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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
57 空への憧れ篇
2144/4289

57-32 対面

 クライン王国国王、メリカランス1世がトカ村を訪れていた同じ日、つまり11月14日、エリアス王国南方の海に浮かぶプレアデス諸島の1つ、エレクトラ島。

 つまり、『懐古党(ノスタルギア)』の本部にて。


「マルコネンは、今のところ怪しいところはない、というわけですね」

 『懐古党(ノスタルギア)』の名誉顧問、エレナが呟くように言った。

「はい、エレナ様」

 話の相手はリーリア・マダガス。懐古党幹部で、普段は『メチレイ工房』を隠れ蓑に、情報収集している女性技術者である。

「これ以上深入りすると怪しまれそうですね」

「はい、そう考えます」

「そうなると……直接会ってみなくてはなりませんね」

「エレナ様が、ですか?」

「はい、そうです」

「危険では?」

「それはないと思いますが……」

 マルコネンに野心や邪心はなさそうであるし、今のエレナは仁によって強化されている。

 併せて、

「護衛ゴーレムも連れていきますし」

 ということを告げる。

「わかりました。私どもも、全力でサポート致します」


*   *   *


「『懐古党(ノスタルギア)』のエレナ殿が来訪されるそうだ」

 そして技術的なやり取りをしたいらしい、と、エリアス王国国営魔導工房に連絡が入る。

「おお! エレナさん自ら来られるのか!」

「美少女なんだってなあ?」

 国営魔導工房はその話で持ちきりになる。


「『懐古党(ノスタルギア)』、ですか」

「ああ、マルコネンは知らないか?」

「いえ、多少は存じておりますよ」

 そう答えながら、何やら考え込むマルコネンであった。


*   *   *


 11月17日、エレナと中堅技術者のアルーム・ピット、それに護衛の汎用ゴーレム2体が飛行船でエリアス王国の首都ボルジアに降り立ったのは、午後1時のことであった。

「おお、やっぱり綺麗だなあ」

「変わらず美しい……」

 そんな声が聞こえてくる中を、エレナは真っ直ぐ歩いて、迎えに出たフィオリーナ・ド・ドランテ魔法技術相と握手をした。

「ようこそ、エレナ様」

「お出迎えありがとうございます、フィオリーナ卿」

「エレナ様はいつまでもお若くて、羨ましいです」

「まあ、ありがとうございます。本日は……」

「ええ、わかっておりますよ」

 フィオリーナ・ド・ドランテは魔法技術相になる遙か以前からエレナと顔見知りであり、その教えも受けたことがある。

 平たく言えば『外弟子』にあたるので、この訪問が何を目的としているのか、薄々察していたのである。


「今現在、国営魔導工房で行っている研究は2つ。『飛翔機』と『自動人形(オートマタ)』です」

「飛翔機はわかりますが、自動人形(オートマタ)?」

 工房へと向かいながら、エレナとフィオリーナは言葉を交わす。

「そうなんですよ。どうも、一部の技術者がやる気を見せていて……」

「その、マルコネンという新人が連れている自動人形(オートマタ)を見て、ですか?」

「そうなんです」

「興味がありますね」

 そのうちに工房に到着。


「ようこそ、エレナ様!」

「エレナ様、魔導工房にようこそ!」

 歓迎の声が響く中、1人だけエレナを観察するようにじっと見つめる者がいた。言わずと知れたマルコネンである。


 歓迎の声が収まった後、エレナが口を開いた。

「皆さん、歓迎ありがとうございます。本日は、各国で開発が進んでいるという『飛翔機』について、いろいろとお話をしたくてまいりました」

 これは至極当然の話であるので、誰も不思議には思わない。

「では、こちらへどうぞ」

 立場上最高上司になるフィオリーナ魔法技術相がエレナ一行を工房内の応接室に案内していった。

「そうですね……ベニトア、ラルファート、それにマルコネンも、来てください」

 女性技術者と男性技術者、そして話題の新人技術者を、フィオリーナ魔法技術相は指名した。


*   *   *


 事務員がお茶を全員に配り終えると、話し合いが始まる。ちなみに、エレナもお茶を飲むことはできるし、味も『分析』的に判断することが可能だ。

 それよりも1人だけお茶を配られないと嫌がらせをしているみたいであるし、接待する側もされる側も形式的におかしなことになるので、エレナは出されたお茶を飲むことにしていた。


 閑話休題。

「では、本題に入ります」

 進行役はフィオリーナ魔法技術相が務める。

「飛翔機についてということで、まずエレナ様からお願いします」

「はい。……今現在、最も普及している『飛ぶ』ための手段は気球でしょうね。熱気球と軽気球がありますが、軽気球の方がより一般的でしょうか」

 気球は機動性があまりよくないため、町や城、砦などの防衛に使われている。

 ヘリウムで浮かぶものは軽気球と呼ばれ、加熱装置が必要となる熱気球に比べ、手軽と言うことで気球の主流になっているのだった。

「気球に対し、『風』を吹き付けて浮かぼうとするのが最近進歩がめざましい『風力式浮揚機(ブローフローター)』ですね。これは、ノルド連邦のマリッカ様が開発されたもので、『浮く』機能と『進む』機能を完全分離し、整備・製作がシンプルです」

 ここまでは皆知っていることなので黙って聞いている。

「ですが、それゆえに欠点もあります。何かわかりますか?」

 この問いに答えたのはマルコネンだった。

「僭越ながら発言をお許しください。……大型化が『難しい』ことですね」

 一言で答えたあと、一呼吸置いてから続ける。

「難しいという理由は、大型化するほど効率が悪くなること、強度面の不安があること、操縦性が悪くなること、風に弱くなること……などですね」

「なるほど、それがあなたのご見解なのですね。他のご意見はありませんか?」

「はい、それでは」

 今度は女性技術者のベニトア・ラストンが挙手をし、口を開いた。

「大型化につきましては、素材を変えることで対応できますので問題点とは言い切れないかと思います。それよりも、大型化することで魔力素(マナ)の消費量が増えますから、そちらの問題を解決すべきかと愚考します」

 一般的には魔力貯蔵庫(マナタンク)魔力炉(マナドライバー)を使用しているため、補給の問題がある、と指摘したわけである。

「なるほど。ですがそれは、『魔素変換器(エーテルコンバーター)』を使えば解決できますね」

 ここで、マルコネンの口から、思いもかけない単語が飛び出した。

「『魔素変換器(エーテルコンバーター)』ですって?」

 エレナも口を挟む。

「マルコネン殿、あなたは『魔素変換器(エーテルコンバーター)』を作れるのですか?」

「はい、もちろんです」

 この返答に、エレナはもちろん、出席者全員が驚いたのである。

「いったいどこで、その技術を……」

 アルーム・ピットが、思わず口にしてしまったほどに。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20190208 修正

(誤)『 懐古党 ( ノスタルギア ) 』の名誉顧問、エレナが呟くように言った。

(正)『 懐古党(ノスタルギア)』の名誉顧問、エレナが呟くように言った。


 20200728 修正

(誤)

 閑話休題

「では、本題に入ります」

(正)

 閑話休題。

「では、本題に入ります」

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― 新着の感想 ―
[一言] いよいよ誤字というレベルにすらならない部分なんですが、もしかして?と思い・・・ 「閑話休題」→「閑話休題。」かな?と。 たしかほかのところだと句点がついてたはずなので ※間違えて当該ペー…
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