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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
49 仁東奔西走篇(3464年)
1853/4280

49-42 あちらとこちら、その後

 翌日。

 火事にあった村への補償は、モーリッツがきっちりとこなしていた。

「さすが、兄さま」

「うん、義兄さんの仕事は几帳面だな」

 その仕事ぶりを見た仁とエルザは、安心して帰ることができた。


 その戻る道中、

「なあエルザ、代官をさせるわけにはいかないが、秘書ゴーレムならいいんじゃないかな?」

「あ、確かに」

 モーリッツは真面目すぎるので、スケジュールや健康管理をしてくれるようなゴーレムを作って贈ればいい、と仁とエルザの意見は一致したのだった。


*   *   *


 蓬莱島に戻って、仁はさっそく作製に入る。

「おとうさん、たのしそう」

「そうね、楽しそうね」

「あたしもやってみたいー」

「もう少し大きくなったらね」

 ユウとミオを連れて、エルザは見学である。

 外見的には中性的な体形に仕上げていく仁。

 ゴーレムとはいえ、服を着せるつもりもある 。余計な突起はなし。人間と同じシルエットを心がける。

 パワーは人間の3倍程度、精密作業向き。

 軽銀を多用し、軽く作る。予想完成重量は70キロくらい。

 そして、今回はユウとミオに『見せる』つもりで作っている仁であった。

 

 ……ということで、およそ1時間でゴーレムは完成した。

「おー」

「おとうさん、すごい」

 ユウとミオがそのモミジのような手を叩いている。

(この子たちは俺の後を継いでくれるのかな……)

 などと頭の隅で考えつつ、仁は最後の仕上げに取り掛かる。

「……色はどうしようかな」

 軽銀(アルス世界のチタン)なので、酸化膜の調整で色を変えられるのだ。

「肌色に近い色に、したら?」

 エルザがアドバイスを口にした。

「そうだな。服を着せることも考えたらその方がいいな」

 青や緑色の顔をしたゴーレムが服を着ているというのは、慣れない人には少々不気味だろう、ということで、仁は落ち着いた明るい茶色にしてみた。明るいところなら肌色に近く見えている。

「これならいいな」

「ん」

「わあ」

 名前はエルザの命名で『セシル』とした。

 あとは贈るタイミングだけである。


*   *   *


「ところで、マルシアさんの方も、だいたい完成したみたい」

「お、そうか」

 カイナ村で船を造ってくれているマルシア。

 『森羅』のシオンから預かった『乖離かいり』のティベリオの様子も気になる。

 ユウとミオの麻疹、『アヴァロン』憲章の制定、フリッツとグロリアの結婚式……と、いろいろと用事をこなしてきたが、船の件を投げっぱなしと言うのも気が引ける。

 ということで、仁はその日の夜、カイナ村へ行くことにしたのである。


*   *   *


「あっジン、いいところに!」

 二堂城の転移門(ワープゲート)を使って移動した仁が、まず工房を覗いてみると、マルシアが驚いた顔で出迎えた。

「ちょうど調整が終わったところだよ。これで問題なければ完成さ!」

「おお、そりゃあいいタイミングだったな」

 時差の関係でカイナ村はもう夕方。テストは明日ということになる。

 仁は夕食を食べながら、マルシアから苦労話を聞くのであった。

「ティベリオは、もう慣れたかい?」

「ええ、もう毎日が面白くて。マルシアさんの仕事ぶりは勉強になります」

「彼は熱心ですよ。少しですが工学魔法も使えますので、役に立ってくれてます」

「へえ……」

 それならば、仁が本格的に教えたら、マルシア工房の新戦力になるかもしれない、と思いを巡らせる仁であった。


 夕食後、仁はできあがった船を見せてもらうことにした。マルシアとティベリオが一緒に工房へ向かう。

 ロドリゴは少し疲れたということで部屋へ引き上げた。


「まずは3艇だね。1艇はバーバラさんたちからの注文で、1艇はジンからの。もう1艇は実験用さ」

「実験用?」

「うん。純粋にあたしの興味本位で作ったんだ。今後のこともあるし、急流用の船の標準モデルということでね。売り物じゃないから、ティベリオにも随分と手伝ってもらったよ」

「ほう」

 仁としてはそれに一番興味を惹かれた。

「これか」

 それでまずは、その実験用を見せてもらうことにした。

 それは三胴船トリマランではなく、単胴船であった。材質は木製。

 ただし形状が細長く、フロートが左右に張り出している。

 仁はアウトリガーカヌーというものを連想した。

「これだと安定性はいいんだけど、荷物をあまり積めないんだよ。それと小回りが今ひとつかな」

 マルシアが代表で説明してくれる。

「ふんふん」

「でも、手漕ぎでもそれなりに速度は出るし、『さお』でも操れるんだ」

「なるほど」

 現代日本にも残る急流下りでは、船頭が棹を使うことも多い。

 漕ぎ手をゴーレムにすれば、力もあるし、反応速度も速い。第一ゴーレムは疲れないので、これはこれでありだろうと思う。

「川幅が広い川向きだとは思うけどね」

「うん、そうだろうな」

 マルシアの意見に仁も賛成である。エルメ川だと、川幅の狭い区間では少々扱いづらいのではと思えた。

「でも、これはいいな」

 同じエルメ川でも、セドロリア湖より下流なら使い勝手もよさそうだ、と仁は言った。

 そのあたりはセルロア王国との国境なので、運用に気をつける必要はありそうだが。

 あとはショウロ皇国のディバイド川上流〜中流域でも使えるかもしれない。

 仁がそう言うと、マルシアとティベリオは嬉しそうに頷いた。

「そうか! そっちにも売り込めたらいいな」

 儲け云々ではなく、自分たちの船が使ってもらえることに喜びを感じるマルシアなのであった。


 その後はバーバラたちの依頼した船と、仁が依頼した船である。

 前者は試作と同じく三胴船トリマラン。一回り大きくなり、全体のバランスもよさそうで、明日の試験航行が楽しみである。

 そして、仁が依頼した、村の子たちが楽しめる船はというと、ゴムボートに船外機をくっつけたような形をしていた。

 材質はゴムではなく『地底蜘蛛樹脂(GSP)』なので岩にぶつかっても衝撃を吸収してくれるし、裂けることもない。

 『水魔法推進器(アクアスラスター)』式の船外機も64軽銀製なので、そうそう壊れることはないだろうと仁は見た。

「なるほど、こうしたのか」

「後はジンに、船外機を操るゴーレムか自動人形(オートマタ)を作ってもらいたいと思ってる。自分で船外機を操ってもらってもいいけど、安全のため必ずその専用ゴーレムもしくは自動人形(オートマタ)と一緒に乗ること、にしてもらいたいね」

 何度も船から振り落とされてみたけれど、エルメ川の流れは危険な場所もあるから、とマルシアは言った。

「わかったよ。ありがとう」

 仁は大満足で頷いたのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20180415 修正

(誤)1艇はバーバラさんたちからの注文で、1艇は仁からの。もう1艇は実験用さ」

(正)1艇はバーバラさんたちからの注文で、1艇はジンからの。もう1艇は実験用さ」


 20180416 修正

(旧)ということで、仁はその日の午後、カイナ村へ行くことにしたのである。

(新)ということで、仁はその日の夜、カイナ村へ行くことにしたのである。

(旧)時差の関係でカイナ村はもう夕方。

(新)時差の関係でカイナ村は夕方。

 時差を間違えてました orz


 20200105 修正

(誤)ユウとミオをを連れて、エルザは見学である。

(正)ユウとミオを連れて、エルザは見学である。

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