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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
41 仁放浪篇
1539/4279

41-40 閑話73 仁が望んだもの

「……あ、ユウとミオが泣いてる。ちょっと待ってて」

 エルザが立ち上がり、一瞬遅れてミーネも立ち上がった。


 ここは蓬莱島。

 帰って来た仁が、これまで何をしてきたのか説明するというので、『仁ファミリー』が勢揃いしているのだ。


「……ふう」

 仁は一旦語るのをやめて、ラモン(レモン)スカッシュを口にした。

 本当は、エルザが双子に授乳させている所へ行きたいのだが、エルザがやたらと胸を見られるのを恥ずかしがるのでまだ果たせていない。

 少なくとも仁と2人きりの時でないと無理のようだ。


「……お待たせ」

 エルザとミーネが戻って来た。エルザの腕の中にはユウ、ミーネの腕の中にはミオが。

 眠っていた双子も、今は目が覚めたらしく、お腹が一杯になったはずなのにきゃっきゃとはしゃいでいる。

「そうだ」

 仁は作っておいたおもちゃを取り出した。

「ジン、なに、それ?」

 エルザと同じく、息子であるレジナルドを抱きかかえたビーナが尋ねた。

「でんでん太鼓だよ」

「でんでんだいこ?」

「そう。これを……ほら、ユウ、ミオ」

 ユウとミオの手に、仁は一つずつ持たせると、2人ともそれを振り回す。

 と、ででん、でんでん、と音が鳴る。

 それが面白かったらしく、2人はさらに振り回す。やはり音が鳴るので、ご機嫌だ。

「意外と赤ん坊って握力が強いんだよな」

 なのででんでん太鼓がすっぽ抜けることもなく、双子は飽きることなく鳴らして遊んでいた。


 実は、でんでん太鼓は赤ん坊が遊ぶものというより、子守があやすために鳴らすことが多いのだが、仁は赤ん坊用に作ってしまったのだ。

 『がらがら』と呼ばれるおもちゃと混同したのだろう。

 まあ、喜んでいるので問題はないだろうと思われる。


「いいわね、それ」

 ビーナもレジナルドを抱いたまま、興味深そうに眺めた。

「ビーナもいるかい? 一つ上げよう」

 仁はどこからかでんでん太鼓を取り出した。

「あ、ありがとう、ジン!」

「ジン、すまないね」

 礼を言うビーナとルイス。

 だが仁は何でもないと首を横に振った。

「小さい子が怪我をしないように、ヤワな作りになっているからな。壊してもいいように沢山作っておいたのさ」

 工作馬鹿で親馬鹿の本領発揮であった。


*   *   *


 ユウとミオが起きたので、しばらくは話にならなくなってしまった。

 そこでみんなして表へ出る。外は晴天、9月の涼しい風が吹いていた。

 研究所前の芝生に、思い思いに腰を下ろす。


「わーい、赤ちゃん可愛い」

 ハンナは2人のほっぺたをつついて構っているし、ラインハルトとベルチェはよちよち歩きするようになったユリアーナを、研究所前の芝生で思い切り歩かせているし。

「ほーら、ユリアーナ、パパはこっちだぞ」

「ユリちゃん、ママはこっちよ」

「あんよは、おじょうず」

「おいでー、こっちよー」

 どっちへ向かって歩くか競っているラインハルト夫妻であった。


 仁は仁で、義母ミーネからミオを受け取ると、腕の中であやしている。

「あ、笑った笑った」

「ジンさん、上手ですね。エルザよりうまいわ」

「はは、施設時代に小さい子の面倒は随分見ましたから」

「さすが、お父さまです!」

 礼子もにこにこしながらその様子を見ている。


「ああ、本当によかったわ」

 少し離れたところから、その幸せそうな様子を見て、ミロウィーナが頬を緩めていた。

「本当にねえ。ジンは孫みたいなもんだから、ユウちゃんとミオちゃんは曾孫ひまごかねえ」

 マーサもすっかりでれでれだった。


「くふ、ああしているのを見ていると、子供っていいものだね」

「そう思ったらさっさとグース君と結婚してしまえ」

「と、父さん!?」

「トアさん!?」

 父トアにけしかけられて慌てるサキとグースだった。 


「ああ、わたくしも赤ちゃん抱いてみたくなりましたわ」

「トアさんに頼みなさいよ」

「ヴィ、ヴィヴィアン!?」

「あーあ、私も早くいい人見つけなきゃ」

 ステアリーナとヴィヴィアンもそんな会話を交わしていたり。


「シオンさんの赤ちゃん、早く見てみたいです」

「なっ、何言ってんのよ!」

 珍しくマリッカにからかわれて顔を赤くするシオンがいたり。


「お互い独り身は寂しいねえ」

「……同感です。……いいなあ、赤ちゃん」

「こればっかりは1人じゃどうしようもないものね」

「ですね」

 マルシアとリシアは何か共感するものがあったのか、最近特に仲よくなっている。

「マルシア……」

 ロドリゴは、そんな愛娘マルシアを複雑な表情で眺めていた。


『皆様、お茶の用意ができました』

 そこへ、老君の指示により5色ゴーレムメイドたちがお茶の仕度をした。

 テーブルと椅子や、座卓などを運んできて、それぞれ思い思いにお茶を楽しむ。

「ああ、美味しいなあ」


 蓬莱島の空は青く澄み、世はなべてこともなし。仁が望んだ平和な風景がそこにあった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20170529 修正

(誤)エルザとミーナが戻って来た。

(正)エルザとミーネが戻って来た。

 orz


 20170922 修正

(誤)レオナルド

(正)レジナルド

 2箇所修正 orz

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだかんだあっても、結局はこうして平和な日々に戻れたことがわかっていると、安心して読めていいですね。
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