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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
54 啓蒙篇
2019/4288

54-18 影

 5月29日、仁一行は『アヴァロン』をあとにした。

「ジン殿、マリッカ様、フレディ殿、グリーナ殿、ルビーナ殿、お世話になりました」

 見送りに出たトマックス・バートマンは一行1人1人と握手を交わした。

「またおいでください」

「ええ、近いうちに」

 そして仁たちは機上の人となった。

 ホープの操縦で、『ハリケーン』は空へと舞い上がる。

「まずは北上だ。ノルド連邦へ行くぞ」

「はい」

 マリッカを送りがてら、シオンたちにも挨拶に行くのだ。

 『ハリケーン』は時速400キロで飛んでいく。


「あ、この下ってカイナ村だ」

「ああ、そうか」

 ルビーナに言われてフレディも下を見た。

 ちょうど、村人総出で麦の刈り入れをしているところだった。

(懐かしい風景だな……)

 仁もまた、その光景に見入ったのだった。


*   *   *


 3時間弱で『ハリケーン』はノルド連邦、『森羅しんら』の氏族領に到着した。

「お帰りなさい、マリッカ。ジン、久しぶりね。……ええと、ルビーナとグリーナ、それにフレディ、でいいのかしら?」

「はい、フレディと申します」

 仁の子孫でカイナ村ニドー家の次期当主について、シオンは耳にしていたようだ。


「まあ、ジン様、おいでなさいませ」

 シオンの母で農業のエキスパート、ロロナも顔を出した。

 もう600歳を超えているはずだが、矍鑠かくしゃくとしている。土と共に生きているためだろうか、と仁は思った。


 昼食は仁、フレディ、グリーナ、ルビーナ、そしてシオン、ロロナ、マリッカの7人で摂ることになった。

「これ、穫れたての新トポポなんですよ」

「美味しい!」

 ルビーナはぱくぱくと食べていく。

「うん、美味しいよ」

「美味しいです」

 小ぶりな新トポポで作った肉トポポはなかなかの味だったし、トポポサラダも美味しい。

「これもどうぞ」

 新トポポで作ったプレーンコロッケも絶品だった。

 もちろん、新トポポの料理以外にも、白身魚のフライやベーコンエッグ、焼きたてのパンも出、

「ごちそうさま」

 皆、満足したのであった。


 ただ、マリッカだけは少し残してしまっていた。

「あら、マリッカちゃん、美味しくなかったかしら?」

 ロロナが尋ねる。彼女にとっては、いつまでもマリッカ『ちゃん』のようだ。

「いえ、ロロナさん、そうじゃなくて、ちょっと食欲が」

「あら……それは困ったわね」

 シオンも心配そうに言う。

「マリッカ、『治癒魔法』は? 試してみた?」

「はい。でも、あんまり効かなくて」

「そう……」

「少し疲れが溜まっているんだと思います。こちら(故郷)で少し休めば大丈夫ですよ」

「そう? 無理しちゃ駄目よ?」

「はい」

「……」


*   *   *


 マリッカの様子が気になった仁は、フレディ、ルビーナ、グリーナを蓬莱島へ連れて行ったあと、礼子と治癒師自動人形(オートマタ)リーゼを連れて、転移門(ワープゲート)で再び『森羅しんら』の氏族領を訪れた。

「シオン、さっきぶり。マリッカはどうしてる?」

「ええ、家に戻ったわ」

 仁が見舞いに行くというと、心配だからと言ってシオンも付いてきた。


 マリッカの家は、シオン邸のすぐ隣にある。

「いらっしゃいませ、シオン様、ジン様、レーコさん、それにお伴の方」

 出迎えたのはマリッカが作った自動人形(オートマタ)の『花子』。

「マリッカは?」

 シオンが尋ねた。

「お部屋で寛がれています」

「入ってもいいかしら?」

「今、お伺いしてきます」

 花子は急いで奥へと引っ込み、すぐに戻ってきた。

「皆様、どうぞ」

「ありがとう」

 花子の先導でマリッカの寝室へ。

「マリッカ様、お連れしました」

「ありがとう、花子」

 そこには、部屋着に着替えて寛ぐマリッカがいた。

「体調が優れないみたいだから、リーゼを連れてきた」

「ジン様、わざわざありがとうございます」

 さっそく診察することに。

 ベッドに横になったマリッカに、リーゼが『診察(ディアグノーゼ)』を掛ける。何度も、何度も。

「……どうだ、リーゼ?」

「はい。マリッカ様は、全体的に細胞が疲労していらっしゃいます」

「治療法は?」

「『治療措置ハイルフェルファーレン』と『快復(ハイルング)』を同時にお掛けします」

 内科の治癒魔法と外科の治癒魔法を併用することで、全身の細胞が活性化する。

 エルザが発見した治療法である。

「『治療措置ハイルフェルファーレン』『快復(ハイルング)』」

 治癒魔法の淡い光がマリッカを包んで……。

「ああ、楽になりました。ジン様、ありがとうございます」

「マリッカ、よかったわね。……あなた、私より20歳も若いんだから、まだまだ元気でいてもらわなくちゃ」

「ふふ、シオンさん、そうですね」

 マリッカが回復したのでシオンの顔も明るい。

 仁もほっとしていた。

 そんな時。

「ご主人様、ちょっと」

「ん?」

 リーゼが仁を呼んだのだった。 

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20180928 修正

(誤)昼食は仁、フレディ、グリーナ、ルビーナ、そしてシオン、ロロナ、マリッカの6人で摂ることになった。

(正)昼食は仁、フレディ、グリーナ、ルビーナ、そしてシオン、ロロナ、マリッカの7人で摂ることになった。

 orz


 20180930 修正

(旧)ジャガ

(新)トポポ (6箇所)

 そろそろ『ジャガイモ』と呼ぼうかと思ったのですが混乱しそうなのでトポポに戻します


 20210507 修正

(旧)仁の子孫で現ニドー家の次期当主について、シオンは耳にしていたようだ。

(新)仁の子孫でカイナ村ニドー家の次期当主について、シオンは耳にしていたようだ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  フレディのことを「現ニドー家の次期当主」としていますが、フレディはエリスを継ぐカイナ村の次期領主であり、カイナ・ニドー家の次期当主ではありますが、「現ニドー家の次期当主」とは言えないと思い…
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