第4部屋目 秋風アパート
僕の家では毎週金曜日はカレーという法律が定められています。
「あ、着きましたよお兄さん!」
紗香達と一緒にアパートに向かった俺たちは今丁度目的地である秋風アパートに着いた。外見はまだ新しく、俺は一安心する。これでかなりボロいアパートだったら気持ちが沈んでいた事だろう。
「ここが俺の住む所か・・・。」
「・・・・龍兄の部屋、何処?」
「いや、まだわからないんだ。今日はそれも兼ねて此処に来たからな。まずは大家さんを探そう。」
「お姉ちゃんは一階に住んでますよ。」
紗香に言われた通り、俺たちは一階を探す。横に三部屋程のアパートだ。これを経営している紗香のお姉さんはずいぶん凄い人なのだろうか。それとも親がすごいのか。それを考えると俺は紗香にキスした事に恐怖を感じた。社会的に殺されないだろうな、俺。
「あら?紗香じゃない。どうしたのこんな所で。」
二部屋目を過ぎようとした瞬間に、ドアが開き中から優しそうなショートヘアの美人さんが出てくる。
「あ、お姉ちゃん!」
「・・・・こんにちわ、涼花さん。」
「あら、瀬良ちゃん久しぶりね。」
ペコリと頭を下げる瀬良に笑顔で挨拶する紗香のお姉さん、涼花さん。良かった・・・普通の人のようだ。俺は安心しながら、涼花さんに挨拶する。
「どうも、俺は綾姉さんの弟の龍騎です。よろしくお願いします、涼花さん。」
「あ、君が綾の弟君ね!よろしくね。今日は下見かしら?もしそうなら案内するわ。」
笑顔が女神に見える。紗香は良い娘だが、涼花さんはまた格別だ。うん。これなら俺は元気に生きていけそうだ。
「はい。よろしくお願いします。」
「ふふ、こちらこそよろしくね。じゃあ案内するわ。」
涼花さんはそう言いながら階段に登る。俺は涼花さんの笑顔に癒されながら、後ろを見た。すると瀬良と紗香が頬を膨らませ俺を睨んでいた。
「・・・・ばか。」
「お兄さん・・・酷いです。」
俺何かしたか?何故起こっているのかわからない俺は首を右に傾けながら階段を登る。ま、いいか。そう思いながら階段を上り続ける。全部で5階はあるぞこのアパート。俺はてっきり2階のアパートかと想像していたんだが・・・少し違うようだ。しかし此処まで大きいとマンションにも感じられるな。
「あの・・・涼花さん、俺の部屋は何階なんですか?」
「龍騎君のアパートは5階にあるわ。風が涼しいし景色も最高よ。」
景色が最高だと!?なんて良い部屋なんだ!丁度ここは河川敷に近いアパートだ!ていうか目の前が河川敷だ。夕日が見れるのか!何気に黄昏れというものやってみたかったんだ俺は!
「くくく・・・素晴らしいぞ、秋風アパート!」
「どうかしたの?」
「あ、いえ何でもありません。」
危ない危ない。涼花さんに変な人に思われたら大変だからな。
涼花の心の声「噂には聞いていたけど・・・変な人だなぁ。龍騎君。まぁ綾の弟だからかな?」
実際は思われていた。
階段を上っていくと、夕日の光が見え始める。紅蓮の色。くく・・・これだ、俺が待っていたのは!しかも、河川敷には桜が咲いている!なんとも言えぬこの景色!最高だ!
「・・・・龍兄、テンション高くなってる。」
「え、何でわかるの瀬良?」
「・・・・龍兄がテンション高い時は何故か髪が上昇する。ほら、前髪よく見て。」
紗香は前髪に注目する。後ろからだからよく見えないが、前髪が浮いているのがよく分かる。
「・・・何か顔を思い出したら恥かしくなってきた///」
「・・・・紗香、落ち着いて。」
さっきから後ろの2人が何か話しているようだが得に気にする必要はないだろう。俺はテンションが絶好調のまま5階に着く。しかし何故だろう、視界がすごく良い。そして真ん中の部屋の所で涼花さんが振り返る。
「ここが君の部屋・・・きゅう////」
「え?涼花さん、どうかしましたか?」
俺の方を向いた瞬間涼花さんが顔を赤らめ謎の声をあげる。なんだこのデジャヴ感は!?俺が焦っていると後ろから瀬良の声が聞こえる。
「・・・・龍兄、こっち向かないで話を聞いて。」
「え?お、おう。」
「・・・・落ち着いて深呼吸して。」
俺は瀬良に言われた通り深呼吸して気持ちを落ち着かせる。すると視界が少しづつ悪くなる。
「・・・・よし、涼花さんもう大丈夫です。」
「え?あ、ホントだ。じゃ、じゃあ龍騎君。ここが君の部屋よ。」
「は、はぁ。」
なんだか訳もわからず俺は頷く。なんだこの違和感は。俺が何かしたか?
「じゃあ開けるわね。」
「よろしくお願いします。」
涼花さんがドアの鍵を開け、開く・・・横に。え?引き戸なの!?
「はい、どうぞ。」
「「「失礼します。」」」
声を揃え部屋に入る俺達。おおかなり広い。窓も大きく光が入ってくる。ニートな俺に光が差し込む。うむ。これなら生活環境も良くなりそうだ。・・・多分。
「なんというか・・・凄いですね。」
「ふふ、ありがと。」
「・・・・私も住みたい。」
「ここってこんなにすごいんだ・・・。」
あーやべ。なんていうかパネェ。ッネぇ。姉さん達からお金を出してもらうというのもアレだが、こんないいところに住めるとは思いもしなかった。最高だ。そして俺はスマホを見る。するともう6時前となっていた。そろそろ晩御飯を作らなければ。
「もうこんな時間か。有難う御座います、涼花さん。」
「あら?もういいの?じゃあ、よろしくね、龍騎君。」
「はい。よろしくお願いします。」
紗香達が部屋を出て、最後が俺になった頃部屋の中から笑い声が聞こえた。俺は後ろを向いたが気のせいだと思い、そのままドアを閉じる。そして涼花さんが鍵を閉めた。そして階段を降りていき、涼花さんの部屋の前まで来た。
「では、さような。涼花さん、紗香。」
「さようなら、龍騎君、瀬良ちゃん。」
「バイバイ!瀬良、お兄さん!」
「・・・・さようなら。」
俺らは涼花さん達に別れを言った後、来た道を戻っていった。
「・・・・龍兄、頑張ってね。」
「ああ。親父や母さん、兄貴や姉さんの為、そしてお前の為にも頑張るさ。」
瀬良と2人で帰る俺達の背中には、夕日の光が照らしていた。
更新するって・・・楽じゃない!そう思わされた自分です。あと、紗香を紗耶香と間違えていましたwご指摘してくれた方、感謝です!