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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
67 仁出張篇
2511/4290

67-34 トライについて

 夏祭りの翌日、すなわち8月18日。

「いろいろお世話になりました」

「また来てください」

 村長は笑みを浮かべながらそう言った。

「そこそこ稼がせていただきましたからね。近いうちに来ますよ」

「いやいや、コショウが手に入ったのは嬉しいですな」

 村長のアイク・ニビキとそんなやり取りをしたあと、特殊調査員99号、偽名アルト・エルバインはサイチ村を去っていった。


「さて、それではそろそろ俺もおいとましますかね」

 仁Dがそう言うと、村長は引き留めようとした。

「ジン様、もうお帰りに?」

「ええ、まだまだ他にもやることがありますから」

「そうですか……いろいろとお世話になりました。いつでもいらしてください。我が村は歓迎いたします」

「ありがとうございます」

 こうして、仁Dもサイチ村を去ったのだった。


 ところで、

「私は、もう1日2日、この村に残ります」

 そう言って技術次官ナハムス・マローは残っている。

 仁Dの行った内容を報告書にまとめるためであった。


*   *   *


 仁Dが村を去った後、村長の洗脳を解除することになった。

 実は村長は、今朝、新たに手に入れた鳩を使い、これまでの仁Dの業績を報告したばかりなのだ。

 書くことが多かったため、3羽の鳩を必要とした。

 だが、もう必要なくなるだろう。


 『ハリケーン』で村上空を通過する際に『覚醒機(ヴェッケナー)』の波動で村一帯を覆う。

 そのまま『ハリケーン』は飛び去ったが、村の様子は老君が『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で調べていた。


「う……あ、あ!? わ、私は……いったい何をしていたのだ?」

 当然、村長はこれまでの行動を覚えており、混乱をきたしていた。

 だが。

「村長、どうしたのかね?」

 ナハムス・マローがそんな村長に近づき、声を掛けた。

「あ、あ……マロー殿……」

「ふむ、洗脳が解け、混乱しているようだな」

「せ、洗脳……?」

「そうだ。どうやってかはわからないが、ジャグス公国が我が国を侵略するための布石として、そうした行為を各地で行っているのだ」

「私もそうだったと?」

「そういうことだな」

「……」

 がっくりと肩を落とす村長。

「まあ、気にするな」

 ナハムス・マローは、こうしたケースを何度か見ているので、村長のパニックにも対応できた。

 また、

「君に責任はない。気にせず、これまでどおりに過ごすことだ」

 ともフォローする。

 実際、アイク・ニビキの場合、特にノルハ公国に損害をもたらしてはいないからだ。


 そして実のところ、サイチ村へ来る前にデウス・エクス・マキナから、

「もし洗脳から覚めた人がいて、パニックになっていたらフォローしてやってください」

 と一言言われていたのである。

 その時は村長が洗脳されているとは思わなかったが。

(マキナ殿は知っていたのだろうか?)

 そうも思ったナハムス・マローであったが、確認するすべはなかった。


 兎にも角にも、サイチ村の開発・モデル化第一回目はこうして終了したのである。


*   *   *


 仁Dは一旦蓬莱島に戻る。

 これで仁は自由に動けるわけだが、まずは検討したいことがあった。

 『トライ』の情報である。


「老君、その『トライ』について、何か情報はあるか?」

 老君は0.2秒ほど考えた後に答える。

『はい、御主人様(マイロード)。ございます。……過去に、それらしきゴーレムと接触したことがあります』

「そうか。……それは、今の俺が知らない時代のことだな?」

『はい、御主人様(マイロード)

「……わかった。教えてくれ」


 仁の要望により、老君はかつて『モノ』『ジー』『テト』と呼ばれる、頭がなく、腕が4本ある、『侵略派』が作ったゴーレムのことを説明した。

「なるほど、それの仲間じゃないかというわけか」

『そうなります』

 確かに、『始祖(オリジン)』の数詞は、どこか自分が知るものに似ているところがある、と仁は思っていた。

「つまり、『モノ』……『1』、『ジー』……『2』、『テト』……『4』というわけか。だとすると『3』が抜けていたわけだな。それが『トライ』だと?」

『はい、御主人様(マイロード)。その可能性は大です。『ジー』と『テト』の間にあった空白、そこが『トライ』の居場所なのかも知れません』

 老君の推理力は卓越している。仁もその考えに同意した。


「それで、『魔導頭脳のブレーン』を作ったのが『トライ』だとすると、どうして本来の居場所にいないのか、だな」

『はい。当時の考察では、派遣された先で故障したのではないかとされておりました』

「まあ、そう考えるのが自然だよな」

 同僚である『モノ』『ジー』『テト』も知らず、また彼らを派遣した存在も把握していないというのだから、故障していると考えるのが自然であろう。

「もし故障しているなら、修理してやれば、こちらの味方にならないかな?」

『可能性はありますね。それよりも、本来の居場所に戻っていく可能性の方が高いですが』

「それはどこなんだ?」

『はい、御主人様(マイロード)。ニューエル地方にあるアオバ湖のほとりです』

「あそこか……」

 仁はローレン大陸の地図を頭に思い浮かべた。

「さて、どうするかな」

 とにかく、その『トライ』がまだ存在しているとして、それを見つけないことには話にならない。

「その『トライ』が、『始祖(オリジン)』のゴーレムなら、故障はしても破壊はされてはいないんじゃないかな」

『そうですね。外装はアダマンタイト系でしたから、おいそれと破壊はされないでしょう』

「そうだな……」

『同時に、『しのび部隊』にも情報を集めさせましょう』

 老君は、公王に直接聞くのはリスクがあるので、それ以外の者たちを当たってみると言う。

『『先進団(プログレッサー)』が何か知っているかもしれません。それから、ジャグス公国がこだわる、東の山脈にも何かがありそうです』

 これまで保留にしていた、ノルハ公国の東にある山脈も、もう少し詳細に調べてみると老君は言った。


 ジャグス公国を追い詰める策は、少しずつ進んでいくのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日2月18日(火)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20200218 修正

(誤)「さて、それではそろそろおれもおいとましますかね」

(正)「さて、それではそろそろ俺もおいとましますかね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 洗脳が解けた後のフォローって大事ですね。 [一言] ---ジャグス公王寝室--- ジャ公「ゲホゲホ!ゴホゴホ!うぅっ、ナニか聞こえてくる・・・」 裏シア「あなたがこんな目にあっているのは、…
[一言] これが爆弾仕掛けたとか水に混ぜものしたとかだとちょっとは罰を下す必要もありますが やったことってマギクラフト・マイスターが来たのを知らせたくらいですからねえ むしろソレを逆手に取れたまであり…
[一言] >>引き留めようと 次はどんな工事をとの下心が漏れ出て居るのに気付かずに >>報告書にまとめるため 何頁になるのやら >>確認する術はなかった 面と向かって問うのは怖いし >>修理して…
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