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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
54 啓蒙篇
2011/4287

54-10 ちょっとした出来事

 夕食時。

 仁たちは同じテーブルで食事を摂っていた。

「明日の予定は何だっけ?」

 いち早く食べ終わった仁が尋ねた。

「午前中がゴーレムのデモンストレーションですよ」

 マリッカが答えるが、

「ああ、それは知ってる。すまん、その内容が知りたかったんだ」

 と、仁。

「それについてはまだ連絡が来ていませんね」

「まあ、ハードなバトルはないだろうな」

「ジン様、あたしたちのゴーレムと、ここのゴーレムとが競い合うの?」

 2番目に食べ終えたルビーナが聞いてきた。

「そうらしいな。……『オノゴロ島』での競技とは多分レベルが違うぞ?」

「まあ、そうよね。でも楽しみだなあ」

 自分たちが作ったゴーレムが、この世界のレベルで言うとどのくらいなのか、ルビーナとしては非常に興味があったのだ。

 そしてそれはフレディやグリーナも同じだった。

「性能の比較、といった内容だと思うけどな」

 仁としてはそう言うしかなかった。


 夕食後、その他にも翌日のことを打ち合わせておこうと思った仁だったが、

「ジン様、少し疲れたので私、先に休ませていただきますね」

「ああ、さっきもそう言っていたっけ。いいよ、ゆっくり休んでくれ」

「はい、それではお休みなさい」

「お休み」


 マリッカは抜けたが、ルビーナたちはまだまだ元気そうなので、仁は少し話をしておくことにした。

「……っと、そうだ、その前に」

 仁はホープに向き直った。

「ホープ、持ってきたペルシカジュースをマリッカに差し入れしておいてくれ」

「はい、わかりました」

 ホープはペルシカジュースの入ったボトルを持ち、マリッカの部屋へと向かう。それを見送った仁は3人に向き直った。


「さて、明日のことだが、ゴーレムのデモについては俺は基本ノータッチでいきたい」

「ええっ!?」

「な、何で?」

 フレディとルビーナは声を上げたが、グリーナは少し考えてから、

「ジン様が手掛けたゴーレムではないから、ですね?」

 と確認するように尋ねた。仁は頷いてみせる。

「そうだ。もちろん不測の事態でも起きれば絶対にフォローする。バックには俺と礼子とホープが付いていることを忘れるな。それに蓬莱島とオノゴロ島も」

 それは全世界を相手取ってもおつりが来るのだが。

「それは……この上なく安心できますね」

「う、うん」

「ジン様、ありがとうございます。それを伺っているだけで百万の味方を得た思いです」

 意外とグリーナは舞台度胸があるのかな? と感じた仁である。

「とはいえ、デモンストレーションにあたり、命令者ははっきりさせておいた方がいいぞ」

 3人が共同製作したものだけに、『至上の主人(アークマスター)』がはっきりしておらず、3人が同時に違う命令を出すと、おそらく混乱してしまうだろうと仁は予想していた。

「あ、そうかもしれません」

「それは気が付きませんでした」

「それじゃあ、今、決めちゃう?」

 フレディ、グリーナ、ルビーナは仁に指摘されてその危うさに気が付いたようだ。

「じゃんけん、ぽん」

「あ、負けた」

 結局、フレディ、ルビーナ、グリーナの順に優先順位を付けることになった。

「うん、これでいざという時、命令系統が混乱せずに済む」

 仁も懸念事項がまた1つ消えてほっとした。

「それで、明日行われるデモンストレーションなんだが、俺の予想する内容は……」

 仁は3人に説明していく。

 予想と言ってはいるが、おそらく仁の考えの方が困難な内容が多いであろう。

 1時間ほど打ち合わせをした仁は、3人と別れて自室に戻った。

 3人はその後、もう30分ほど打ち合わせをしていたようである。

「それじゃあ優先順位1位のフレディ、頑張ってね」

「ええ……?」

 というやり取りがあったかは定かではない。


*   *   *


 さて、翌日である。

 朝食後、デモンストレーションまでまだ少し時間があるので、仁は近辺を散歩してみることにした。もちろん礼子も、そして今回はホープも一緒である。

 宿舎周辺も緑地化されており、新緑がきれいだった。

「随分と整備されたな」

 白や赤の花を付けたツツジ類が綺麗である。

 周囲は立ち入り禁止のロープが張られており、外部から個人的な接触ができないよう配慮されているようだ。

「歩ける範囲が狭いな」

「はい、お父さま」

 そしてロープの向こう側にはぽつぽつと人影が見える。

(おい、あれ『魔法工学師マギクラフト・マイスター』じゃないか?)

(一緒にいるのは自動人形(オートマタ)とゴーレムだ。間違いない)

 などという声が、仁の耳にも聞こえてくる。

「落ち着かないな……戻ろう」

 周りから見られていると思うとやはり落ち着かない仁であった。

 その、戻る途中。

(……フレディの奴、出てこなかったな)

 という声が聞こえてきたのである。

 その口調が気になったので、仁は礼子に、

(礼子、今の声の主が何を言っているのか、老君に探らせてくれ)

 と指示を出した。

「はい、お父さま」

 先日完成した『魔導盗聴器(マギマイク)』を使えば簡単である。


*   *   *


 仁と礼子が部屋に戻ると、仁の『仲間の腕輪』へ、老君から連絡が入った。

御主人様(マイロード)、彼らの会話内容がわかりました。これより報告致します』

「うん、頼む」

 老君が再生した会話とは……。


「フレディの奴、本当に魔法工学師マギクラフト・マイスターの弟子になったのかな?」

「さあ、わからないな。家柄だけは、先代の血を引くらしいが、あの無能がなんで弟子になれたのか不思議だぜ」

「ここで待っていても出てこないか……」

「この後、ゴーレムのデモンストレーションがあるから、そっちを見に行こうぜ」

「先生もそっちに行ったみたいだしな」

「しょうがない、そっちへ行くか」


 ……というものだったという。

「フレディの昔の同僚か。……そういう性格というか……人格は技術とは別なんだなあ」

 いつの世にも、人をあなどったり馬鹿にしたりする人間はいるものだ、と仁は少し残念に思ったのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

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