第十六章39 【覇王杯/オーバーロード・カップ/唯野 芳一チーム】37/【芳一】の第4班の展開(【ドロワー・サーガ(引き出し英雄物語)編】)4
【異空間】に入ったは良いが、この状態だと危険な状態でもある。
なぜならば、引き出しを開けたらアイテムが使えるが、引き出しを開けずに異空間に入っているので無力な状態である。
だが、そこは抜け目ない【芳一/表道化】である。
元の世界から使えそうな道具を失敬して持ってきていた。
それを使って何とかこの異空間の【引き出し】を見つけようという考えである。
それは【方位磁石】である。
【引き出し】の隠れている所は多少なりとも時空が歪んでいるので磁場がおかしくなっているはずである。
そこを探そうという事で持ってきたのである。
もちろん、これは作中で語られていない裏技である。
これですぐに見つかるという訳では無いが、少なくとも違うという場所は特定出来るはずである。
後は虱潰しに探して行けば良いし、敵が来たら逃げれば良い。
スタート地点近くにある異空間は登場しても雑魚ばかりである。
逃げようと思えば走って逃げられる程度の敵である。
実力的には、4名の中の誰も、この程度の敵に不覚を取る様な実力不足のものは居ないのだが、ここは郷に入っては郷に従えである。
とりあえず逃げながら、引き出しを探して回ったのである。
虱潰しにした結果、引き出しが隠れていそうな場所を見つけた。
だが、この物語では【引き出し】を開けるなら【鍵】が必要なのである。
そこは1つ、【芳一/表道化】が、
『さて、ここに取り出したる【針金】が一本あります。
これをこうしてこう。
それでもって、こうやってああやってそこを曲げたりしますと・・・
あ~ら不思議。
立派な【鍵】が出来ましたとさってね。
いかがでしょう?』
と言った。
【道化】としての本領発揮である。
バカに【道化】の真似は出来ない。
馬鹿な事に見えて計算しつくした行動を取っているのが【道化】である。
出来ない様に見せて、実は出来る。
それが道化冥利に尽きるという話である。
この【人格】はとても手先が器用なのである。
感覚的に手探りで、隠れた【引き出し】に合いそうな【鍵】を針金を使って創り出す事など、ちょちょいのちょいなのである。
【仁愛】は、
「見事ですね。
どうやった・・・と聞くのは野暮ですね。
手品は解らない事で楽しめるもの。
種は聞かないで起きましょう」
と言った。
これで引き出しの鍵を開ける問題はクリアした。
後は鍵を開けて引き出しを引くだけだ。