表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
68 新魔法連盟篇
2562/4291

68-37 ラルヴァの危険性

 パンドア大陸西にある施設における、老子と『ラルヴァ』とのやり取りは、始まった時に比べ、その様相をかなり変えてきていた。


「……では、御主人様(マイロード)に、マルキタス殿用のボディを作ってもらうことに異存はないのですね?」

 老子が言った。その相手である『ラルヴァ』はゆっくりと頷いた。

「うむ。多少思うところはあるが、この際力を借りることにしようと思う」

「わかりました。拠点に戻り次第、御主人様(マイロード)にお伝えしましょう」


 老子も、もう仁のことを『御主人様(マイロード)』と呼んではばからない。

「さて、これで懸念事項の1つは消えました。続いてもう1つの件に移りたいのですが?」

「うむ、話を継続するというのは一向に構わないが、内容は?」

 仁を一時的にせよ協力者として認めたことで、『ラルヴァ』の態度もやや改善されてきている。

 老子はここぞと問答の第2ラウンドを開始した。


「『新魔法連盟(ネオ・マギアス)』について伺いたい」

 『ラルヴァ』は軽く頷いた。

「なるほど、それか」

 老子は言葉を続ける。

「『ラルヴァ』殿の目的とはかなりかけ離れていると思うのですが」

「それはそうだろうな。この私でさえ、『何をやっているのか』と思うからな」

「なんと言われる?」

 問い返した老子に向かって、『ラルヴァ』は笑った……ような顔をした。

「『新魔法連盟(ネオ・マギアス)』など、あの5人の中にある妄想に過ぎない」

「ほほう?」

「先ほども言ったが、あの5人は試作であり、マルキタス様に相応しい『れ物』を作るための通過点に過ぎぬ」

 『ラルヴァ』自身には『新魔法連盟(ネオ・マギアス)』の思想はどうでもいいものだったようだ。


「そもそも、あいつらの思想は矛盾しているし、実現できるとも思えない。まあ狂人の戯言たわごとと大差ないな」

「なかなか手厳しいですな。『ラルヴァ』殿が作ったものでしょうに」

「それはそのとおりだが、あくまでも試作であり、その出来具合を確認するためだけに共にいただけだ。……おそらく今は船ごと沈没して海の底だろう?」

「まあそうですな」

 老子は曖昧あいまいに頷いた。


「あの5人の素性は教えてもらえますか?」

「うむ、今となっては問題ない。奴らは自ら『5人衆』と名乗っていたな」

「5人衆?」

「そうだ。マルキタス様の側近のような立場にいたが、別に特別何かに優れていたわけではなく、たまたまそばにいた5人を適当にそばに置いて雑用を任せただけだがな」

 それがいつの間にか増長し始め、偉そうにふるまいだしたのだと『ラルヴァ』は言った。

「マルキタス様が『知識転写(トランスインフォ)』の実験台として、その5人分の『情報クリスタル』を作ったのだが、どうやら使わなかったようで、私が再起動したとき、同じ施設に残されていたのだ」

 実験用にちょうどいいと考えた『ラルヴァ』は、それをコピーしてゴーレムの『制御核(コントロールコア)』に使ったわけだ。


「だが『制御核(コントロールコア)』を作るというのはなかなか難しいな。どうにも思考が雑なものばかりできてしまう」

 『ラルヴァ』は残念そうに言った。

 ここで老子は、少々情報を開示して、『ラルヴァ』からの信頼度を少し上げようと考えた。

「なるほど、あなたは正式に工学魔法を学んだわけではないのですね。ならば無理もない……」

 『ラルヴァ』が興味を引くように、わざと言葉足らずにぶった切る老子。

「む? それはどういう意味だ?」

 そしてそんな意図どおり、『ラルヴァ』は尋ね返してきた。

 こうした『ラルヴァ』からの質問に答えてやる、という形に老子は持ってきたわけである。


「私も、工学魔法は専門ではないのでそこまで詳しくはないのですが、『制御核(コントロールコア)』にする『魔結晶(マギクリスタル)』はできる限り純粋なものがいいようですよ?」

「ほう? それは知らなかったな」

 確かに、あの5『人』に使った『魔結晶(マギクリスタル)』は2級品であった、と『ラルヴァ』は言った。

「ふむ、確かに、老子……殿がそのようなことを知っているということは、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』という存在の実力は推して知るべし、だな」

 そのセリフには、若干の悔しさが感じられた。それは、先代の『魔法工学師マギクラフト・マイスター』を、彼の製作者であるマルキタスが敵視していたが故か、それとも己の未熟さを恥じたためか。


「それがどうして、『新魔法連盟(ネオ・マギアス)』などと称し、果ては艦隊までも所有することに?」

「あの艦隊は、あそこの施設にあったものを参考にして作ったものだ」

 聞き逃せない事実が出てきた。

「元からあった?」

「そうだ。おそらくあの施設を作った存在……『始祖(オリジン)』が作ったものではないかと思う」

「……」

 老子としては、『始祖(オリジン)』ではなく、その配下のゴーレムが、であろうと考えていたが、それは今の会話に関係しないので黙っておくことにした。あるいは効果的なタイミングで教えてもいいと考えている。


「それにしても、6隻も作る必要はなかったのでは?」

「いや。私が作ったのは、5人が乗っていた3隻だ。マルキタス様が喜ばれるのではないかと思ってな。あとの3隻は元からあそこにあったものだ」

 また新たな事実が出てきた。

 が、老君は先を促すように質問をした。

「相当な資材を使ったでしょうに」

「確かに。だが、幸いなことに、ここの地下深くには金属資源が豊富に眠っていたのだよ」

「それでも、浪費だったのでは?」

 だが『ラルヴァ』は首を横に振った。

「否。彼ら5『人』に可能とは思っていなかったが、万が一あるいは億が一、どこか適当な国を占領することができたのなら、それでよかった。その過程で散るなら、素材として、資源として回収してもいいと思っていた」

 3隻はデウス・エクス・マキナに沈められたがな、と『ラルヴァ』は結んだ。


「なるほど、あの5『人』は、どこまでも傀儡かいらいだったわけですね」

「そういうことだ」


 やはりこの『ラルヴァ』の立案能力や行動力は侮れない、と老子は感じた。

(ただ、知識と技術の裏付けがやや甘いのが救いでしたね)

 もしも『ラルヴァ』がマルキタスの復活ではなく、あの5『人』のサポートを重視していたら、状況はもっと複雑で悪くなっていただろう、と老子は考えた。

(停止させることは容易いことですが、果たしてそれが最良の選択でしょうか)

 老子は、いや操縦している老君も、『ラルヴァ』にはまだ、何か秘密が隠されているのではないかと推測していた。

(停止させて調べようとしてもわからない可能性もありますからね)

 もしもマルキタスが『精神生命体』に由来する『(サブ)自由魔力素(エーテル)波』も使って『ラルヴァ』の『制御核(コントロールコア)』を作成していたなら。

 それが意図したものであろうとそうでなかろうと、その部分の情報を引き出すには同じく『(サブ)自由魔力素(エーテル)波』が必要になる。

 『精神生命体』は別宇宙の存在であり、仁にもできないほどに『(サブ)自由魔力素(エーテル)波』を使いこなしていた。

 その片鱗でも使用されていたなら、と考えると、老子は(老君も)不用意に『ラルヴァ』を停止させて解析するということはしたくなかったのである。


*   *   *


『おそらく『再起動』したのも、そのあたりに由来するのではないでしょうかね』

 と老君は仮説を述べた。

『『ラルヴァ』が目覚めたタイミングですが、マルキタスから精神生命体が分離した時、と考えられないでしょうか?』

 仁はその仮説に驚く。

「なに!? ……うーん、否定も肯定もできないが……可能性としてはある……のか?」


 『空間振動』事件の際、別の宇宙との接触が起き、たまたまこの世界に取り残された、精神生命体の断片。

 それが、同じくたまたま波長が合ったマルキタスに取り憑いた。そんな彼を、ある時は苦しめ、またある時は閃きを助長し、共存していたのだ。

 そして最終的には、『(サブ)自由魔力素(エーテル)波』を含む魔力特性を持つ仁の魔力によって活性化し、マルキタスから分離した。


 だが、仁はすぐにその説を受け入れ、演繹えんえきする。

「その際に『(サブ)自由魔力素(エーテル)波』の衝撃波みたいなものを出したのかもなあ」

『はい、御主人様(マイロード)。その影響で、停止していた『ラルヴァ』が目覚めた、という考えは、それほど突飛なものではないと考えます』

「だな。……そうすると、停止させて調査する、というのは今のところ得策ではないか」

『そう考えます』

「うーん、だが、『ラルヴァ』はなかなか危険だぞ?」

『はい、御主人様(マイロード)。確かに侮れませんね』

 このまま丸め込んで味方に引き込むことはできそうもない。

 かといって、マルキタスを『自動人形(オートマタ)』として復活させた場合、そのマルキタスがどんな行動をとるか、予想がつかない。

 今の老君と仁にとっても、なかなか悩ましい選択であった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20200408 修正

(誤)仁を一時的せよ協力者として認めたことで、『ラルヴァ』の態度もやや改善されてきている。

(正)仁を一時的にせよ協力者として認めたことで、『ラルヴァ』の態度もやや改善されてきている。

(誤)かといって、マルキタス『自動人形(オートマタ)』として復活させた場合

(正)かといって、マルキタスを『自動人形(オートマタ)』として復活させた場合


 20200416 修正

(旧)「いや。私が作ったのは、ここにある3隻だ。

(新)「いや。私が作ったのは、5人が乗っていた3隻だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おっ、アノ人の投稿が無事されたようだ。たまに忘れてたり、ミスったりするらしいからねw レーコちゃんに『ついに』〆られたオチは前使ったから、フリッツ使おうかと思ったけど・・・ お~い!中止だ、…
[一言] 本当に目的のためには手段を選ばん奴ですね しかも、あれだけやらかした事が、目的の役に立つかすら眼中にないって ジ「マルキタス以外の世界には、それほど興味がないんだろうな」怖いやつ 礼「わか…
[一言] >>マルキタス殿用のボディ いざとなればコントロールコアを初期化できる仕掛けを・・・ >>妄想 もう、そうなら潰しても良かったのに >>船ごと沈没して海の底 は通り過ぎて既に素材に・・・…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ