02.厄介な友人達
「はぁ~、疲れた……」
自分の席に着くなり、俺は机に突っ伏した。
「よぉ、今日は遅刻しないのか?」
疲労困憊している俺に気遣い一つなく近づいてくる影一つ。
声で誰かは解るし、この俺に話しかけてくる奴はそうはいない。
嫌々ながら顔を上げると、そこにはやはり知った顔があった。
俺の悪友こと、相葉一哉がにやにやした顔でそこにいた。
「なんだ、バ一哉か」
「なっ!?誰がバ一哉だ!このっ、……えーと、あー……」
「思いついてから言おうなー。まぁどうせバ一哉のことだ。大したもんは出てこないだろうがな」
「な、舐めるなよ……!俺だって一つや二つ………うーん、えーとな…………」
またしても下らないことで思考の海に溺れだす。
今までこいつがまともに俺への名前をもじった罵りが言えた試しがない。
とりあえず無視だな、構ってると余計に疲れる。
相葉一哉。
こいつとは中学の頃からの仲だ。
容姿はそこそこ良く、運動も出来る野郎なんだが、性格に欠点があって未だに彼女が出来てない可哀想な奴だ。
自業自得だがな。
こいつは重度の女好きなのだ。
可愛い娘を見かければすぐに口説こうとする馬鹿な男なのだ。
その為に一部の女子からは親の仇を見るような目で見られていたりする。
本当に可哀想な奴だ。
そして何故そんな奴と友達かと聞かれれば、解らん。
きっかけ、なんてものはそうそう憶えてるもんじゃない。
知らぬ内に友達にさせられていたとしか言えない。
そんなものだ。
「朝からなに騒いでんのよ?」
教室の入り口辺りから俺達に尋ねてくる声。
これまた顔見知りの者の声だ。
「別に。特に何もしちゃいないさ」
「ふーん。それより刹那、今日は遅刻しなかったんだ」
「どうしてお前等はどいつもこいつも……」
「いや、さっき会長さんが怪しげな笑み浮かべながらあんたの処罰を考えてたから」
「詩乃、それはほんとか?ははははっ!無駄なことだ。今日は遅刻し……」
「してようがしてなかろうが、罰は罰だ。それもボクが考えたもの。受けて貰う。そして身の内に刻み込め」
突如俺の言葉を遮ったこの偉そうで不遜そうな態度の声。
「って会長!?何故ここに……!つーか罰って。今日は遅刻してないですよ!」
「言ったろう、してようがしてなかろうが受けて貰うって。わざわざボクが考えてやったんだ。それが嫌なら我が労力になるか?綾瀬刹那、お前に拒否権などそもそもあったか?」
「……いえ、ありません」
あぁ、結局は如何することもできないのか……
あれを公開されるわけにはいかん。
篠原詩乃。
うちのクラスで俺の数少ない女友達の一人だ。
淡い水色の髪を無造作なショートにしており、片側だけ紐で結えた髪の房が特徴的な少女だ。
ミッドナイトブルーの瞳は、覗き込めば呑まれてしまいそうな深い色をしている。
性格はクールなイメージを受けるが、そうでもない。
寧ろ寂しがり屋というかちょっと弱いところがあり、時々見せるそんな部分がちょっと可愛いのだ。
まぁ一人で抱え込んでしまうところがあれだが。
会長こと、桜井カノン。
父親は日本人、母親を欧米人に持つハーフの我が校の生徒会長で、母親似の金色の髪を綺麗に切り揃えたショートにしている。
瞳は空のようなスカイブルーの色。
年齢的には俺の一つ上のボクっ娘先輩なんだが、背が少し小さいことにコンプレックスを持っている。
そして人の弱みを握って俺をいいようにこき使う先輩なのだ。
「ところで会長、その罰は一体どんなものですか?」
詩乃が控えつつも質問する。
会長が思案顔になりつつそれに応答する。
「そうだな、今日は一応ながら遅刻はしなかったんだし、少し簡単なものにしよう」
「……どうせならしないで下さいよ」
俺の小さな、ほんとに小さな呟きを会長は聞き逃さなかったのか、口元がニヤリと笑う。
「そうか、別にボクは構わないさ。その代わりと言ってはなんだが、この写真を……」
「すいませんでしたーーー!この私めになんなりとお申し付けください!」
俺はそう言って自分の言動に今更に気付き、後悔する。
あぁ、俺は一生この会長に頭が上がらないんだなぁと感じてしまう。
不幸だ。
「ふふふっ♪ならそうだな……生徒会の雑務と事務仕事を一週間全てやって貰おうか。それとボクの周りのことも」
「イエス・マム」
「声が小さい!」
「イエス・マム!!」
こんなことを繰り返した後、会長は俺に釘を刺して教室を去っていった。
最悪だ、最悪すぎる。
雑務と事務仕事はあそこは半端ない。
つーか雑務と言っても殆ど会長のお世話に近い。
「刹那、大丈夫?」
「あぁ、とりあえずな。やっぱりノエルは良い子だ、うん」
今まで黙っていたノエルが俺を気遣ってくる。
そんなノエルに対して頭を優しくなでて礼を言うと、彼女は目を伏せてそれを受け入れる。
「そ、それより刹那。今日現国を忘れたの。一緒に使わせて貰っていい?」
「別に構わんぞ」
「ハッロー!せっちゃんにしののん!それにノエルちゃんもハッロー!」
皐月のそんな声と同時にチャイムが鳴り響き、担任の一声で賑やかだった教室が静寂を取り戻す。
ずっと一人で考えていた一哉も気付けば席に着いていたが、未だに考えている。
ほんとあいつは馬鹿だな。
✝
「紅茶を入れろ、それとショコラとブルーベリータルトも持ってこい」
「そんなに食ったら太りますよ?」
「よし爆撃機を用意しろ。なに、ちょっと面白い写真を校内に……」
「すみませんでした!今すぐ用意します!」
「ん?そうか。すまない、さっきの話は無しだ」
くそう、相変わらずこの人は……!
人が善意で忠告したのに、電話で爆撃機まで用意して人を脅すか普通。
心の中で愚痴りつつも、指定された紅茶とケーキを用意して持って行く。
時は放課後、場所は生徒会室。
そして俺は会長の召し使いに成り下がっていた。
ほかの皆はそれぞれ帰った。
詩乃やノエル、皐月は待ってくれると言ってくれたが帰した。
何時帰れるか分からんからな。
一哉の野郎はさっさと帰って行った。
いつか潰す!
「会長、持ってきましたよ」
「それじゃ次は肩を揉め」
「はいはい」
会長の肩を揉んでいるとふと、その会長が思い出したように話しだす。
「そういえば綾瀬刹那、君に伝えることがあった。先日、隣町の高松高校から正式なDウォーズの試合を申し出が来ていたんだった。是非ともお前達と戦いたいそうだ。返事は勝手に出しておいた。時刻は三日後の夜8時ジャスト、場所は高松高校でフィールドは高松高校敷地内全て。人数は六人で君がいることが条件だ。ほかの参加メンバーは自由に決めてくれて構わない」
「それじゃあ、とりあえず詩乃と一哉と………って会長!何勝手に試合決めてんですか!?俺聞いてないですよ!」
「今聞いたじゃないか。それに遅かれ早かれ全国と戦う羽目になるんだ。別にいいだろ」
「そりゃまぁそうですけど……何故会長が。しかしもう決まってんですよね?」
「あぁそうだ」
「わかりました。だったら二日以内に参加メンバーを報告します」
仕方ない、後で連絡しなきゃな。
ただでさえ憂鬱な気分がより一層強くなってしまった。
結局帰路についたのは日が沈み、夜の闇に淡く青白い月が昇った頃だった。
「ただいまー」
疲れ果てて我が家に着くと、玄関には白のワンピースを着たノエルが今日の疲れを忘れさせてくれるような笑顔で俺を
迎えてくれた。
「おかえり、刹那♡」
はぁ~、ほんとにほんとに良い子だ。
凄い癒されるね。
だがそんな気分も一瞬で撃ち砕くような禍々しい気配を感じた。
なんだろう、どこかで感じたような邪悪で濃密な殺意を宿したこの感じは……
「はっ!?」
その気配の正体はすぐに現れた。
ノエルの後ろから二つの影が出てくる。
「兄さん、お帰りなさい。帰って早々に悪いんですが、お話があります」
「お兄ちゃん、朝の件でちょっとね」
現れたのは夕夏と春香だった。
二人ともにこやかに微笑んでるのに目が笑っていない。
今日は厄日だよ、ほんとに……
明日の日の出が見られることを切に願う俺だった。
どうもunkonownです。
序章とも言うべき『00.西暦2232年の世界』をいれて連続三つの投稿でした。
疲れますねぇ~、この作業。
それにもう一つの作品も入れてだから、作業量が二倍に!
大変です、はい。
さて、次回は授業風景やDウォーズに迫ってみたいと思います。
まぁ如何なるかはまだ分かりませんが……
それとこの作品が初めての方は是非とも『光と闇とあいつと私の異世界二重奏』を読んでみて下さい!
そうでない方は今後ともお願いします!
両方共に更新頑張ります!
それではまた次回に会いましょう!
早めのハッピーニューイヤー!




