51-39 ローゼ
侍女ゴーレムは淡い銅色……『ピンクゴールド色』に仕上げられ、『ローゼ』と名付けられた。
「わあ、きれい」
復活したルージュがため息を漏らす。ネージュもうっとりとしている。
「いい色」
『ローゼ』。ルージュの赤とネージュの雪白、その中間で『薔薇色 (ピンク色)』の意味だ。命名はルビーナ。
「すてきな仕上がりになったわね」
「さすがジンしゃまです」
時刻は午後4時半、日は西に傾いている。
「今日はこのくらいにするか。少し汗かいたし」
「あ、私たちはおうちのお風呂に入ってみたい!」
「同感」
ルージュとネージュは自分たちの家の『出来たて』の風呂に入ってみたいと言うので、仁は『お風呂セット』……手桶、タオル、セッケン、シャンプーを3人分、2人に手渡す。もちろん『長老』700672号の分もだ。
「これ用意してなかったもんな」
今頃気が付いている仁である。
「ルビちゃんも行かない?」
ルージュに誘われたルビーナは仁とアマンダをちらりと見る。
「ああいいよ、行っておいで」
「ご迷惑かけないようにね」
「はい!」
ということで、ルビーナはネージュとルージュと共に『長老』700672号の家へ。
仁も、出来上がった『ローゼ』を渡すため同行する。主人を『長老』700672号にするためまだ起動していないので、礼子に運んでもらった。
「おおジン殿、ルビーナちゃん、ようこそ。ネージュ、ルージュ、お帰り」
出迎えた700672号に、仁は早速『ローゼ』を渡した。
「これからお客を迎えることもあるでしょうし、その際に食事の世話をする者がいた方がいいと思いまして」
「おお、これは有り難い」
「風呂の掃除などもみんな任せられますから」
そして仁は『ローゼ』を起動し、命令権を700672号、ネージュ、ルージュの順に設定した。
「よろしくお願い致します、旦那様、お嬢様」
『長老』700672号を『旦那様』、ルージュとネージュは『お嬢様』と呼ぶよう設定した。
「それじゃあルビーナ、俺は先に帰るからゆっくりしておいで」
「はーい!」
ルビーナを『長老』700672号宅へ残し、仁と礼子は自分たちの『家』へ帰った。
「お帰りなさい、ジン様」
「ルビーナはいい子にしてますか?」
マリッカとアマンダが仁を出迎えた。
「ただいま。……大丈夫、ルビーナはやればできる子だよ」
そう返答した仁は、自分たちも風呂に入ろうと言った。
仁と礼子は家庭風呂、マリッカとアマンダは来客用の大浴場でのんびり寛ぐ。
そして風呂から上がった仁は、
「そうか、扇風機か送風機もあった方がいいな」
と、早速足りないものに気が付くのだった。
* * *
夕食までの30分で風属性魔法『風』を使った扇風機……ではなく『送』風機を、仁は3台作った。
1台は家族風呂、1台は大浴場、そしてもう1台は『長老』700672号に贈るのだ。
「ちょっと行ってくる」
と一言残し、仁と礼子は『長老』700672号宅へ転移し、ルビーナと一緒に1分後に戻ってきた。
「ああ、いい仕事をした」
満足した笑みを浮かべ、仁は食卓につく。
今夜の献立はご飯、赤味噌仕立てのシジミの味噌汁、豚カツ、野菜サラダ、甘い玉子焼き。
ネージュとルージュがいないので、ルビーナはちょっとだけ寂しそうだった。
「お茶、美味しい」
焙じ立てのほうじ茶は香りがいいので、仁の好物であるが、ルビーナも気に入ったようだ。
「本当に、美味しいですね……やっぱり焙じたては違いますね」
アマンダもほうじ茶が好きなようだ。
「自分でもやるんですが、少し焙じ方が足りなかったり、逆に焦げ付いたりするんですよね」
マリッカも、自分でやると成功率は5割くらいなのだそうだ。
「工学魔法みたいにうまく行きません」
「こればっかりは練習……というか、自動人形にやってもらえば品質は安定するぞ」
「そ、そうなんですけど、やっぱり自分の手でやってみたいじゃないですか」
マリッカは、家事全般はできるだけ自分の手でしたい派だと言って笑ったのだった。
そんなマリッカに、仁はアドバイスを行う。
「それなら、焙じる時の火力を一定にすることと、同じ焙じ器を使うこと、それに時間をきっちり計ること、これを行えば失敗も少なくなると思うぞ」
料理に限ったことではないが、目分量や勘で料理や薬の調合をする者がいることは事実。
確かに、一流(もしくは超一流)の板前は、塩だけで味付けする際、指でつまんだだけで塩の分量を量れるらしいが、普通は計量スプーンを使った方が無難だ。
「あ、それはいいですね! やってみます」
この提案にはマリッカも同意した。そもそも仁からの提案なので断るという選択肢は存在しないのだが。
ルビーナとアマンダは、何か思うところがあったのか、マリッカへの仁のアドバイスを神妙な顔で聞いていたのである。
こうして食後のお茶の時間はのんびり過ぎていった。
* * *
「さーて、明日になるけど、本当に宇宙船でいいのかな?」
仁がそんなことを言いだした。
アイデアがあれこれ飛んでしまい、最善が何かわからなくなりかけていた時の結論はピント外れのものであることが多い、ということを仁は自覚していたようで、マリッカとルビーナにそのことを告げた。
「……そういうものなのかしら?」
アイデアが豊富で思考が柔軟なルビーナは首を傾げ、
「……わかる気がします」
言い方は悪いが『老練な技術者』であるマリッカは共感した。
「使い途はヘール上での移動だろう? 宇宙へ出る必要はないような気がするし、ネージュとルージュは有視界飛行、それも下が見えている方が喜ぶような気がするんだが」
「ジン様の言うこと、確かにわかる」
頭の冷えたルビーナも、先程決めた宇宙船のスペックが突き抜けていることに気が付いたようだ。
「使う側のことを忘れて盛り上がってたのよね」
「そうなんだ」
「ジン様もモノ作りになると冷静さがなくなりますしね」
「……まったくだ」
マリッカに言われて仁も面目なさそうな顔をした。
「馴染みのありそうな円盤機、から発想が飛んだんだよな」
仕切り直す仁。
「『コンロン3』か『ハリケーン』タイプがいいかもな」
「そうですね。それがいいんじゃないでしょうか」
マリッカはその案に賛成なようだ。
「よし、『ハリケーン』の小型版にしよう」
駄目だと判断したらすぐ切り替えるのが仁である。
「明日はそれを作るぞ」
「わかったわ、ジン様」
そういうわけで、ようやく構想がまとまったのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20180626 修正
(誤)「おおマリッカ様、ジン殿、ルビーナちゃん、ようこそ。
(正)「おおジン殿、ルビーナちゃん、ようこそ。
マリッカは行ってません……orz
(旧)主人を『長老』700672号にするため、まだ起動していないため、礼子に運んでもらった。
(新)主人を『長老』700672号にするためまだ起動していないので、礼子に運んでもらった。
(旧)ルージュの赤とネージュの白、その中間で『桃色』の意味だ。
(新)ルージュの赤とネージュの雪白、その中間で『薔薇色 (ピンク色)』の意味だ。
(誤)ルビーナを『長老』700672号宅は残し、仁と礼子は自分たちの『家』へ帰った。
(正)ルビーナを『長老』700672号宅へ残し、仁と礼子は自分たちの『家』へ帰った。
(誤)仁と礼子は『長老』700672号へ転移し、ルビーナと一緒に1分後に戻ってきた。
(正)仁と礼子は『長老』700672号宅へ転移し、ルビーナと一緒に1分後に戻ってきた。




