54-02 合格
マリッカが『アヴァロン』側との日程確認をしてくれて、出向く日時は5月25日と決まった。
今日は20日、まだ5日間も余裕があるので、仁はフレディたちに、
「『アヴァロン』でデモを行うかもしれないから、『魔法骨格式』のゴーレムを作っておいてくれ」
と指示を出す。
「わかりました!」
「はい!」
「はーい!!」
フレディ、グリーナ、ルビーナたちも若干暇を持て余し気味だったので、仁からのこの指示を喜んで受けた。
「この前作った『テンポ』より性能がいいほうがいいのかな?」
「どうだろう? 王家のゴーレムより性能がよくなるとまずいかな?」
「普通に考えて、あとから作った方が性能がよくなるのはおかしくないんじゃない?」
「うーん、それもそうね」
「でしょ?」
「じゃあ、思いっきり頑張ろう!」
「賛成!!」
などというやり取りがあって、3人は大乗り気でゴーレムを作り始めたのであった。
仁も微笑みながらその様子を眺めている。
「素材はあの時よりいいもの使えるわね!」
「……」
「リミッターは掛ける必要ないし」
「……」
「外装にもいい素材使えるからもっとパワーアップできそうだ」
「……」
彼らの会話を聞いていた仁は、ふっと脱力して頭を一振りし、『家』へと引き返した。
「お父さま、どうかなさいましたか?」
「……いや、別に」
「ジン様、何か疲れてません?」
マリッカも心配そうだ。
「……いや、ただあの3人が自重しないでやらかしてるのを見て、もしかすると俺もあんな感じなのかと思い至ったらな……」
「あ、今頃気が付いたんですか」
「!?」
マリッカの言葉に、少なからず仁は驚いた。
「ジン様はずっと昔からそんな感じ……いえ、もっと型破りですよ。もちろんいい意味で」
「……いい意味でよかったよ」
仁は苦笑いを浮かべた。
「そうか、俺って物作りしている時ってあんな感じなのか」
「お父さまの方がもっとスマートですけど」
礼子までが口を添える。
「はは、そうか。まあ、だからといって今更変えられるモノでもないしな」
多少客観的に自分を省みることができたのはいいことだ、と仁は前向きに考えた。
(俺を止めてくれる人も……いないしなあ)
ふと懐かしく思い出すのは、愛妻エルザや親友たちのこと。
(……こりゃあ、本格的にヘールに隠居することを考えないと駄目かな?)
とにかく、まずは『アヴァロン』での講義を済ませてからだ、と仁は少し強引に思考を切り替えた。
「説明用の資料を作っておくかな」
『お手伝い致します』
「わたくしも」
「ジン様、私も」
老君、礼子、マリッカが手伝いを申し出てくれた。
ということで、フレディたちはゴーレム製作、仁たちは資料製作に没頭したのである。
ちなみに、最終的にどういう仕様にしたのかは聞いていない。
* * *
瞬く間に2日が過ぎ、仁は資料を作り終えてしまった。
マリッカはシオンに報告してくると言って一旦『ノルド連邦』に帰った。
「さて、フレディたちはどうなったかな」
今回は、敢えて口出しせずに好きにやらせている仁であるが、さすがに気になってきた。
そこでまず、直接見に行くのではなく、老君経由で確認だ。
『はい、御主人様。彼らは思ったより堅実なものを作っております』
「そうなのか」
仁は少しほっとする。
『はい。もう8割くらいは出来上がっておりますから、御主人様が見に行かれても大丈夫かと』
「お、そうか。じゃあそうするかな」
老君が保証してくれたので、仁はフレディたちが作業している工房へ足を運んだ。
そこでは。
「……表面処理はどうする?」
「あたしはつや消しがいいと思うけど」
「でもルビーナ、それだと傷が目立つと思わない?」
「それは鏡面仕上げも同じだと思うが……」
3人で外装について議論をしていた。
「あ、ジン様! いらっしゃい!!」
真っ先に仁に気が付いたのはルビーナだった。
「やあ、やってるな」
そう言って仁は制作中のゴーレムを眺めた。
身長180センチ、体格は並、つまり汎用的な体形だ。
「今回のものは、男性型。戦闘用よりも汎用性を重視しました」
代表として、フレディがコンセプトを説明する。
「材料はあえて一般的なものを使いました。ですが、工夫を凝らしましたので、パワーは同等のはずです」
「おお、そうか」
彼らは彼らなりに考えている、と仁は嬉しく思った。
一般的なものを使うと言うことは、量産にも向いているということだから。
今回『アヴァロン』での講義は、産業用・工業用ゴーレムの発展の基礎となるものにしたいと仁は思っているのだ。
「制御核はまだ未搭載です。どういう知識を載せるか、意見がまとまっていないので」
「ああ、そうなのか」
「外装は、鎧じみた外見をやめ、できるだけ人間に近いシルエットにしました」
「なるほど」
関節部分に未熟さは残っているがいい出来だと仁は評した。
これなら、服を着せることもできる外形だ。
「これだけできれば合格だな。3人とも、よくやった」
「えへへ、嬉しいな」
「ありがとうございます」
ルビーナとグリーナも嬉しそうだ。
「ここまでやったんだ、時間はまだあるし、最後まで自分たちでやってごらん」
仁はそう言って工房をあとにした。
(……うん、3人とも成長していたな。あれなら、『アヴァロン』へ連れて行っても安心だ)
仁は上機嫌で『家』へと戻ったのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20180912 修正
(誤)彼らは彼らなりに考えらている、と仁は嬉しく思った。
(正)彼らは彼らなりに考えている、と仁は嬉しく思った。
20181007 修正
(旧)いえ、もっと破天荒ですよ。もちろんいい意味で」
(新)いえ、もっと型破りですよ。もちろんいい意味で」




