていたのだが、それは説明しない。


「セルロア王国で行われた式典にも参加して、のちの国王となる王太子セザール様と懇意になりました」


 その後は自動車を作り、ミツホへも出向いた。

 そして世界会議が発足。


 このあたりは、もう『2代目』として世界に名が売れたため、各国の記録にはっきりと記されている。


「その後、ショウロ皇国出身のエルザ・ランドルを……つ、妻に迎え、盛大な結婚披露宴を、行い……ます」


 クライン王国を始めとし、当時の小群国すべてを回るという空前絶後の披露宴であった。


「……さらにその後、古代遺跡を発見、接収して今の『アヴァロン』とし、『世界会議』の拠点としました」


 その頃になると、仁の尽力が実ってきて、各国で魔法工学が盛んになり、競技会や展示会なども頻繁に行われるようになっていったのである。

 エルザの説明はまだまだ続く……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。

     https://ncode.syosetu.com/n5250en/

     お楽しみいただけましたら幸いです。


 20210213 修正

(誤)「……さらにその後、古代遺跡を発見、摂取して今の『アヴァロン』とし

(正)「……さらにその後、古代遺跡を発見、接収して今の『アヴァロン』とし

(誤)「それからも『2代目』は、いろいろな出来事や事件に関わっていきます。」

(正)「それからも『2代目』は、いろいろな出来事や事件に関わっていきます」


(旧)「弟子となったものだけに使える……いえ、使えるものだけが弟子になれる、ある工学魔法です」

(新)「後継者候補となったものだけに使える……いえ、使えるものだけが後継者候補になれる、ある工学魔法です」

(旧)「それが使えないと弟子にすらなれないというわけか」

(新)「それが使えないと後継者候補にすらなれないというわけか」

(旧)

「そういう意味で、『2代目』のお弟子はジン殿とマキナ殿、というわけですね」

(新)

「そういう意味で、『2代目』の後継者候補はジン殿とマキナ殿、そして『森羅しんら』のマリッカ殿というわけですね」

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― 新着の感想 ―
>仁の尽力 ダジャレ回収ヨシ! >低レベルの『知識転写』を使える技術者は少なからずいる かつてはバレたらヤベェ魔法でしたが、劣化版は過去にも開発されていましたし、この時代では知識転写もそこそこ普及し…
[良い点] さあ、羞恥プレイの時間だ。 [気になる点] と思ったら、プレイ含めて全部エルザに丸投げた……!? [一言] そしてここから先は、我々(も、仁本人)も知らないジン・ニドーの歴史が語られる事に…
[気になる点] ……そう言えば >「その後、ショウロ皇国出身のエルザ・ランドルを……つ、妻に迎え、盛大な結婚披露宴を、行い……ます」 て、『今のエルザ』ってどういう立ち位置なんでしたっけ? 『2代目の…
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