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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
51 ヘール開発篇
1921/4420

51-35 暴走ゴーレム

 ルビーナたちが改造し、起動した『巨大ゴーレム』は、ルビーナの命令を聞かず、拳を振り上げたかと思うと何もない地面を殴りつけた。

「きゃあっ!」

 飛び散る土塊(つちくれ)。

 そして重心を崩して転倒するゴーレム。

「な、何!?」

「ど、どうしたの?」

 一瞬送れて、舞い上がった土塊がテントを襲った。

「ルビーナ! どうしたんだい!?」

 びっくりしたアマンダが声を掛けた。

「わ、わかんない。急にゴーレムが暴走して……きゃあ!」

 転倒していたゴーレムが再び立ち上がり、そばにあったテントを蹴り飛ばしたのだ。

「何やってるのよ! 止まりなさい! 『停止せよ(ビホールト)』!!」

 だが、暴走した巨大ゴーレムは止まらなかった。

「な、なんで!? なんで止まらないの?」

「ルビーナ! お前、何やらかしたんだい!?」

「わ、わかんないわ! チェックでは正常だったのに、起動したら……きゃっ!」

「危ない!」

 巨大ゴーレムの足が、ルビーナのいた場所に振り下ろされた。

 それより一瞬早く、月乃がルビーナを抱えて退避。

「あ、ありがとう……」

「いえ。……それよりも、危険ですからもう少し離れてください。完全に暴走しております」

「なんで? だってあたし……」

 そんなルビーナに月乃は落ち着いた声で諭すように言う。

「ルビーナ様、慌てず落ち着いて、ゴーレムの魔力の流れを観察してみてください」

「え? う、うん……『追跡(トレース)』……ええっ!? 何これ??」

 ルビーナが『追跡(トレース)』をしたところ、巨大ゴーレム内部の魔力の流れは滅茶苦茶であった。

「わけわかんない……」

 頭を抱えそうになったルビーナの耳に、さらなるアドバイスの声が届く。

「ルビーナ、『周波数(スペクトラム)分析(アナライズ)』を行ってみろ」

「は、はい! 『周波数(スペクトラム)分析(アナライズ)』! ……えええー!?」


 『周波数(スペクトラム)分析(アナライズ)』は、仁が開発した工学魔法で、魔力波の周波数を知ることができる。

 これにより、各属性の魔結晶(マギクリスタル)を分別したり、当時『魔族』と呼ばれていた『北方民族』への『知識転写(トランスインフォ)』を行うための下準備をしたりできるのだ。


 それはそれとして、ルビーナが驚いたのも無理はない。

 暴走した大型ゴーレム内の魔力波形は、特定の周波帯域……かなり高い部分が突出していたのである。

「なにこれ……って、ジン様!?」

「おう」

 ルビーナにアドバイスしたのは仁であった。月乃からの緊急連絡を受け、急いで戻ってきたのである。

「理由を聞くのはあとだ。……礼子、停めろ!」

「はい、お父さま」

 仁の指示で礼子が飛び出した。

 今、簡易テントに向かっていった巨大ゴーレムに真横から跳び蹴り。

 『力場発生器《フォースジェネレーター》』を使用したそれは。10倍以上の身長差があるにも関わらず巨大ゴーレムを20メートル以上も吹き飛ばした。

 だが、巨大ゴーレムはそのくらいでは止まらない。

 起き上がって小走りに向かってくる。

「なかなか頑丈ですね」

 礼子は再度体当たり。

 今度は先程の倍以上のパワーを出したのか、巨大ゴーレムは50メートルほども吹き飛んだ。

 胸部外装が凹んだが、まだ立ち上がってくる。

 踏みつけようとするその足を掴み、礼子は巨大ゴーレムをさらに遠くへ投げ飛ばした。

 それでもまだ、巨大ゴーレムは壊れない。

「しぶといですね! ……お父さまに注意されていなければ簡単に壊せるのに」

 礼子はぼやきながらも、再度巨大ゴーレムを蹴り飛ばした。


 その様子を見ていた仁は、ある意味感心する。

「うーん、さすがルビーナと言えばいいのか、しぶといと切り捨てればいいのか」

 仁の独り言を聞いて、ルビーナは申し訳なさに身をすくめた。

「せっかくルビーナがあそこまで改造したのを壊すのは忍びなかったが……あ、そうか」

 仁は何かを思いついたらしく、ルビーナに向き直る。

「ルビーナ、あのゴーレムには『封鎖筐体(シールドケース)』のような、耐魔法装備はしているか?」

「え、あ、はい、していません」

「そうか!」

 それを聞いた仁は、礼子に新たな指示を出した。

「礼子! 『魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)』を使え!」


 『魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)』。それは、対象物が持つ自由魔力素(エーテル)を除去、エーテルタンクに蓄える魔導兵器である。

「わかりました! 『魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)』起動!」

 シールドされていない『制御核(コントロールコア)』、『魔力反応炉(マギリアクター)』を持つ巨大ゴーレムは、この兵器の前には無力だった。

 エネルギー切れでこんどこそ完全停止する。

 すぐに礼子は駆け寄り、その胸部外装を力任せにめくりあげる。剥き出しになる内部魔導装置(マギデバイス)。

 礼子はそこから『制御核(コントロールコア)』だけを抜き取ったのである。

 これにより、暴走した巨大ゴーレムは完全に無力化されたわけだ。


*   *   *


「……これは……」

 仁は、礼子が取り外してきた『制御核(コントロールコア)』を見て驚いた。

「なあルビーナ、この『制御核(コントロールコア)』はどうしたんだ? 確かに、俺は改造をしてみないかとは言ったが、『制御核(コントロールコア)』は用意してなかったよな?」

「うう……ごめんなさい」

 ルビーナは涙目だ。

 それを見た仁はぽんぽん、とルビーナの頭を叩いた。

「怒っているんじゃないから。聞いているんだ。この『マライト』をどこから手に入れた?」

「え? 『マライト』っていうの?」


 『マライト』。

 それはピンク色の外見を持つ魔結晶(マギクリスタル)で、一見すると光と火属性を持つように見える。だが、その実はとんでもない特性を秘めているのだ。

 魔導的な特性としては概ね良好なのだが、特定の魔力波に過剰反応するという性質がある。より正確に言うと『特定の魔力』を過剰増幅してしまうのだ。

 この過剰反応する周波帯は千差万別だが、比較的高い周波数がこれに該当する。

 そして、高い周波帯ということは、魔法工作士(マギクラフトマン)の命令を曲解する可能性が高いということ。

 このため、これを制御核(コントロールコア)に使うと暴走しやすいという弊害が出るのだ。

 かつて『黄金の破壊姫』と呼ばれたエレナは、この『マライト』で作られた制御核(コントロールコア)を持っていたため暴走し、他の自動人形(オートマタ)を破壊する衝動に駆られていた。

 また、700672号と同様に『始祖(オリジン)』によって作られた、『ロクレ』と呼ばれたサーバント『600012号』も、その特性を知らずに己のバックアップとなる自動人形(オートマタ)の制御核(コントロールコア)をこの『マライト』で作ってしまい、暴走させてしまっていた。

 マライト『Malite』の語源は、Mal=不良、ite=鉱物などの接尾語、による。つまり、よくない魔結晶(マギクリスタル)、という意味で、ロクレこと600012号が命名したものだ。

(『ロクレ』が命名したというから、てっきりアルス特産だと思ったのに、ヘールにもあったのか……)

 心の中で仁は、この新たな発見に驚いていた。


「……ごめんなさい。それを見つけてきたのは私」

 ネージュがおずおずと名乗り出た。

「ネージュが見つけてきたのか。いったいどこから?」

「……巨大ゴーレム……じゃない、『魔導操り人形(マギパペット)』が見つかった穴の中。隅の方に、保管庫があった。封印されていたみたいだけど、もう何千年も前に封印は駄目になっていたみたい」

「そうだったのか……」

 封印してあったということは、『始祖(オリジン)』もこの『マライト』……『始祖(オリジン)』はなんと呼んだのか情報がないのでこの名前で呼ぶことにする……が取り扱い要注意であることを知っていたということなのだろう。

「これ1個だけか?」

「ううん。あと5個、ある」

「とりあえずそれはこっちで管理させてくれ」

「わかった」

 こうして、巨大ゴーレム暴走事件は一応の決着を見たのであった。


「ルビーナ! お前はもう、考えなしなことをして!」

「ごめんなさーい、おばあちゃん!」

 その後、あらためて祖母アマンダに叱られたルビーナであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20180623 修正

(旧)・・・確かに、俺は改造をしてみないかとは言ったが、動くようにしろとは言わなかったよな?」

(新)・・・確かに、俺は改造をしてみないかとは言ったが、『制御核(コントロールコア)』は用意してなかったよな?」

(旧)「怒っているんじゃない。いや、少しは怒っているんだが……その前に聞いているんだ。この『マライト』をどこから手に入れた?」

(新)「怒っているんじゃないから。聞いているんだ。この『マライト』をどこから手に入れた?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔結晶を渡していないのを覚えているのなら、仁もなぜゴーレムが出来上がってるのか、その時点で不思議に思わなかったのかな? 中身が空っぽって思ってたのか? 1体任せておいて、魔結晶を渡していなか…
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