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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
08 統一党暗躍篇
205/4422

08-26 新装備

 ヘルメットを完成させた仁はそのまま考え込む。

「お父さま、そろそろお昼です。エルザさんとの昼食の約束があるのでは?」

 と礼子に言われて今更ながら気が付く仁。

「ああ、そうだったな、じゃ、崑崙島へ行くか」

「はい」

 エルザとの昼食という習慣は、放っておくと不規則な生活に嵌り込む仁にとっては非常によい習慣と言える。

 なので最近は礼子もエルザとミーネにいい顔を見せ始めていた。

 その礼子と共に崑崙島に飛んだ仁。

「いらっしゃいませ、ジン様」

 ミーネが出迎えてくれた。

「今日もお昼呼ばれに来たよ」

 と仁が言えばミーネも、

「エルザも待ちかねてます」

 と言ってテーブルへ案内していった。館前にテーブルが設えてあり、エルザが座っている。青空にぽっかり浮かぶ白い雲が春らしい。

「ジン兄、いらっしゃい」

「やあ、エルザ」

「いいお天気。今日はあったかい。ジン兄、その格好で暑くない?」

 仁は冬服を着たままであった。地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸で出来た下着やシャツは防寒になり、同時に汗を放出してくれる。

 だから仁はあまり服装に拘っていなかった。しかしエルザも女の子、少々気になったらしい。もう冬物の季節ではないのだ。

「今日はあったかいから、外で食べることにしたんです」

 そう言いながらミーネが昼食を運んできたので服の話はそれまで。

 暖かいそよ風が吹き、確かに屋外で昼食を摂るにはちょうどいい陽気である。

 ゆっくり食事しながら、仁は昨日ラインハルトから聞いた、ステアリーナとの話をエルザに語って聞かせた。

「ライ兄、ステアリーナさんとそんな話を?」

「うん」

「統一党(ユニファイラー)……怖い」

 そう言ったエルザの肩がちょっと震えている。そんなエルザを仁は励ます。

「大丈夫だ、ここにいれば安心だよ。俺も付いてる。ラインハルトにも護衛を付けるし」

 隠密機動部隊(SP)を増員し、何人かの知り合いを陰ながら守らせることにした、と言って安心させる仁。エルザも少しだけ笑って肯く。

「ん、ジン兄」

「じゃあ、そろそろ帰るよ。また明日、な」

「うん、また、明日」


 蓬莱島に帰った仁は、エルザに言われた服の事を考えていた。そして突然ひらめく。

「魔物素材……それだ!」


 例えば凶魔海蛇(デス・シーサーペント)を例に取る。

 その身体は鱗、そして表皮に覆われている。鱗も硬いが、皮膚も強靱である。ではどう強靱なのか。

 魔物とはいえ生物の皮膚であるから、しなやかである。だが、礼子が殴りつけると、まるで鉄の塊を殴りつけたような音がしていた。これは何故か。

 一部の魔物の外皮は、衝撃や圧力に対して硬化する性質を持ったものがある。

 殴打のような衝撃に対し、瞬時に硬化して鉄のようになる。また、牙や爪、刃物のような局所的な圧力にも同じ反応をする。

 これらは魔力による自己防衛反応である。そういう素材に特定の性質を持った魔力を与えると収縮したり伸びたりする。

 自動人形(オートマタ)やゴーレムの魔法筋肉(マジカルマッスル)はこの性質を利用しているし、礼子の皮膚がしなやかなのに殴れば岩をも砕けるのはやはりこの性質があるからだ。


 仁はまず、この素材で服を作ろうと思いついたのである。

 今穿いているズボンは魔獣の革である。丈夫でしなやか。だが、硬化はしない。

「海竜(シードラゴン)の革、これの一番薄い部分は……やはり腹側、か」

 海竜(シードラゴン)は日本で言う竜を倍くらいに太くした体形と思って貰えばいい。その表面積も大きく、表皮は部分によってさまざまな性質がある。

 腹部、それもやや下腹部寄りがやや薄く、最もしなやかであった。

「やっぱりツナギ、だろうな」

 革のツナギを作るつもりである。魔物の革は工学魔法で融合(フュージョン)でき、多少の変形(フォーミング)も可能だから、もってこいではある。

 但し色が紫がかった黒である。これに先ほど作ったアダマンタイトコーティングした銀灰色のヘルメット。渋すぎる。

「まずは試作だ」

 変形(フォーミング)可能なので、多少緩かったりきつかったりしても大丈夫と、仁は作業を進めていった。

 鋏で切ることすら出来ない海竜(シードラゴン)の革を水流の刃(ウォータージェット)であっさりと切り出し、融合(フュージョン)させ、たちまちに1着作り上げてしまった。

 そして着てみようとして。

「あー、チャックがないなあ」

 ファスナーとかジッパーと言わないところが仁である。

「まあいいか。工学魔法で接合(ジョイント)しちまえ」

 試作なので一番安直な方法を採る仁であった。

「よっ、と。……あー、ここがきついな。『変形(フォーミング)』。……ここはだぶついたか。『変形(フォーミング)』」

 着ながら修正を施すこと数回、ついに仁専用革ツナギが完成した。

「うーん、これに魔力を通す、と。……いててててて!」

 通す魔力の種類が違ったらしい、一気に収縮されて締め付けられた仁。それでも魔力が少なかったので大したことはなかった。これが例えば礼子の出す力並だったら全身の骨が砕けていたところだ。

「お父さま、大丈夫ですか!?」

 黙って見ていた礼子が心配そうに声を掛ける。

「……ああ、大丈夫だ。ちょっと失敗した」

 今度はもっと慎重に魔力を流す。ツナギが硬化した。

「礼子、ちょっと……そうだな、1パーセントの力で、直接……じゃなくってその辺にある……そうそう、その木ぎれをぶつけてみてくれ」

 直接礼子に殴られたらどうなるかわからないので出来るだけ最初は穏やかに性能テストを行う仁であった。


 結果として、礼子の10パーセントの打撃にも十分耐える事がわかった。ただし盛大に吹き飛び、慌てて礼子が超速度で仁の後ろに回り受け止めたという落ちも。

 そしてそれ以上は怖くて試せなかった仁。

「まあ、これでいいな。これをベースにいろいろ機能を付けていくとしよう」

 鎧をベースにしようとばかり考えていたので難航していたのだと悟った仁の顔は晴れやかである。

「上手く収縮と伸長をコントロールできないかな」

 これは仁といえど簡単ではなかった。筋肉に相当する部分だけを収縮させるということだけでも至難の業であった。

 関係ない部分も収縮したり、思ったより収縮しなかったり。

 見ている礼子もハラハラしているような顔つきであった。

 そしてついに1つのアイデアに到達する。

 それは、ツナギの上に更に魔法筋肉(マジカルマッスル)を貼り付けること。これにより、どの箇所に魔力をどれだけ流したいか、がはっきりと認識できる。

「見た目がひどいけどな」

 まるで筋肉の付き方を表した人体模型である。暗いところで出会ったら卒倒ものだ。

 だが性能はと言えば、仁の動きのサポートに始まり、だいたい倍の力までは出してくれた。それ以上は仁の『骨』が保ちそうもないのである。

 筋肉だけが強くても、それを支える骨が弱くてはその力を十分に発揮することは出来ない。

「それでもまあ、防御力は1級。力も倍出せるならまあ成功だな。これはパワードスーツというより『強化服』だけどな」

 とりあえずの成功を喜ぶ仁であった。

「だけどこの見た目をなんとかしたいな……」

 筋肉人体模型では怖すぎる。

「あ、そうか、外側にもう1層貼ればいいのか」

 3層構造にすることで何とか見かけも普通にすることができたのであった。


*   *   *


「第8支部支部長のパーセルが逃げ帰ってきました」

「第8支部支部長……ああ、あの能無しか。金で支部長の地位を手に入れたあいつだな」

「はい、それで、エルザ・ランドルを一度は手中に入れておきながら奪い返されたとか」

「ふん、能無しらしいな。で、奪い返した奴というのは?」

「はい、それがジン・ニドーらしいので」

「ほう」

「そしてその際、ジン・ニドーは我々統一党(ユニファイラー)に『俺たちに関わるな』との警告を発し、第8支部の砦を光の柱で全壊させたそうです」

「光の柱? 何だ、それは?」

「わかりません。パーセルの説明も要領を得ないので」

「ふん、能無しはどこまでいっても能無しか。まあいい。魔導技術長にその情報も伝えておけ。あやつなら光の柱とやらの正体を暴けるかもしれぬ」

「はっ」

「『俺たちに関わるな』だと? 魔法工作士(マギクラフトマン)風情が何をほざく」

「仰る通りです」

「ジン・ニドーはともかく、ラインハルトと例の女が接触したそうだな?」

「はい、ダリにいるそうです」

「よし。至急2人を確保せよ」

「直ちに」

 少し違う形での『強化服』が登場です。


 お読みいただきありがとうございます。


 20130904 12時46分 誤字修正

(誤)身長

(正)慎重


 20130904 20時31分 エルザたちと外で食べることになったあたりの記述が「あったかいから外で食べる」など重複していたりしていたので若干修正。

(旧)今日は天気がいいので外である。青空にぽっかり浮かぶ白い雲が春らしい。

 (中略)

「今日はあったかいから、外で食べましょう」

 ミーネが昼食を運んできたので服の話はそれまで。

(新)館前にテーブルが設えてあり、エルザが座っている。青空にぽっかり浮かぶ白い雲が春らしい。

 (中略)

「今日はあったかいから、外で食べることにしたんです」

 そう言いながらミーネが昼食を運んできたので服の話はそれまで。


 20131205 12時20分 誤記修正

(誤)な、それがジン・ニドーらしいので

(正)はい、それがジン・ニドーらしいので


 20150322 修正

(誤)どの箇所に魔力をどれだか流したいか

(正)どの箇所に魔力をどれだけ流したいか

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そういえば仁が素材に悩んだりとか読んでいたらふと異世界やゲームでの金属糸って良く聞くけど金属布は聞かないと思った(実際はともかくファンタジー世界観の技術で実用的な物が作れそうな気がする…
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