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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
41 仁放浪篇
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41-33 新たなる仕事

「ゴ、ゴーレムって、そんな流暢に、喋るんですか!?」

「うん、喋るよ」

 仁はあっさりと答える。

「発声装置と、言語処理機能がないと駄目だけど、こいつはニコイチにした制御核(コントロールコア)があるから、少々質が悪くても機能は十分だ」

「そ、そうなんですか……」

「さて、これで優秀な助手ができたから、作業効率は上がるぞ。『ホープ』、手伝ってくれ」

「はい、ご主人様」

「ああ、俺のことは名前で呼ぶように」

「はい、ジン様」

 パエローヴァたちの手前、『ご主人様』は避けた方がいいかな、と何となく思ったのである。


 仁自らが作ったゴーレムを助手にしたため、作業効率はぐっと上がった。

 細かいニュアンスを察し、また率先して動いてくれるのである。

「よし、こっちを頼む」

「はい、ジン様」

「そっちはどうだ?」

「はい、ちょうど終わりました」

 残る4体が見る見るうちに修復されていく。


「すごい……」

 カチェアが驚くのも無理はない。修理したゴーレムに手伝わせていたときよりも数倍速く作業が進んでいくのだから。

 それでも仁はのんびりやっているようなのだ。

「……やっぱり、作業効率、というのは……考えて行うべき、なんですね」


 夕方、午後5時前には、13体のゴーレムが修復を終え、整列していた。

 余ったのは鉄700グラム、青銅3.3キロ。

 そして使えないと判断した、中古魔結晶(マギクリスタル)が4個だ。


「お、おおおお! もう終わったのか!!」

 大声に振り向けばパエローヴァである。ジェド・アラモルドも一緒に来ていて、完成したゴーレムを見て目を見張っていた。

「はい、つい今し方、完成しました。助手ゴーレムを作る許可をいただけたので作業が捗りましたよ」

「おお、そうか! ……助手ゴーレムというのはどれだ?」

「はい、これです。……ホープ、パエローヴァ様に御挨拶しなさい」

「初めまして、ホープと申します、パエローヴァ様」

「おおおお!? しゃ、喋るのか!?」

「はい。助手ですので話ができないと不便ですから」

「そういう意味ではないのだが……ま、まあいい。よくやってくれた、ジン殿!」

 パエローヴァはもう上機嫌中の上機嫌。今夜は宴会だ、と言いだし、ジェドに窘められる始末。

「ジン殿、貴殿を迎えられたことは望外の喜びである」

 居住まいを正したパエローヴァ・ソンドヴィクは仁に握手を求め、仁もそれに応じたのであった。


*   *   *


「しかし、これは何度目かの嬉しい誤算だな」

「はい。まさか、あれほどの技術を持っていたとは驚きです」

「明日以降は、町の重要施設を見させるか」

「は、それがよろしいかと。……ですが、そうなるとかの者との出会いは避けられませんぞ」

「それは仕方ないな。誰か……うむ、お前が一緒に付いておれ。さすれば騒動にはならぬだろう」

「わかりました」


*   *   *


「欠けた火属性の魔結晶(マギクリスタル)か……」

 通常なら廃棄されるものだが、仁はパエローヴァとジェドに断って貰ってくることができたのだ。

「この大きさと品質じゃ、『純化(ピュアリ)』を施しても『守護指輪(ガードリング)』は無理だな。『保護指輪(プロテクトリング)』で我慢するか」

 守護指輪(ガードリング)は上級、保護指輪(プロテクトリング)は中級レベルの攻撃魔法を防ぐ障壁結界(バリア)を張れる。

 もちろん仁自身でも張れるが、こうしたアイテムがあれば休憩中・睡眠中なども安心だし、その分のリソースを他に割り振ることができるのだ。

「『純化(ピュアリ)』『結晶化(クリスタリゼーション)』『変形(フォーミング)』『書き込み(ライトイン)』……これで、よし」

 助手ゴーレムと保護指輪(プロテクトリング)。これで、身の安全について安心できるようになった、と仁はほっと溜め息をついた。


「明日は町中の魔導機(マギマシン)を見て回るという話だったな。……それはそれで楽しみだ」

 当面の目標はローレン大陸に渡ること。それには信用を得て、行動の自由を確保しなくてはならない。

(エルザ……礼子……老君……ハンナ…………待ってろよ……何としても帰るからな)

 小さな窓から夜空を見上げながら、仁は決意を新たにしたのである。


 翌7月27日。

 仁はカチェアとその担当官であるカルリッヒ・ガウラー、それにジェド・アラモルドらと共にローフォンの町へと出た。

 因みに助手ゴーレムのホープは同行を許されなかった。

「整った街並みですね」

 いささか整いすぎの感があるほどだ。これも、計画的に作られた町だからだろう、と仁は思った。

 歴史ある、というといささか大袈裟だが、古くからの町だと増築、改築、新築が入り混じって雑多な感が出てくるのだ。

 ここにはそれがない。ほぼ全部の建物が同じ古さに見える。

 新たな大陸に築かれた新しい町、という背景を知っているとそういった推測が簡単にできてしまう。


「まずは公民館へ行こう。そこの魔力素(マナ)スタンドを見てもらいたい」

 思い掛けない単語が出てきた。『魔力素(マナ)スタンド』は『魔力素補給機(マナサーバー)』と同様、仁が提唱し、一般へ普及させようと考えていたシステムの一部である。

「わかりました」

 表向きは平静を装っている仁だったが、内心は楽しみでしょうがない。

 今現在はどのような型式になっているのか知りたくてたまらないのだ。

「まずは、ここだ。実は町中に4箇所あって、適正価格で魔力素(マナ)を補給できるようになっている」

「なるほど」

 仁は、目の前にある『魔力素(マナ)スタンド』を注視した。が、さすがの仁でも、外から見ただけではわからない。

「これを整備すればいいのですか?」

「できるのなら、だが」

「まずは見てみます」

 仁は魔力素(マナ)スタンドに歩み寄り、上から下までしげしげと眺めた。

 大きさはドラム缶くらい。円柱状で、ホースのように太い導線が付いている。

 導線の先を『魔力貯蔵庫(マナタンク)』に当て、起動すると魔力素(マナ)の充填ができる仕組みのようだ。


「『分析(アナライズ)』『追跡(トレース)』『精査(インスペクション)』……ん?」

「どうかしたかね、ジン殿?」

 仁は振り返ってジェドを見つめた。

「ジェドさん、からかわないでください。これは動いていないじゃないですか。整備ではなく修理になりますよ」

「ううむ……見てすぐにそこまでわかるとは……。いや、謝罪する。直せるものなら直してもらいたい」

「わかりました。とにかく中を拝見」

 仁は手早く外装を取り外した。

「ははあ、魔素変換器(エーテルコンバーター)が壊れていますね。酷使したためでしょう」

 仁は一目で不具合を見抜いた。

「ううむ……で、直せるかね?」

「はい、魔結晶(マギクリスタル)があれば」

 仁の言葉を聞いたジェド・アラモルドは即断した。

「よし、ローレンツに会いに行こう」

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20170522 修正

(誤)「始めまして、ホープと申します、パエローヴァ様」

(正)「初めまして、ホープと申します、パエローヴァ様」

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