表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
46 パンドア大陸決戦篇
1715/4280

46-26 アヴァロンにて

「まあ、これが最善じゃないんだろうけどな」

 蓬莱島の司令室では、仁がほっと溜め息をついていた。

『それでも、世界を襲った危機は、御主人様(マイロード)のお働きで回避されたわけです』

 老君が仁を称えた。

「大したことをしたわけじゃないし、あまり自覚もないんだがな」

『それでも、です。このようなことがおできになったのは御主人様(マイロード)だけだったのですから』

「そんなもんか」


「お父さま、ただいま戻りました」

 そこへ礼子が帰って来た。

 『ペガサス2』に備え付けてある転移門(ワープゲート)で一足先に戻ってきたのだ。

 その『ペガサス2』は、ホープによる操縦で、蓬莱島を目指していた。

 超音速で飛行しているのでじきに戻るだろう。

「お帰り、礼子。ご苦労さん」

 ミニ礼子が仁の膝から立ち上がり、ひとっ飛びに礼子の肩の上に飛び乗った。

「では、着替えてまいります」

 ミニ礼子を肩に乗せ、礼子は奥へと引っ込んだ。そして1分ほどで戻ってくる。

 鉢金をはじめとした武装を解いていつもの出で立ち、エプロンドレスだ。


「お父さま、お疲れではないですか?」

 マルキタス騒ぎが起きてから6時間以上、仁は司令室に詰めっぱなしであった。

「そういえば、腹が減ったな」

「ソレイユとルーナがお食事の仕度を調えております。どうぞ行ってらしてください」

 仁は席を立ち上がって背伸びをした。

「ああ、そうさせてもらおう」

 そして食堂へと向かった。当然、礼子は付いていく。


 仁と礼子を見送った老君は、これからの処理を考え始めた。

『今の御主人様(マイロード)は、以前にも増して目立ちたくないとお考えのようですね』

 その証拠に、『ヘール移住計画』なるものを考えているほどである。

『今回の騒動を取り纏めたのは『デウス・エクス・マキナ三世』としましょうか。……従騎士レイは自動人形(オートマタ)であると宣言することで昔どおりの容姿でも構わないでしょうし』

 さらに、

『ロードトスさんの方は上手くやっていますかね』


*   *   *


 第二次『仁ファミリー』のメンバー、『傀儡くぐつ』のロードトスは今、『アヴァロン』にいた。

「お久しぶりねえ、トマックス」

 そして『森羅』のマリッカも一緒だった。

「これは、せ、先生!」

 マリッカは20年程前にこの『アヴァロン』で講師を務めていたこともあり、アヴァロン最高管理官のトマックス・バートマンは当時の教え子であった。

「本日はいったい、どんな御用で?」

「今、緊急を要する問題といったら一つしかないでしょう?」

「や、やはりパンドア大陸の?」

「そうです」

 現在の時刻は午後5時。パンドア大陸とはおよそー11時間の時差があるので現地は午前6時頃のことである。


 因みに、日付変更線は『大東洋』と呼ばれる、ラシール大陸とローレン大陸間の海……要は崑崙島に引かれている。


「一部隊が向かったようですが、相手はギジェルモ・マルキタス。敵うはずもありません」

 マリッカの断定に、トマックス・バートマンは狼狽した。

「え!? そ、それは……」

 そんなトマックスに、マリッカはにこりと笑いかける。

「落ちつきなさい、トマックス。30年経ってもそんなところは変わっていませんね」

「……は、はい、先生」

「『デウス・エクス・マキナ』が出動していますから大丈夫ですよ。現に、敵ゴーレム部隊はほぼ壊滅したようです」

「ほ、本当ですか! ……デウス・エクス・マキナ!? と、特別顧問の?」

「ここ数十年……いえ、100年くらい姿を現していませんでしたっけ? ええ、『その』デウス・エクス・マキナですよ」

「ほ、本人なのですか?」

 再びマリッカは微笑む。

「そんな声が出るだろうと思って私が来たのです」

 マリッカは『アヴァロン』創設者の一人であり、創成期から知っている数少ない生き証人であった。

「もうしばらくすれば、デウス・エクス・マキナがやって来るでしょうから、私から紹介します」

「え、ええと、ほ、本当に!? お、おいくつになるんです?」

 その言葉でマリッカは、トマックス・バートマンが何を言いたいのかを察した。

「ああ、そういうことですか。もちろん、初代ではなく、3代目になりますね」

 世襲制ではなく、能力で引き継ぐ、とマリッカは説明した。

「従騎士レイは自動人形(オートマタ)ですので昔と変わってはいませんけどね」

「……そうなのですか」

 そして、ようやく落ち着きを取り戻したトマックスを交えて、今後についての相談が始まった。


「むしろ、被害を受けたメルカーナ公国への支援と、この機会に『世界会議』への加盟を勧めるというのはどうでしょうね?」

「おお、先生、それはいい考えです。さっそく会議に諮り、手配します」

 トマックスは独裁者ではない。『アヴァロン』は議会制なのだ。

 マリッカはそうしてください、と頷いて見せた。そして傍らに控えるロードトスに話し掛ける。

「ロードトス、あなたはメルカーナ公国に何人か知り合いがいましたね」

「はい、マリッカ様」

「『アヴァロン』からの支援部隊と共に行き、説得に協力しなさい」

「わかりました」


*   *   *


『マリッカさんにお任せしておけば大丈夫でしょう』

 『アヴァロン』の方は様子見であると老君は結論づけた。

『あとは御主人様(マイロード)のお知り合いをどうするかですね……御主人様(マイロード)はどうお考えになっていらっしゃるのでしょう』


 その仁は、食堂にいた。

 蓬莱島は真夜中、ゆえに消化のよい献立となっていた。

「このおじやはいい味だなあ」

 仁が褒めると、ルーナが恐縮した。

「おそれいります」

「こっちの漬け物も美味いよ」

「ありがとうございます」

 ソレイユも頭を下げた。

「お父さま、お茶をどうぞ」

 そこへ礼子がほうじ茶を差し出す。もちろん、猫舌の仁にとって飲み頃に冷ましたものだ。

「ああ、美味い」

 おじやを食べ終え、漬け物を齧りながらほうじ茶を飲む仁。

(……エイラやカチェアはこれからどうするんだろうなあ……)

 老君が気を回していたように、仁自身もメルカーナ公国の知り合いに対してどうすべきか迷っていたのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20171121 修正

(旧)

 その『ペガサス2』は、ホープによる操縦で、仁の『分身人形(ドッペル)』を乗せてアスール湖の浮沈基地を目指していた。

 そこの巨大転移門(ワープゲート)を使えば、より早く帰還できるのだ。

(新)

 その『ペガサス2』は、ホープによる操縦で、蓬莱島を目指していた。

 超音速で飛行しているのでじきに戻るだろう。

 位置的にアスール湖回ったら遠かったです


(旧)因みに、日付変更線は『大東洋』と呼ばれる、パンドア大陸とローレン大陸間の海に引かれている。

(新)因みに、日付変更線は『大東洋』と呼ばれる、ラシール大陸とローレン大陸間の海……要は崑崙島に引かれている。


(誤)『今回の騒動を取り纏めたのは『デウス・エクス・マキナ三世』としましょうか・……

(正)『今回の騒動を取り纏めたのは『デウス・エクス・マキナ三世』としましょうか。……


 20220222 修正

(誤)「あとは御主人様(マイロード)のお知り合いをどうするかですね……御主人様(マイロード)はどうお考えになっていらっしゃるのでしょう」

(正)『あとは御主人様(マイロード)のお知り合いをどうするかですね……御主人様(マイロード)はどうお考えになっていらっしゃるのでしょう』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >「あとは御主人様のお知り合いをどうするかですね……御主人様はどうお考えになっていらっしゃるのでしょう」 老君のセリフですので、『』にしないと ですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ