62-25 マハリーグ視察
天気は曇り。
北風が吹いて、今日は少し肌寒い。……のだが、カチェアはもっと北にある村の出身だし、仁も『地底蜘蛛絹』製の服を着ているので暑さ寒さには強い。
ホテルを出た仁一行は、復興の進む町並を歩き始めた。
「やっぱり、全然違うな」
元々、新興都市だったが、今はさらに整然とした区画整理がなされている。
「そうですね……ここではもう、私はジンさんを案内できませんね」
仁やカチェアがいたマハリーグの町並はもうどこにもない。
マルキタスの攻撃対象になっていたため、公王城は真っ先に破壊されたし、周囲の被害も相当なものだったはずだ、と仁は考えた。
「本当に、あの時は生きた心地がしませんでした」
仁の考えを読んだかのようにカチェアは呟いた。
「地下倉庫に逃げ込んで、未完成だったゴーレムを完成させて対抗しようとしたら敵のゴーレムは20体もいて……」
今でも思い出すと震えが来る、と言った。
「……」
こういう時、何を言えばいいのかわからず、無言になってしまう仁であった。
「ふふ、お気になさらず。トラウマにはなっていませんから」
無言になった仁の気持ちを察したのか、カチェアが笑った。
「私も、あの頃より少しは強くなったんですよ?」
「ああ、そうみたいだな」
村を出る時にもおどおどしていたカチェアは、今では立派な『アヴァロン』職員であり、『アカデミー』の研究生であった。
「うーん、なかなかよくできているな」
町並を見て歩きながら、仁は感想を述べた。
「基礎工事もしっかりやっているし、構造も、俺の知る限り問題ない」
「そうですか、それはよかったです」
ここで礼子が右手の方向を指差した。
「お父さま、あれを」
「おお」
そこには、高さ50メートルはありそうな塔が建っていた。
「おそらく『管制塔』ですね」
ホープが言う。
「そうだな。あれ? 確か飛行場の方角は逆じゃないか?」
そもそも、『ハリケーン』が着陸する際、あんな塔は目にしていない。
「おそらく飛行場はマハリーグの東西にあるのでしょう」
ホープが推測を述べた。
「国内線用と国際線用、とかかな?」
仁も想像してみた。
「はい、その可能性もありますね。今はまだ分けられていないでしょうけれど」
仁が着陸したのは将来的に国内線用の飛行場だったらしい。
「海側が国際線で、山側が国内線ということかな?」
「そうなるのではないでしょうか。『ハリケーン』を駐機した飛行場は小さめでしたから、国内線用という可能性が高いです」
それに、海側に国際線用飛行場を作るというのは理に適っている、とホープ。
「そうですね、ホープさんの言うとおりでしょう」
カチェアもその意見に賛成のようだ。
「あの管制塔もそのためのものでしょうし」
そんな会話をしつつ、復興の様子を観察していく仁たち。
「8割から9割復興していると、活気もありますね」
「だな」
今、仁たちは商店街にやって来ていた。
住民がいるのだから物流は生まれる。中でも食料は必須だ。
「この辺は活気があるな」
「ええ、そうですね」
「どこかでお昼にしよう」
時刻はそろそろお昼になる頃、食堂を探す仁たち。
「お父さま、あそこはどうでしょう?」
目のいい礼子が指差したのは、広い道路の反対側にある食堂。
「各国の食事が楽しめるみたいです」
50メートル以上離れているが、食堂の中まではっきりと見えている礼子は、
「食べている人の表情も悪くありません」
と説明した。
そこでお昼はそこで食べることに決める。
道路を渡って反対側へ。
まだ馬車も自動車も通っていないので静かなものだ。
「席は……空いているな」
半分くらいの席が埋まった状態だったので、仁たちは安心して中に入った。
「いらっしゃいませ」
「ええと、ゴーレム1体と自動人形1体も一緒でいいかな?」
「はい、大丈夫ですよ」
どうやらおおらかな店のようで、混雑もしていないので仁たち4人は奥の席に陣取った。
メニューはテーブルの上にあったので、さっそく確認する。
「この『ショウロ皇国風定食』にするかな」
と仁。
カチェアは、
「無国籍バラエティ定食」
を選んだ。
「なんだ、それ?」
と仁が尋ねると、
「『アヴァロン』でも時々出るんですよ。要は、各国の料理を色々混ぜたようなものです」
それを聞いた仁は、なんとなく理解した。
(パンに味噌汁、酢豚にグラタンみたいな組み合わせかな)
カチェアもまた、仁同様に好き嫌いはなくなんでも食べる。
そして普段から『アヴァロン』でこうした組み合わせの食事をしているんだろうな、と仁は思った。
定食はまずまずの味であり、値段も良心的。
「おそらく『アヴァロン』で学んだ料理人ですね」
とカチェアが言うところをみると食べ慣れた味だったようだ。
* * *
昼食後は、復興中のエリアに行ってみることにした。
そこでは、作業用のゴーレムもおり、人間の現場監督の下、きびきびと作業が進められていた。
「この町では口を出すところはなさそうだな」
「そうですね。これだけの効率でなされている作業はなかなかないと思います」
「同感です」
仁、礼子、ホープも作業の適切さを認めた。
ただカチェアだけは、じっと一点を見つめている。
「どうした、カチェア?」
仁が尋ねる。
「はい、あそこが気になって……」
カチェアが指差したのは、資材置き場だった。
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本日8月4日は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
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20210517 修正
(旧)なので、高緯度にあるこの町を歩くには少し肌寒い。
(新)北風が吹いて、今日は少し肌寒い。




