51-15 仁の家、候補地選定
700672号……『長老』の住居はその日のうちにあらかた完成した。
残るは内装。こちらは、職人10体に手伝わせ、700672号主体で進める予定になっている。
「それじゃあ、明日は俺の住居を建てる場所を選定するか……」
仁は、建てたい家の構想は決まっている。
木造(もしくは疑似木造)平屋建て(一部二階建てでもよし)。庭は広く取る。
工房、倉庫、格納庫、転移門などの設備は全て地下。よって地下には広い空間を作る。
これだけだ。
ただ、おそらく地下には相当広い空間を確保することになるから、丈夫な岩盤が不可欠である。
その上に土が積もっているならOK。
「そんな場所あるかな?」
「そうですね……」
礼子も考え込んでいる。
一緒に見て回ったヘールの地理、地質の情報を検索し、条件に合致しそうな地点をピックアップ。
「該当するのは5ヵ所ですね」
「お、そうか。じゃあ、早速見て回ろうか」
と言ったところで、
「ああ……大気圏内移動用の航空機がないな」
『アドリアナ』では少々大げさであるし、うかつに着陸できない。『コンロン3』は、『家』が完成するまでの間、700672号たちの仮住まいとして貸し出している。
「『ペガサス』系があるといいですね」
「そうだな。取りあえず『ペガサス2』を寄越してもらおう」
『力場発生器』を内蔵し、VTOL(垂直離着陸機)でもあるため、『ペガサス2』なら最適だ。
『転移門の橋』を使えば短時間でアルスからヘールへと送ることができる。
礼子経由で老君に連絡を入れると、5分後に『ペガサス2』が大型転移門から現れた。操縦士はホープが務めている。
「お、これならいいな」
仁と礼子は早速乗り込んだ。
「ホープ、ここヘールの地理はわかっているか?」
仁が尋ねるとホープは肯定した。
「はいジン様。先程老君より『知識転写』で必要な情報を受け取ってきました」
「それならよし。まずは中央盆地だ」
「はい」
ペガサス2はふわりと浮き上がった。そしてマッハ3で目的地へと飛んでいく。
30分ほどで目的地上空だ。
「ここの中央は、鉱石の採掘で穴だらけですので駄目です。周辺を囲む山、その最も南に高い山がありますが、そこが第1候補です」
ホープは礼子の指示した山へとペガサス2を飛ばした。
「ああ、あの山か……うーん」
仁の目の前に、標高5000メートルを超える山が現れた。
「この山だけは、金属資源が全くと言っていいほど採れなかったので、原形を留めています」
「なるほど」
そういう点では悪くないのだが、いかんせん標高が高すぎた。
「ちょっと緯度も高いな」
その山は南半球にあり、今は3月なので秋の初めといった陽気だが、標高が高く、緯度も南緯40度と高いため、気温は氷点下だ。
「では、次へまいりましょう。ホープ、緯度はそのままに、東へ飛んでください」
「わかりました」
ホープはペガサス2を東へと向けた。
30分足らずで目的地上空に到達。
「あの島です」
「島か……」
それは、かなり扁平な形をした島であった。
「この島も、金属資源が皆無です。その代わりに地上部では水晶・石英が豊富に採れましたので削られてあのような形になったのではと推測されています」
「なるほど。……地下までは採掘しなかったんだ?」
「はい。石英や水晶は、鉱物としては割合ありふれていますので、そこまでして採掘する必要がなかったのでしょう」
「そういうことか。……なら、あの島の地下部分は石英や水晶が多いわけだな?」
「はい、そうなります」
それなら、地下をくりぬくのも問題ない、と仁は考えた。まずまずの候補地だ。
「よし、ここは家を建てる候補にしておこう。次はどこだ?」
「ホープ、北東へ飛んでください」
礼子は仁の質問に対し、ホープに指示を出した。
再び30分弱で目的地上空。今度は北半球、大陸の西端にある島である。
「ここか……北緯と南緯の違いはあるが、さっきの島と緯度は同じくらいだな」
北回帰線から30度近く北に離れているので、四季ははっきりしているだろう。
「大型転移門を設置した場所にも近いわけか」
近いといっても経度にして90度くらい離れているが。
「あと2つを見てみよう」
この島は保留としておく仁。
残る2ヵ所のうち1つは700672号に勧めた、大陸北にある内海にある島だ。
「うーん、ここは寒いだろうからな」
仁は寒いよりは暑い方がましだと思っている。程度問題ではあるが。
「最後の1つは大型転移門を設置した場所です」
礼子が言う。
「なるほど、確かにな」
仁が今現在仮拠点としている場所である。そこをそのまま本拠地に、ということだ。
「うーん、迷うな」
仁としては、少しだけ周囲と隔絶した土地が好ましいと思っているのだ。
そういう意味で島は悪くない。海という天然の境界が存在するのだから。
「あとは、人工の島か」
仁は『アヴァロン』を思い出す。
「あそこまで人工物然としていなくていいけどな」
仮拠点へと戻るペガサス2の中で、仁はじっくりと考えた。
そして現地時間で午後4時頃、ペガサス2は仮拠点に帰還。そこには『アドリアナ』も鎮座している。
「やっぱりここかな」
いろいろ見て回ったが、最初に選んだ場所が一番よかったという、教訓でも含んでいそうな結果となった。
「このあたりで地盤が強固な場所を選定しよう」
「わかりました」
付近の岩盤は玄武岩質の場所が多く、緻密な上かなり強固である。これに『強靱化』を掛ければ十分過ぎる強度となるだろう。
「問題なさそうだな」
一帯はほぼ同じ岩質だった。残るは場所だ。
仁は、周りから少し高くなっている場所を探した。
「うーん、こことあそこ……それにあっちか」
そして3ヵ所まで候補地を絞り込んだ。
いずれも、仮拠点とした場所から100キロほど離れている。
「もう少しそれぞれを詳しく調べてみるか……」
仁は自分でも調べてみようと、ペガサス2を降り、礼子を連れて一番手近な候補地へ向かったのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
お知らせ:6月2日土曜日午前10時、異世界シルクロード(Silk Lord)も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただければ幸いです。
20180602 修正
(旧)700672号の住居はその日のうちにあらかた完成した。
(新)700672号……『長老』の住居はその日のうちにあらかた完成した。
仁が700672号を呼ぶ時は『長老』、地の文では700672号にしようかと思います




