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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
54 啓蒙篇
2014/4287

54-13 精密動作

 反応速度測定は順調に進んだ。

『ゼッケン5、『ロッテ53型』……0.06秒』

(おお、なかなかいい数値だ)

 この『モグラ叩き』式の測定法はなかなかいいので、仁も取り入れてもいいかもしれないと考えていた。


『ゼッケン6、『ユピテラ』……始め!』

(うーん、これは外装が重いだけじゃなく、制御核(コントロールコア)の処理能力も低い動きだな)

 光点を目掛けて叩くわけだが、それが微妙にずれていたのだ。

『ゼッケン6、0.1秒』

「うぐぐぐ……」

 悔しがる一団。

『ゼッケン7、『アーリア』……0.09秒』

(0.1秒を切ったか。なかなか頑張っているな)

 クラフトクイーン工房も、これからの伸びが期待できる出来であった。

『ゼッケン8、グレートロック……始め!』

(ああ、これはちょっと……なあ)

 見るからに動きが鈍く、光点の狙いも少しずれていたのである。

『ゼッケン8、0.14秒』

 これで8体全ての反応速度測定が終わった。


(うーん、やはり今の技術レベルは落ちてるな。今回の講義を切っ掛けに、向上して欲しいものだな……)

 魔法工学の進歩を切に願う仁であった。


『続きましては精密動作測定となります。これは直径5ミリの鋼球を、一定時間でこの皿に移す動作、それからどれだけ細かい文字が書けるか、その2点で測定します』

 皿には鋼球がちょうど入る窪みが100個あいていた。

(なるほど、面白い。鋼球より脆い材質にすれば、つまむ力の調整度合いも見られるのにな……それから、できれば全体的な動作の精密性も計りたいところだなあ……狭くてくねった通路をどれだけ速く抜けられるか……ああ、体格で変わるからすぐには無理か。それなら……)

 などと、仁がいろいろ考えていると、

『それではまず鋼球を皿に移す動作です』

 8体の前に、鋼球が山盛りになった皿と、100の窪みが付いた皿が、テーブルに載せておかれていた。

 テーブルの高さはそれぞれのゴーレムの腰の高さに合わせてある。

『制限時間は1分間です。それでは……始め!』

「おお! これは……」

「は、速いですな」

 ひょいひょいと鋼球をつまんで皿に移していく8体。

 それでも差はできるもので、楽に1分で100個を移し終えるもの、間に合わないものと差が付いてしまう。

『それまで! ……ゼッケン1アヴァロン汎用ゴーレム、51秒』

 51秒で100個を移し終えたということはおよそ1秒で2個という速度、人間より速いだろう。

『ゼッケン2アヴァロン戦闘用ゴーレム、56秒』

 ゼッケン1よりは遅いが、戦闘用にしてはこの精密性は評価されていいだろう、と仁は思った。

『ゼッケン3『試作8型』、43秒』

(おお、エイラたち、あの型で頑張ったな)

 『球体関節式』でこの値は凄い、と仁は感心した。

『ゼッケン4『ストーム』、25秒』

 会場がざわめいた。

(うん、1秒で4個か。いい値だ。フレディたち、いい仕事をしたな)

『ゼッケン5『ロッテ53型』、41秒』

(おお、アーネストのところも意地を見せたな)

『ゼッケン6『ユピテラ』、1分で89個』

 ここで、100個全部を移し終えられないものが出た。

(周りに随分こぼしたな……)

 ゼッケン6の周りには、つまみ損なった鋼球が何十個も散らばっていたのだ。

『ゼッケン7『アーリア』、59秒』

(おお、ギリギリだがなんとかやったか。クラフトクイーン工房も、これからに期待だな)

『ゼッケン8『グレートロック』、1分で89個』

(ゼッケン6と同じか。クライン王国国立魔導工学研究所にはこれから頑張ってもらわないとな……)


『……以上で鋼球を移す動作の比較測定を終わります。続きまして、小さな文字を書いてもらいます。文字は数字の0から9までと致します』

 鋼球と皿に変わって、ペンと紙が置かれる。

『制限時間は1分。その間は何度書いても構いません』

(なるほど、少しずつ小さい字にしていけばよさそうだな)


 仁が知っているのは、米粒にお経を『筆で』書く職人だ。『南無阿弥陀仏』とか書かれていた。

 見たところ、紙はかなり平滑度が高い。和紙系ではなく洋紙系にも見える。

 表面をコーティングしてカレンダーやスーパーカレンダー(いずれも用紙に平滑性、光沢等を与えるための機械)を通しているらしい。


『では、始め!』

 手元の様子は魔導投影窓(マジックスクリーン)に映し出されている。

(おお、かなり細かいな)

 ペン先との比較で文字の大きさがわかろうというもの。

(さすがに戦闘用は……苦手か)

 比較用のゼッケン2、アヴァロンの戦闘用ゴーレムは小さい文字は無理なようだ。

『それまで!』

 1分が過ぎ、皆ペンを置いた。係員が、透明なシートに方眼が刻まれたものを用意する。それを載せて比較測定するらしい。

『ゼッケン1、およそ1ミリ』

 文字の高さ1ミリほどの数字が書かれている。

『ゼッケン2、およそ3ミリ』

 それ以上小さい文字は潰れたり歪んだりして読めなかった。

(戦闘用じゃ無理もないな)

『ゼッケン3、およそ1ミリ』

(うーん、球体関節じゃ関節の遊びもあるからこれくらいが限度かも)

 そう、『球体関節式』には関節部のクリアランスが不可欠なので、多少のぶれが出てしまうのだ。とはいえコンマ以下であるが。

 ちなみに『アドリアナ式』でも関節部に僅かなクリアランスはあるが、それを補うため『靱帯』に相当する関節カバーがあり、がたつきはほとんどない。

 また、『魔法骨格式』はその構造上機械的な関節が存在しないため、この種のガタは皆無である。

 あとは制御系の問題となる。

『ゼッケン4、0.5ミリ』

 すげえ、というような声が観客席から上がった。

『ゼッケン5、およそ1ミリ』

(球体関節式の限界なんだろうな……)

 と仁は思った。

『ゼッケン6、およそ4ミリ』

「くっ、こんな測定に意味はない!」

「そうだそうだ」

 一部の者が不満を漏らしているようだ。

『ゼッケン7、およそ2ミリ』

(さすがにこんな動作は想定していなかったんだろうな。だが、汎用であるならこのくらいこなせないと)

 少々辛口の感想を抱いた仁であった。

『ゼッケン8、およそ4ミリ』

(まあ考えようでは、戦闘用がこれだけできるというのは評価すべきかも)


 ところで、これは競技ではないので、特に順位を付けるということはしていない。

 それでも観客にとって、優劣は一目瞭然であるが。


『ありがとうございました。それでは、最後の比較に入ります』

 いよいよ最後の項目、知力検査である。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 お知らせ:9月23日(日)夕方まで帰省してまいります。

      その間レスできませんのでご了承ください。


 20180924 修正

(誤)(いずれも用紙に平滑性,光沢等を与えるための機械)

(正)(いずれも用紙に平滑性、光沢等を与えるための機械)

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