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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
54 啓蒙篇
2003/4321

54-02 合格

 マリッカが『アヴァロン』側との日程確認をしてくれて、出向く日時は5月25日と決まった。

 今日は20日、まだ5日間も余裕があるので、仁はフレディたちに、

「『アヴァロン』でデモを行うかもしれないから、『魔法骨格式』のゴーレムを作っておいてくれ」

 と指示を出す。

「わかりました!」

「はい!」

「はーい!!」

 フレディ、グリーナ、ルビーナたちも若干暇を持て余し気味だったので、仁からのこの指示を喜んで受けた。


「この前作った『テンポ』より性能がいいほうがいいのかな?」

「どうだろう? 王家のゴーレムより性能がよくなるとまずいかな?」

「普通に考えて、あとから作った方が性能がよくなるのはおかしくないんじゃない?」

「うーん、それもそうね」

「でしょ?」

「じゃあ、思いっきり頑張ろう!」

「賛成!!」

 などというやり取りがあって、3人は大乗り気でゴーレムを作り始めたのであった。

 仁も微笑みながらその様子を眺めている。

「素材はあの時よりいいもの使えるわね!」

「……」

「リミッターは掛ける必要ないし」

「……」

「外装にもいい素材使えるからもっとパワーアップできそうだ」

「……」


 彼らの会話を聞いていた仁は、ふっと脱力して頭を一振りし、『家』へと引き返した。

「お父さま、どうかなさいましたか?」

「……いや、別に」

「ジン様、何か疲れてません?」

 マリッカも心配そうだ。

「……いや、ただあの3人が自重しないでやらかしてるのを見て、もしかすると俺もあんな感じなのかと思い至ったらな……」

「あ、今頃気が付いたんですか」

「!?」

 マリッカの言葉に、少なからず仁は驚いた。

「ジン様はずっと昔からそんな感じ……いえ、もっと型破りですよ。もちろんいい意味で」

「……いい意味でよかったよ」

 仁は苦笑いを浮かべた。

「そうか、俺って物作りしている時ってあんな感じなのか」

「お父さまの方がもっとスマートですけど」

 礼子までが口を添える。

「はは、そうか。まあ、だからといって今更変えられるモノでもないしな」

 多少客観的に自分を省みることができたのはいいことだ、と仁は前向きに考えた。

(俺を止めてくれる人も……いないしなあ)

 ふと懐かしく思い出すのは、愛妻エルザや親友たちのこと。

(……こりゃあ、本格的にヘールに隠居することを考えないと駄目かな?)

 とにかく、まずは『アヴァロン』での講義を済ませてからだ、と仁は少し強引に思考を切り替えた。

「説明用の資料を作っておくかな」

『お手伝い致します』

「わたくしも」

「ジン様、私も」

 老君、礼子、マリッカが手伝いを申し出てくれた。

 ということで、フレディたちはゴーレム製作、仁たちは資料製作に没頭したのである。

 ちなみに、最終的にどういう仕様にしたのかは聞いていない。


*   *   *


 瞬く間に2日が過ぎ、仁は資料を作り終えてしまった。

 マリッカはシオンに報告してくると言って一旦『ノルド連邦』に帰った。

「さて、フレディたちはどうなったかな」

 今回は、敢えて口出しせずに好きにやらせている仁であるが、さすがに気になってきた。

 そこでまず、直接見に行くのではなく、老君経由で確認だ。

『はい、御主人様(マイロード)。彼らは思ったより堅実なものを作っております』

「そうなのか」

 仁は少しほっとする。

『はい。もう8割くらいは出来上がっておりますから、御主人様(マイロード)が見に行かれても大丈夫かと』

「お、そうか。じゃあそうするかな」

 老君が保証してくれたので、仁はフレディたちが作業している工房へ足を運んだ。


 そこでは。

「……表面処理はどうする?」

「あたしはつや消しがいいと思うけど」

「でもルビーナ、それだと傷が目立つと思わない?」

「それは鏡面仕上げも同じだと思うが……」

 3人で外装について議論をしていた。


「あ、ジン様! いらっしゃい!!」

 真っ先に仁に気が付いたのはルビーナだった。

「やあ、やってるな」

 そう言って仁は制作中のゴーレムを眺めた。

 身長180センチ、体格は並、つまり汎用的な体形だ。

「今回のものは、男性型。戦闘用よりも汎用性を重視しました」

 代表として、フレディがコンセプトを説明する。

「材料はあえて一般的なものを使いました。ですが、工夫を凝らしましたので、パワーは同等のはずです」

「おお、そうか」

 彼らは彼らなりに考えている、と仁は嬉しく思った。

 一般的なものを使うと言うことは、量産にも向いているということだから。

 今回『アヴァロン』での講義は、産業用・工業用ゴーレムの発展の基礎となるものにしたいと仁は思っているのだ。


制御核(コントロールコア)はまだ未搭載です。どういう知識を載せるか、意見がまとまっていないので」

「ああ、そうなのか」

「外装は、鎧じみた外見をやめ、できるだけ人間に近いシルエットにしました」

「なるほど」

 関節部分に未熟さは残っているがいい出来だと仁は評した。

 これなら、服を着せることもできる外形だ。

「これだけできれば合格だな。3人とも、よくやった」

「えへへ、嬉しいな」

「ありがとうございます」

 ルビーナとグリーナも嬉しそうだ。

「ここまでやったんだ、時間はまだあるし、最後まで自分たちでやってごらん」

 仁はそう言って工房をあとにした。


(……うん、3人とも成長していたな。あれなら、『アヴァロン』へ連れて行っても安心だ)

 仁は上機嫌で『家』へと戻ったのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20180912 修正

(誤)彼らは彼らなりに考えらている、と仁は嬉しく思った。

(正)彼らは彼らなりに考えている、と仁は嬉しく思った。


 20181007 修正

(旧)いえ、もっと破天荒ですよ。もちろんいい意味で」

(新)いえ、もっと型破りですよ。もちろんいい意味で」

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