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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
48 年末年始アヴァロン騒動篇(3899〜3900年)
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48-23 次の一手

 午後1時。

 関係者——仁、礼子、マキナ3世、レイ、エレナ、アリエッタ、ワッテス、エイラ、カチェア、グローマ、シオン、マリッカ、ロードトス、ヴィータ、リュドミラ、花子——らは、トマックス・バートマンの執務室に集まっていた。ホープとウラガンは、万が一に備えて空港の『ハリケーン』に詰めている。

 他に、イルミナをはじめとする幹部4人も同席していた。

 見つけた魔導具・魔導機(マギマシン)も3つ、持ち寄られている。

 4つではないのは、エレナが飛行場の片隅で見つけたのは魔法陣であったからだ。

 その分は模写という形でここにある。


「さて、どれから解析していくか」

 発言したのはマキナ3世である。

「どれからでもいいと思うが、俺としてはこれが気に掛かる」

 仁が指差したのは、最高管理官トマックス・バートマンの机から発見された魔導具だ。

「もっとも、あらためて解析するまでもなく、こいつは盗聴器のようなものだがな」

 仁の断定に、トマックス・バートマンと幹部たちは驚いた顔をするが、マキナ3世とエレナは当然というように、無言で小さく頷いた。

「だが詳細は、解析してみないとわからない。……『分析(アナライズ)』『精査(インスペクション)』『読み取り(デコンパイル)』」

 仁は手早く解析を行った。その手際に、トマックスと幹部連は目を丸くする。

「……なるほど……」

 詳細を読み取った仁は、皆にわかるように説明を始めた。

「こいつは間違いなく『盗聴装置』だ。だが、常時情報を送っているんじゃなく、録音したデータを圧縮して、一気に送信するようだ」

「は?」

 トマックスと幹部連、それにエイラたち3人は、仁の説明ではよく理解できなかったらしい。

「要は、録音した内容を箱詰めにして、短い時間で相手先に送っているのさ」

 マキナ3世が補足するが、それでもわかったのかどうか。

「つまり、録音は常時作動しているが、送信は時々、それもごく短時間で行われていた、ということですな?」

 トマックス・バートマンが、自分の理解した内容を口にする。それについて、仁もマキナもその認識でいい、と頷いた。

「いつから……いや、これは愚問ですね。グラハム・ダービーが仕掛けたのでしょうから、最低でも3年前から、ということになります」

「その間、ここで話した内容のほとんどは敵の知るところとなっているわけですな」

 渋面を作った幹部が、唸るような声で言った。

「そういうことだな……」


「……では、もう1つも解析してしまおう」

 仁は、自分たちが見つけた魔導機(マギマシン)の解析を始めた。

「これは……」

 青ざめる仁。

「な、何だったんですか!?」

 尋常ではない仁の顔色に、黙っていられなくなったカチェアが質問した。

「……遠隔操作系の爆弾だ」

「えっ!?」

 仁は手早くそれを分解してしまった。

「これは完全に俺のミスだ。あの『変調式指示器モジュレーションコマンダー』に反応して爆発していたらと思うとぞっとするよ。……済まない!」

 仁は頭を下げた。

 事態を軽く考えすぎていた、心のどこかに驕りがあった、と仁は深く反省した。

「もちろん、これは爆弾とはいっても、簡単に爆発するようなものじゃない。少なくとも3段階の指示を受けなければ作動しない。だが、そういったものが隠されている可能性を考慮せず、『変調式指示器モジュレーションコマンダー』を使ったことはまずかった」

「いやいやジン殿、それについての責任は私にあります」

 最高管理官トマックス・バートマンが仁を遮った。

「最終的にそれをお願いしたのは私なのですから、責任ということでしたら私が取らねばなりません」

「……ここにいる関係者の誰も、その可能性に思い至れなかった責任があると思うわよ、ジン?」

 シオンも、少し俯きながら仁にあまり気にするなと語りかけた。


 そして、もう1つの……マキナゴーレムが見つけたそれを解析することになった。

 これは、街灯に擬装されていたもので、その支柱部分は単なる空洞であったが、明かりを灯す部分に謎の魔導機(マギマシン)が仕込まれていたのである。

「……これはまた、とんでもないものが見つかったもんだ」

 顔をしかめた仁が、怒りを滲ませる声で報告した。

「こいつは、少しずつ洗脳していく魔導機(マギマシン)だ」

「ええっ!!」

「効果はほんの僅かで、合計で長い時間浴びなければどうということはなさそうだが、どう考えても悪意の塊だ」

 吐き捨てるように仁は言う。

「……で、こいつのおかげではっきりした。敵は『魔法連盟』で間違いなさそうだ」

 というのも、洗脳の目的が、『魔法連盟』への傾倒、というものだったからだ。

「それほど強力なものじゃないし、内容も極端なものじゃない。それでも見過ごすことはできない」

「そのとおりだ」

 トマックス・バートマンは毅然とした態度で断言した。


「最後に、この魔法陣だが、転移魔法陣で間違いない。ただ、この端の部分が壊れているので、まともに動作はしないだろう」

 エレナの模写は信用できる。ゆえに、魔法陣が欠損している様子も過たず写していたのである。

「この前のゴーレム襲撃は、飛行場でも行われる予定だったのだろう。だがたまたま一部が壊れたため、動作しなかったということか」

 運がよかった、とトマックスと幹部連は溜め息をついた。


*   *   *


「さて、これからどうするか、だが」

 少し遅い昼食を、サンドイッチとフルーツジュースで済ませた一同は、あらためて打ち合わせを行っていた。

 それに答えたのは仁。

「……少々誤算はあったが、目的の魔導具は見つかったので、当初の予定どおりにしよう」

「ジン殿、それは?」

 説明の時間が十分取れなかったので、トマックスと幹部連は今一つ理解し切れていなかった。

 今回行った一連の行動は、隠されている魔導具などを見つけ出すためと理解していたのだ。

「見つけるだけでなく、これを利用して敵の居場所を見つけ出すんだよ」

 仁は改めて説明を行っていく。

「この通信の魔導具は定期的に作動するようになっている。見たところ、運のいいことに今夜……明日? の午前0時に、0.1秒ほど動作して、情報を送ることになっているようだな」

 そこで、その情報を意味のないものに差し替えておくと共に、送信された情報の受け取り側を特定してしまおう、と仁は説明した。

「な、なるほど……」

「しかし、そうそううまく行くのですか? そんな0.1秒などという短い時間しか作動しないというものを相手に……」

 だが仁は自信たっぷりに頷いた。

「大丈夫。任せてほしい」

 仁としては、これを蓬莱島へ送り、『魔力探知機(マギレーダー)』によって相手を特定するつもりであった。


 爆弾は既に無力化してある。

 暗示の魔導具ももはや脅威ではない。

 魔法陣については消去するよう手配済み。

 こうして、『あぶり出し』はまずまずの成功に終わったのである。


*   *   *


 とりあえず、第3種非常事態は解除され、『アヴァロン』には日常が戻ってきた。


「……いやあ、ジンの規格外さをあらためて目にしたよ」

 エイラは、戻ってきたカチェアとグローマに、目にしたものを説明している。

「そう、か……」

 グローマは小さく溜め息をついた。

「再戦……などと言うのもおこがましかったな。いずれ『胸を借りる』ということになるだろう」

 己の実力をかんがみ、グローマはあらためてゴーレム研究に励む決心をしたのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20180215 修正

(誤)心のどこかに奢りがあった、と仁は深く反省した。

(正)心のどこかに驕りがあった、と仁は深く反省した。


(誤)というのも、洗脳の目的が、『魔法連盟』への傾倒、というも。のだったからだ。

(正)というのも、洗脳の目的が、『魔法連盟』への傾倒、というものだったからだ。

 orz

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[一言] >「これは完全に俺のミスだ。あの『変調式指示器モジュレーションコマンダー』に反応して爆発していたらと思うとぞっとするよ。……済まない!」 たしかに危険だったわけで、それを自らの責任として認…
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