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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
54 啓蒙篇
2013/4287

54-12 反応速度測定

 ウエイトリフティングが始まった。

 魔導機(マギマシン)に取り付けられている横棒を持ち上げることで、出した力を測定できるのだ。

 体勢は『ジャーク』と呼ばれる『差し上げ』動作のみとなる。

(これって、デモンストレーションと言ってるけど、性能測定と言い換えた方がいいんじゃないかな?)

 などと思いながら仁は眺めている。

 まずはゼッケン1、比較用のアヴァロン汎用ゴーレムだ。

 女性型と言うこともあって、

『ゼッケン1、197キロ』

 という結果であった。

 この『197キロ』という数値は、測定器正面に付いているので、誰でも一目で力がわかる。

『ゼッケン2、445キロ』

 比較用とはいえ、アヴァロンの戦闘用ゴーレムだけのことはあり、汎用ゴーレムの倍以上の数値であった。

『ゼッケン3、『試作8型』。……739キロ』

 おお、という声が観客から上がる。

(うん、エイラもグローマもカチェアも頑張っているなあ)

 球体関節式という形式はこうした出力との関連はほとんどないので、この数値は彼らが工夫した結果ということになる。

 そして。

『ゼッケン4、『ストーム』。……926キロ』

 観客たちからどよめきが上がった。

(これは外装のパワーも使ったな)

 いざという時には外装にも『変形式動力(フォームドライブ)』を行わせることで最大出力を上げる工夫は、汎用型である『ストーム』にも取り入れていたようだ。

 仁は彼らの創意工夫が効果を上げていることに満足した。

『ゼッケン5、『ロッテ53型』。……357キロ』

 女性型、かつ汎用タイプということを考えれば、この値はなかなかのものである。

(アドリアナ式……いや『簡易』アドリアナ式かな?)

 柔軟性や出力、それに動き方から、仁は方式の見当を付けていた。

(おそらく、構造を極限近くまで簡略化したアドリアナ式だな。動作を人間に近づけることと製造コストを両立させようとしたんだろう)


『ゼッケン6、『ユピテラ』。302キロ』

「くそおおおおおお! なんで、あんな女型のゴーレムに負けるんだ!!」

(また騒いでるな……何でって……ああ、『魔素変換器(エーテルコンバーター)』じゃないのか。……『自由魔力炉(エーテルドライバー)』の効率が悪いんだなあ)

 ハンプトン工房の連中は少しガラが悪いようだなあと仁は感じていた。

『ゼッケン7、『アーリア』。345キロ』

(おお、クズマ侯爵のところだな。なかなか丁寧な造りをしているじゃないか)

 仁は、クラフトクイーン工房がちゃんとおさえるべきところはおさえているなあと感じ、嬉しかった。


『ゼッケン8、『グレートロック』。……299キロ』

(うーん、まだまだ改善の余地はありそうだ。『魔法連盟』の影響もなくなったし、これからに期待だな)


『ありがとうございました。以上をもちましてウエイトリフティングを終了いたします』

 これは競技ではなく、性能測定なのでとくに順位を付けるようなことはしていないようだ。


『続きましては反応速度測定となります』

 これは仁も初めて聞く項目だった。

(いや、何を評価したいのかはわかるんだが)

 その測定法には非常に興味があった。

(俺なら……レーザー光をランダムな方向から照射して、それから逃げる時間にするかな……それとも……)

 などと考えを巡らしているうちに、測定器が準備された。

 その測定器は、大きなテーブル状で、正面にもパネルが付いており、横から見ると天板はL字型になっている。

 そのパネルは半透明な素材、おそらく『地底蜘蛛樹脂(GSP)』でできている。

『このパネル部分に、ランダムで光る点が現れます。その点を正確に突けるかどうかで反応速度を測定します』

 アナウンスでも説明がなされていた。それで仁は、

「モグラ叩きかよっ!」

 と、思わず口にしてしまった。

 物理的なターゲットがぴょこぴょこ現れるのではないが、発想はモグラ叩きである。

「確かに、似ていますね」

 仁譲りの知識がある礼子は頷いたが、

「もぐらたたきですか?」

 そばにいたフレディやグリーナ、ルビーナ、マリッカは首を傾げている。

「ああ、そういうゲームがあるんだよ。……それとは比べものにならないくらい、速く動くんだろうがな」

 今、観客に説明するため、測定器はゆっくりと動かされている。

『このように、一瞬光って消えます。消えたあと、次はどこで光るか、規則性はありません』

 ぴかぴか、チカチカと光点は消えては点き、点いては消えてを繰り返している。

『これは次第に速くなります。これによって反応速度が測定できます』

 観客も納得したようだ。それどころか、

(……これ、人間用に性能落とせば遊技用や訓練用になるのでは?)

 と考えた者もいたという。


『では、開始します』

 まずはゼッケン1からだ。

 右手に専用の剣を持っている。測定器を壊さない材質で作られている。

 最初はゆっくりである。約1秒で切り替わるところから始まり、0.9秒、0.8秒……と、次第に速くなっていくのだ。

「おお、なかなか興味深いな」

 卓上だけではなく正面のパネルでも光るので、その場合は『突く』ことになる。

 反応速度と同時に、正確性も求められているな……と、仁は思った。

『それまで! ゼッケン1、0.2秒です』

 これが速いのか遅いのか、まだ観客にはわからない。

(測定の仕方で変わってくるしな。そういう意味でも、こうした比較対象があるのはいいな)

 こうした測定の場合、基準や測定法で違ってくるものであり、それゆえに定義をはっきりさせ、どこで行っても差が出ないようにすることが望ましいのである。


『次、ゼッケン2です』

 戦闘用ゴーレムなので、両手に剣を持っていた。

(だからといって反応が早くなるわけでもないだろうが、その独自のスタイルで行う意味はあるな)

 そして仁の想像通り、戦闘用とはいえ格段に速いわけではなく、また両手に持っているから有利ということもなかった。

『ゼッケン2、0.15秒です』

(うーん、判断が難しいな)

 次以降でわかってくるだろうと、仁は注目した。


『ゼッケン3、『試作8型』……始め!』

 試作8型は片手剣だった。そして、

「おお!」

「なかなか速い!」

 右、左、正面、左、中央……。次々に移り変わる光点を的確に叩いている。

 見ている者にも、その速さは実感できた。

『ゼッケン3、0.08秒』

(うーん、無駄を省いた造りになっているため、動作も軽快なんだろうな)

 この反応速度測定は、制御核(コントロールコア)の処理能力と魔法筋肉(マジカルマッスル)の反応速度と動作速度、それに魔導神経の伝達速度などが組み合わさった結果であることを仁は感じ取っている。

(どれか1つでも不十分だと足を引っ張られるわけか)

 そしていよいよフレディたちの『ストーム』である。


『ゼッケン4、『ストーム』……始め!』

 最初は1秒から、そして次第に速く……。

「お、おお!?」

 見ている者たちから驚きの声が上がった。

 『ストーム』の動作は見るからに軽快だったのだ。

(今回は外装を軽くしているからな)

 外装が重いと、それだけで相当の負担になるのだ。

(骨格にも魔導神経の役割を持たせているしな)

 そして制御核(コントロールコア)は、わりあい品質のいいものを使っている。そして蓬莱島で『わりあい品質のいいもの』は、一般的には最高級品だ。

『ゼッケン4、0.04秒』

(うん、いい数値だ)

 仁は心の中でフレディたちを褒めたのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 お知らせ:9月22日(土)早朝から23日(日)夕方まで帰省してまいります。

      その間レスできませんのでご了承ください。


 20180924 修正

(誤)……ああ、自由魔力素(エーテル)コンバーターじゃないのか。

(正)……ああ、『魔素変換器(エーテルコンバーター)』じゃないのか。

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