第九部屋目 ベンチと木の下で。
気づけば最後に投稿した日からかなりの日数が経っていたことに気づく紙。スイマセンでしたぁぁぁぁあぁぁぁああああああ!
「・・・懐かしい所だな。」
俺は秋人に言われた校庭に恵里菜と二人で来ていた。そうか、ここは俺たちが通ってた小学校だ。今では旧校舎となり、新しい学校はここから少し離れた所にある。
「確か此処に・・・あった、ほら恵里菜あそこのベンチに座って。」
コクン。と頷いた恵里菜は古くなったベンチに座った。周囲は雑草が目立つが、このベンチの周りだけは殆ど雑草がない。
「この木・・・まだあったんだな。」
俺はベンチから少し離れた木を見る。時間が経ってしまい、なおかつ誰も手入れをしていないためか、ところどころ木に傷が付いている。それでも葉は生い茂り、間から小さな光が差し込む。
俺はその木に手をかけ、上を向く。
「俺、さ。昔っから誰かに頼るのが大嫌いで・・・いつも1人で何とかやる、とかそう思ってたんだ。」
「・・・。」
「だけど、此処の皆は優しくてさ・・・俺に手を貸してくれてたんだ。」
小さい頃の俺はよく、皆に手を貸してもらったりしていた。
「そして俺が何かに成功したり、できたりすると喜んでくれた・・・俺も喜んだ。」
「・・・。」
「だけど、馬鹿だったんだなぁあの時の俺は。全部自分でやったんだ、そう思ってたんだ。」
今思えばホントにアホらしい。まるで手柄は自分の物、そう思っていた。
「まぁ、あの時の俺は小さかったし、皆、弱い俺に手を貸してくれてたんだと思う。」
「いざ中学生になって・・・皆自分のことで一杯になって、俺も大きくなったから周りの人達も自分でできないとね、そういう感じになってたんだ。」
勿論、俺が本当に困っていた時は手を貸してくれてた。今となっては感謝しきれない程の恩がある。
「甘やかされて育った俺はいざ1人になると、何もできなかった・・・どんな困難も、1人では立ち向かえないただの臆病者だったよ。」
「そして、俺は思ったんだ。このままじゃ、俺は社会に出てもただのゴミクズだってね・・・。」
「だから、必死に勉強して、やれることは全てやろう、そう思ったんだ。今度こそ、1人でやっていけるように、俺は頑張った。」
社会の中で、皆のために努力してる兄さんや姉さんに憧れたんだっけ。自分もあんな風になりたいって。
「そして、高校卒業間近の時に・・・ふと思ったんだ。成績も良くて、どんなことでもやれる俺なら、1人で生きていけるって。」
「だから、家を飛び出して・・・一人で生きていく事にしたんだ。住むところも自分で見つけて、自分でお金稼いで・・・。」
だけど・・・現実はそんなに甘くない。
「俺以上の奴なんて山ほどいる。いや、俺が最底辺なだけだな。知り合いに何度も頭下げて、働かせてもらって・・・惨めだったよ。」
「結局、誰かの助けがないと生きていけないって思ったんだ・・・これは甘え。ではなく、助け合うってことだってやっと気づいたんだ。」
「父さんと母さんにお金出してもらって学校いって・・・飯も食わせてもらって・・・そして俺はその2人に恩返しをするために、精一杯働いて、幸せに暮らして・・・そして2人に精一杯の親孝行をすること、勝手だけどそう思った。」
「周りの人達にも、助けて貰った分、自分も相手が困ってたなら助けて、一緒に協力すること・・・そう気づいた。」
「だけど、結局俺は何もできなかったんだ・・・そして、あの日が来てしまった。」
「父さんと母さんが死んでしまったんだ・・・何もできないまま・・・。」
「馬鹿・・・だよなぁ・・・結局最後まで迷惑かけたまま・・・なに・・・もできず・・に。」
気づけば俺の目から涙が溢れていた。俺は涙を拭うが、また溢れ出す。
「最後に残ってた記憶は・・・家族皆で花見した事だけだったよ・・・まだ俺も小学生に入る頃だった・・・皆で手を繋いで・・・笑顔で・・・。」
幼い俺の手を引いて、一緒に歩いてくれて・・・。
「皆と手を繋いだあの2人の顔・・・今まで俺が生きてきた中でホントに嬉しそうだった。」
「いつも、笑って・・・時々怒って、そして優しくて・・・だけど・・・もう2人には・・・会えない・・・。」
「葬式が終わって・・・俺は、誰もいない2人の部屋に入ったんだ。そしたら、そこには母さんが忘れていった手紙があったんだ・・・。」
「長い文章じゃなかったよ・・・小さい手紙さ・・・そして、こう書いてあった。」
『私達にとって、龍騎が笑顔で生きてくれる事が、一番の幸せです。辛い事があったら、いつでも帰っておいで。自分一人で抱え込まないで。』
「・・・結局全部あの2人にはわかってた。俺の事が・・・それに、2人は俺の所に来るために出かけたんだ・・・。」
「俺が、父さんと母さんを殺したんだ・・・その手紙を見たときそう思った・・・だけど、手紙には追伸があった・・・『苦しい時も、笑顔で生きて。それが私達にとっての親孝行だよ。』って・・・。」
その頃には俺の目はもう前すらも分からず涙で溢れていた。
「だから、決めたんだ。幸せに生きていこうって。そしてまずはお世話になった人達に恩返ししようって。そして俺はこの町に、戻ってきたんだ・・・今はまだ何もできないけど、いつか・・・きっと・・・。」
俺はそこまで言って口を止めた・・・。すると恵里菜は涙声でこう言った。
「2人共、幸せだと思う・・・お前が・・そう思ってくれるなら・・・」
「私には・・・上手く言えない・・・だけど、お前が・・・龍騎が話してくれなかったのは、哀しい。もっと早く言え・・・バカ。」
「恵里菜・・・俺は・・・。」
「龍騎、お前は・・・この町が嫌で、飛び出したわけじゃないんだな・・・。」
「あぁ、そうだ。」
「・・・そうか・・・なら、私の事も・・・キラィじゃなけだな・・・」
「何か言ったか?」
「い、いやなんでもない・・・龍騎・・・。」
恵里菜は顔を上げ、俺を見た。
「わ、私ににも、おおお、恩返しをすすするんだよな・・・?」
「あ、あぁ。」
恵里菜は顔を赤らめ少し目をそらしながら俺にこう言った。
「な、なら・・・私・・・と・・・その・・・つ、つつ、付き合って・・・くれ・・///」
その言葉は、今までどんなことよりも衝撃的な言葉だと俺は思った。
NGシーン
「確か此処に・・・あった、ほら恵里菜あそこのベンチに座って。」
コクン。と頷いた恵里菜は古くなったベンチに座った・・・途端だった。
べきょッッッ!!
恵里菜が座った途端にベンチが壊れたのだ。
「あ・・・椅子が・・・。」
「・・・・ば、」
顔を赤くした恵里菜は拳を握る。
「ば?」
「馬鹿ぁぁぁああああああ!!」
ドガァ
「グハァっ!?」
おしまい☆