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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
42 過去との絆篇(3899年)
1567/4279

42-28 現状

「私の知る限りでは、大体こうなっていますね」

 ロードトスは、各国の現状を仁に説明し始めた。

「ミツホの北がフソーです」

 そのあたりはあまり昔と変わっていないようだ。

「ミツホの東にショウロ皇国があります」

 こちらも国境線は変わっていないらしい。

「そしてセルロア王国、エゲレア王国、フランツ王国、クライン王国、エリアス王国」

 これら『小群国』と呼ばれていた国々も健在である。

「……この一番東はどうなっている?」

 二番目に気になっていたことを尋ねてみる仁。つまり『旧レナード王国』のことだ。

「これから説明しようと思っていましたが、そこは分割統治になっていますね」

「分割……か」

「はい。おおまかに言って4分割されまして、北をクライン王国、中程をセルロア王国、南側をエゲレア王国が治めています。そしてフソー島を含む諸島と一部の海岸部は『コンロン自治区』となっています」

「コンロン自治区?」

「はい。そのあたりから崑崙島までが自治区となり、代々の『コンロンクン』代理が治めています」

「そうなのか……」

 詳しく聞いてみたい気もしたが、最も気になっていることを先に確認することにした。

「クライン王国の北にある……あったはずのカイナ村はどうなっているか、知っているか?」

「もちろんです。あそこは『ジン・ニドー永世中立領』となっています。そもそもそこを通らないと陸路でゴンドア大陸へ行けませんしね」

「ああ、そうなんだ」

 この目で400年後のカイナ村を見てみたい、とちょっと思った仁であった。

「で、クリューガー山脈の北側は、誰の土地でもない、ということで温存されています。……確か『特別保護区』とか」

「へえ」

「動物や生態系の保護と保存、だそうです。誰でも足を踏み入れられますが、個人レベルを超える採取は禁止です」

 『世界会議』で決まっており、『世界警備隊』が監視を行っている、らしい。

 自然保護にも力を入れているようだ、と仁はなんとはなしにほっとしていた。


 詳細はその国を通る時にでも、ということで、仁も質問はそれくらいにして、床に就いたのである。

 久しぶりの畳の部屋、夢も見ずにぐっすりと寝た仁であった。


 翌5日、ロードトスはサヤマ湖畔へゴーレム馬を迎えに行った。

 仁はぶらぶらと町を見物。

 特に危険なこともないし、『保護指輪(プロテクトリング)』もしているので心配はない。

「ああ、そうだ。買えるなら魔結晶(マギクリスタル)を買って、『守護指輪(ガードリング)』にしておく手もあるな。それに素材が手に入ればホープももう少し強化してやれるし」

 ということで、素材屋を探しながら観光して歩く仁。

「ここは道具屋か……あっちは……」

 とりあえず賑やかな中央通りを歩いていく仁。

 と、通りが広くなって、噴水のある場所にやってきた。

「ああ、こういう場所もあるんだな」

 そこには1体の銅像が建っている。

「以前は噴水も銅像もなかったよな……誰の銅像だろう?」

 台座に近づいて、刻まれている文言を見ると。

「……『ミツホの恩人、魔法工学師マギクラフト・マイスター二堂仁 様』……うわあ」

 仁の銅像だった。

 仁はそそくさとその場をあとにする。とはいえ、あまり似ていないので誰も気付かないであろうが……。


 そこから2分くらい行ったところに素材屋が一軒あったので入ってみる。

「おお、これは……」

 そこそこ質のいい素材が並んでいた。

「ああ、物資というのは文化の維持に大切なんだなあ……」

 公国から来たので尚更そう感じる。

 店員は特に声を掛けてこないので、仁はゆっくりと見て回れた。

「うーん、昔より安い気がするな」

 価格には疎い仁であるが、確か昔は魔結晶(マギクリスタル)が1コロット(約1グラム、球で直径6ミリくらい)あたり1万から100万トールくらいだった記憶がある。

 幅が大きいのは品質のばらつきと、属性によって価値が変わるからだ。

「それが5000トールから5万トール……まあ最高級品は並べていないんだろうけど」

 仁は虹色の魔結晶(マギクリスタル)を手に取った。

「これが1万トールか……」

 金貨1枚、およそ10万円。今の仁の持ち合わせで買える。

 品質的に、『守護指輪(ガードリング)』を作れるレベルだ。


「ありがとうございました」

 仁はその魔結晶(マギクリスタル)を購入し、店を出た。

「あとは金属素材か……どこで売ってるだろう?」

 ミスリル銀やアダマンタイトは一般人が買うようなものではないので、そもそも商店に並んでいるとは思えなかった。

「鍛冶屋か……あ、そうだ。『工場』はどうなんだろう?」

 かつて仁が直した『工場』。

 ミツホで使われる道具・魔導具のほぼ全てを作り出していたのである。

 そこになら仁が求める金属素材もあるはずだ。

「だけど売ってもらえるかなあ……」

 とりあえず行くだけは行ってみよう、と仁は思い、北東へ向けて歩き出した。

 昨日、空港から来た時は気付かなかったが、ちゃんと元の場所に建っていた。体育館ほどもある石造りの建物。

 ただ、周囲に大きな建物ができたために目立たなくなっていただけである。

 相変わらず、出入り自由なようだった。


「おお、ほとんど変わってないな」

 『工場』の正面玄関を入ると、受付となる。ここで欲しいものを申し込むのだ。

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用でしょうか?」

 仁が知らない、自動人形(オートマタ)の受付嬢が出迎えてくれた。

「ええと、工場長に直接話をしたいんだけど、取り次いでもらえるかな?」

「はい、お待ちください」

 断られることもなく、仁の申し入れは受け入れられ、受付嬢は奥へと引っ込んだ。そして1分ほどで戻ってくる。

「ようこそいらっしゃいました、ジン様」

 仁を見た『工場長』は、すぐに仁を見分けたようだ。

「ああ、お前か。調子はどうだ?」

「はい、おかげさまで、役目を果たしております」

 仁が修理した工場長自動人形(オートマタ)は、『仁がいる』ことを不思議に思っていないようだ。

(あの時も、素材の量がいきなり増えても何の疑問も持たなかったしな……)

 要は古い自動人形(オートマタ)なので、仕事以外のことに関する判断力が乏しいということだ。


「それで、私にご用とは何でしょうか?」

「ああ、アダマンタイトを50グラムほど分けてもらいたいんだが、可能だろうか?」

「はい、条件付きで可能です。……球形でよろしいでしょうか?」

「……あ、ああ、それでいい」

「それでは少々お待ちください」

 仁は『条件』というものに薄々見当が付いた。

 ここは『工場』であるから、『製品』を出荷する場所である。ゆえに素材単体での引き渡しはできない。

 ゆえに『50グラムの』『アダマンタイト製の』『球』という『製品』として扱う必要があるということだ。

 同様に、例えば2キロの鋼鉄が欲しければ、『2キロの重さで直径5センチの鉄パイプ』などという条件を付ければいいということになる。


「お待たせいたしました」

 5分ほどで、仁は目的のものを手に入れることが出来たのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20170626 修正

(誤)仁が修理した工場長ゴーレムは、『仁がいる』ことを不思議に思っていないようだ。

(正)仁が修理した工場長自動人形(オートマタ)は、『仁がいる』ことを不思議に思っていないようだ。


 20170627 修正

(誤)要は古いゴーレムなので、仕事以外のことに関する判断力が乏しいということだ。

(正)要は古い自動人形(オートマタ)なので、仕事以外のことに関する判断力が乏しいということだ。


 20181028 修正

(旧)そのあたりから崑崙島までが自治区となり、代々の『コンロンクン』が治めています」

(新)そのあたりから崑崙島までが自治区となり、代々の『コンロンクン』代理が治めています」

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