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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
54 啓蒙篇
2012/4287

54-11 デモンストレーション開始

 午前9時、『アヴァロン』の北エリアにある緑地と、それに隣接する『練兵場』でゴーレムのデモンストレーションが開始される。

 観客は緑地に設けられた席に着く。日差しを遮るテント付きだ。仁たちは別に用意された控え席である。

 一方デモンストレーションは練兵場で、となる。

 講義ではないので昨日よりも人は増え、3000人ほどとなっていた。中には、各国の王族や有力貴族も混じっている。

 巨大な魔導投影窓(マジックスクリーン)が複数用意され、角度を変えてデモンストレーションを見ることができるように配慮されていた。


『さて皆様、時間となりました。ゴーレムのデモンストレーションを開始いたします』

 アナウンスが響いた。トマックス・バートマンの秘書自動人形(オートマタ)、マノンの声である。

『内容は、『アヴァロン式ゴーレム評価プログラム』となります。具体的には……』

 1.柔軟性確認

 2.300メートル走

 3.ウエイトリフティング

 4.反応速度測定

 5.精密動作性測定

 6.知力検査

『と、なっております。破壊系の項目はございません。もし、お持ちのゴーレム、自動人形(オートマタ)が、『アヴァロン』基準でどのくらいなのかお知りになりたい方がいらっしゃいましたらお申し出ください』


「では、私どものものを」

「私どものゴーレムも調べていただきたいですな」

 一応、ゴーレムを持ち込んでいる客へは前日のうちに通達してあったので、スムーズに申し込みが行われた。

 飛び入り参加は4体。

 ここで、参加するゴーレムを含め、紹介が行われた。女性型3体、男性型5体という内訳だ。


 ゼッケン1  比較用、アヴァロン汎用ゴーレム(球体関節式) (女性型)

 ゼッケン2  比較用、アヴァロン戦闘用ゴーレム(球体関節式) (男性型)

 ゼッケン3 『試作8型』アヴァロン最新型ゴーレム(球体関節式) 製作者:ゴー研(ゴーレム研究室)グローマ、エイラ、カチェア (男性型)

 ゼッケン4 『ストーム』(魔法骨格式) 製作者:『魔法工学師マギクラフト・マイスター』の弟子 フレディ、グリーナ、ルビーナ (男性型)

 ゼッケン5 『ロッテ53型』 製作者:エゲレア王国王室工房(ロイヤルファクトリー) (女性型)

 ゼッケン6 『ユピテラ』 製作者:エゲレア王国ハンプトン工房  (男性型)

 ゼッケン7 『アーリア』 製作者:エゲレア王国クラフトクイーン工房  (女性型)

 ゼッケン8 『グレートロック』 製作者:クライン王国国立魔導工学研究所  (男性型)


『ゼッケン5から8が、今回飛び入り参加してくださいました。ゴーレムの構造・型式につきましては公開致しません』

 観客からの拍手が贈られた。

『それでは、『アヴァロン式ゴーレム評価プログラム』を開始したいと思います。まずは柔軟性の確認です。ゼッケン1をご覧ください』

 アヴァロン汎用ゴーレムは、まず『立位体前屈』を行った。


(か、固い……)

 見ていた仁は、わかってはいたが驚いた。めいっぱい身体を前に曲げて、両手の指先がようやく膝に届く程度だったのだ。

 それは見ていた人々も思ったようで、観客席はしばらくざわざわしていた。


『ではゼッケン2から8までのゴーレム、1に倣って同じ動作を行ってください』

 巨大な魔導投影窓(マジックスクリーン)に7体の様子が映し出された。

 ゼッケン2も1と同じく球体関節式のせいか、膝にようやく手がつく程度。そう、球体関節式は腰まわりの自由度が低いのである。

 だがゼッケン3は、最新型だけあって球体関節式にも関わらず、向こうずねの半ばまで曲げることができていた。 

 そしてゼッケン4、ストームは魔法骨格式なので、両手の平をべったりと地面に付くことができている。

 ゼッケン5も、指先が地面に付いていた。

 だが、ゼッケン6、7、8は膝にやっと指先がつく程度であった。


『ありがとうございました。続いては『立位体側屈』です』

 身体を横に曲げる運動であるが、これも推して知るべし。

 ゼッケン1、2は15度くらいしか曲がらず、ゼッケン3は30度くらい。

 ゼッケン4『ストーム』は40度ほど曲がった。

 そしてゼッケン5は30度。6、7、8は10度くらいであった。


『最後は『回旋』です』

 腰の捻りである。

 これについては球体関節式も十分な可動域をもっており、左右90度以上は捻ることができていた。

 8体ともに大きな差は出なかったのである。


『ありがとうございました。こうした柔軟性は人間の動作を模倣する際に役立ちます。また、戦闘時にも上下左右といった周囲への対処に役立ちます」

 解説を聞き、観客の一部はなるほどといった顔になっている。

「ま、まあ、柔軟性など、指標の1つに過ぎないからな」

「そ、そうだな。……あのフレディが参加して作ったにしてはなかなか出来がいいようだが」

「ふん、他のメンバーが頑張ったんだろう」


*   *   *


『次は300メートル走です。合図と共に、8体同時に走ってもらいます』

 これはわかりやすいので、観客も身を乗り出した。

『では、位置について。……用意……スタート!』

 土煙が巻き起こり、スタートライン付近の土がえぐれた。

 そして数秒のうちに、全員がゴールインした。

『トップはゼッケン4『ストーム』。タイムは2.5秒』

 秒速にして120メートル。

『2位はゼッケン3『試作8型』。タイムは2.8秒。秒速107メートル。

 3位はゼッケン5『ロッテ53型』。タイムは3秒。秒速100メートル。

 4位はゼッケン7『アーリア』。タイムは3.1秒。秒速97メートル』

 秒速は小数第二位を四捨五入しております、と補足するマノン。

『5位はゼッケン2アヴァロン戦闘用ゴーレム。タイムは4秒。秒速75メートル。

 6位はゼッケン8『グレートロック』。タイムは4.2秒。秒速71メートル。

 7位はゼッケン6『ユピテラ』。タイムは4.9秒。秒速61メートル。

 8位はゼッケン1アヴァロン汎用ゴーレム。タイムは5.2秒。秒速は58メートル』

 ぱちぱち、と観客席から、各ゴーレムの健闘を讃えて拍手が起こった。


(うーん、やっぱりオノゴロ島での競技に比べたら見劣りするのは仕方ないな)

 来賓席で仁はそんなことを思っていた。

 先日行った競技では音速の壁さえ超えた者がいたのだから。

 また、

「な、なんだよあのゴーレム! 速すぎだろう!!」

「うちのだって、国の標準型の倍は速かったんだぞ! それがここではケツから数えた方が早い順位なんて……」

「何か不正をしたんじゃないか?」

「何かってなんだよ。一斉に走って不正も何もないだろう。2位だって秒速100メートルを超えているんだぞ」

 などと揉めている連中もいたようだ。


『次はウエイトリフティングです。これは、『アヴァロン』最新式の器具を用い、測定します』

 アダマンタイトをふんだんに使った魔導機(マギマシン)が準備された。

『これは、加えられた力を重さに換算できる装置を応用しておりまして、重りを使わずに力を測定できるものです』

 これを聞いて仁は『おお』と思わず声を出しそうになった。

(歪みゲージを使った測定器のようなものかな? それとも……)

 それは、仁があずかり知らぬところで開発された『新発明』といっていいものだったからである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20180921 修正

(旧)秒速は四捨五入しております、と補足するマノン。

(新)秒速は小数第二位を四捨五入しております、と補足するマノン。


 20180923 修正

(誤)それがここではケツから数えた方が速い順位なんて……」

(正)それがここではケツから数えた方が早い順位なんて……」


 20181017 修正

(旧)方式につきましては公開致しません』

(新)ゴーレムの構造・型式につきましては公開致しません』

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