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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
49 仁東奔西走篇(3464年)
1818/4279

49-07 晩餐会にて

 譲位の儀の後は、少し遅い昼食会、そして晩餐会へと雪崩れ込むことになる。

 場所は宮城(きゅうじょう)内大広間。

 仁とエルザ、そして礼子も出席している。

「こういうのは慣れないなあ」

「ん、わかる」

 大広間は各国の重鎮や王族、それに警護の騎士も加わっているので、ごった返している、という形容がぴったりだ。

 仁も有名人なので、知り合いが多い。

「やあ、ジン、奥方!」

 真っ先にやって来たのはエゲレア王国の第3王子、アーネスト。

「久しぶりだね」

「ええ、殿下もご健勝そうで」

 出会った時は13歳だった彼も、今は20歳となり、堂々たる貴公子となっていた。国元では外交官を務めており、いずれは外務相(大臣)に、という噂もあった。

「リースも来たがっていたんだけどね」

「ああ、おめでたなんですね?」

「うん、そうなんだ。3ヵ月くらいだから、無理はさせられなくて」

 王子の夫人であるリースヒェンは元クライン王国の第3王女で今年19歳。第一子を懐妊中だそうだ。

「おめでとうございます」

「ありがとう。それじゃあ、また」

 王子ともなると、1箇所で長話もできないようで、アーネストは別の有力者のところへと歩いていった。


「やあ、ジン、エルザ」

「先日はお世話になりましたわ」

 代わってやって来たのは仁の親友でエルザの従兄、ラインハルトだ。夫人であるベルチェも一緒である。

「ラインハルト、おめでとう」

「え?」

「聞いたぞ。子爵になるんだって?」

「いったいどこから……」

「それは秘密だ」

 新皇帝になるにあたり、旧体制から新体制に移行するということになっていて、ラインハルトは昇爵して子爵となることが決まっていた。

 そして新体制での地位は外務副大臣ということになるそうだ。

 ……という話を、昨日老君から聞いていた仁なのである。老君がどんなルートからその情報を得ているのか、聞きそびれている仁なのであった。

「領地はそのままか?」

「うん、そうなるな。加増されるかはまだわからないが……」

 いずれにしても領地は代官に運営させることになるだろう、とラインハルトは言った。


 ラインハルトの次にやって来たのはフリッツだった。『アヴァロン』の人間として、ということらしい。

「ジン殿、エルザ。聞いていると思うが、このたび結婚することになったので、その報告を、と思ってな」

「ん、おめでとう、兄さま」

「義兄さん、おめでとうございます」

 グロリアは一緒じゃないのか、と聞くと、『アヴァロン』では夫婦を一緒に派遣することはあっても、婚約者はそうしないとのことだった。

 関係が公になっていなければ、先日の大雪対策のように一緒に、ということは多いようなので、どういう基準なのか少し疑問に思う仁である。

(仲がいいというなら連繋もうまく行くだろうから可、でも恋人同士だといちゃついて任務遂行に差し障りがある……といったところかな?)

「近いうちに休暇を取って、父上と母上にも報告に行くつもりだ」

 その時はもちろんグロリアも連れていく、とフリッツは言った。

「ん、兄さま、私と、主人……とでお祝いを用意している。その時に渡すから、日程が決まったら、教えて」

「お、そうか。エルザ、ジン殿、すまないな」


「ジン君、エルザさん、お久しぶりね」

 フリッツの後にやって来たのはエリアス王国のフィレンツィアーノ侯爵であった。

 相変わらずの毅然とした佇まいはさすがだ、と仁は思った。

「ご無沙汰しております」

「ジン君には先年もお世話になったわ」

 マルシア工房における小型快速艇開発に協力したことを言っているようだ。

「あの時あなたに、我が国に仕官してもらえなかったことは、よかったのか悪かったのか」

 今の世界を、そして幸せそうな仁とエルザを見ればよかったのよね、と呟くように言って、侯爵は離れていった。


「……いろいろな人が来ているな」

「ん」

 そこに、今度はセルロア王国国王、セザール・ヴァロア・ド・セルロアがやってきた。

「やあ、ジン殿、奥方殿」

 セザールとは、王太子の時からの付き合いであるから、話し方も気さくなものになる。

「新たな皇帝陛下を戴いて、ショウロ皇国もますます発展するだろうな」

「ええ、そう望みますよ」

「私も負けてはいられないな」

「陛下の指揮の下、転移門(ワープゲート)が実用化されたではないですか。あれは画期的な技術革命でしたね」

 2年程前、セルロア王国では、遺跡で発見された転移門(ワープゲート)の解析を終え、同じものを複製し、移動に使えるまで昇華していたのである。

「ありがとう。ジン殿からそう言ってもらえるといささか鼻が高いよ。だが、まだまだ課題は多い」


 そう、今の転移門(ワープゲート)は、起動するまでに5分ほどかかり、その後転移可能なだけの魔力素(マナ)を蓄えるため、さらに30分ほどもかかってしまう。

 それでいて、送れるのは人間なら2名程度。資材なら150キロほどという制限があったのだ。

 とはいえ、魔力素(マナ)不足の際は転移できないだけであり、とんでもないところへ転移してしまうというような事故は起こりようがないのが救いである。


 そして、フランツ王国国王、ロターロ・ド・フランツとそのご母堂であるカトリーヌ・ド・ラファイエットもやってきた。

「お久しぶりね、エルザさん」

 と、カトリーヌ・ド・ラファイエット。

「あの時治療していただいてから、有り難いことにずっと身体の調子がいいわ」

「それは、ようございました」

 かつて、シオンの姉イスタリスがその従者ネトロスと共に捕らえられた際に、イスタリスの妹シオンに乞われ、救出のためフランツ王国を訪れた際に知り合ったのだ。

 ロターロ・ド・フランツ王は黙ったまま、そんな母をにこやかに見つめている。

 そして、給仕からワインの入ったグラスを2つ受け取ると、1つを仁に差し出した。

 仁がそれを受け取るとロターロ王は、

「ショウロ皇国の発展に、乾杯」

 と言ってグラスを掲げた。

「乾杯」

 仁も応じる。グラスが触れ合い、微かな音を立てた。

 余計な言葉を発することなく、祝っていったロターロ・ド・フランツ王であった。


 ……というように、各国の要人が仁のところにやってきているわけだが、この日の極めつけはやはり太上皇帝と新皇帝であろう。

「ジン君、エルザ、今日はありがとう」

「ニドー卿、そして夫人、これからもよろしく頼む」

 太上皇帝はいつもどおりの気さくな口調で。そして新皇帝はいつになく堅い口調であった。

「陛下、本日はまことにおめでとうございます」

「こちらこそ、よろしくおねがいいたします」

 仁とエルザはきっちりとした挨拶を行った。

「ジン君、いろいろと相談したいから、明日以降少し時間を取ってもらえるかしら?」

「はい、大丈夫です」


 元女皇帝は、何か相談事があるようだ。仁も、完成した自動人形(オートマタ)を献上するいい機会なのですぐ承知したのだった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日も『異世界シルクロード(Silk Lord)』を更新しております。

 お楽しみいただけましたら幸いです。


 20180311 修正

(旧)王子の夫人であるリースヒェンはクライン王国の第3王女で今年19歳。

(新)王子の夫人であるリースヒェンは元クライン王国の第3王女で今年19歳。

(旧)相変わらずの毅然とした出で立ちはさすがだ、と仁は思った。

(新)相変わらずの毅然とした佇まいはさすがだ、と仁は思った。


 20181021 修正

(誤)転移魔法陣

(正)転移門(ワープゲート)

 セルロア王国の地下で見つかったのは転移門(ワープゲート)でした。


 20190901 修正

(誤)ロターロ・ド・ラファイエット

(正)ロターロ・ド・フランツ

 3箇所修正しました。

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