第十六章26 【覇王杯/オーバーロード・カップ/唯野 芳一チーム】24/【芳一】の第2班の展開(【七番目の怨霊編】)5
【霊古】の案件では【芳一/真性暴獣】の出番はなかった。
では、出番がある案件とはどの様なものが言えるのだろうか?
【豊高 比奈美】は、恐怖に震えていた。
彼女は、特別な美人・・・と言う訳ではない。
だが、彼女と話すと気持ち良いのだ。
何となく、話をしている雰囲気が人の好意を受けやすい人間と言う事になる。
そして、モテる女子というのは、美人だけではない。
どんな美人も三日見れば飽きると言うのは使い古された言葉だが、美人というだけで異性の心をずっとつかみ続ける事は出来ない。
最低でもそれなりに愛嬌というものが必要となる。
【比奈美】はそれが飛び抜けて魅力的に見える女性だった。
だからか、彼女の周りには変な虫がよくつく。
彼女に癒しを求めるのだが、自分勝手であり、彼女を困らせていた。
だが、そんな自分勝手な輩がだんだん少なくなって行く感覚があった。
迷惑な男達が、1人減り、2人減りと数を減らしていくのを肯定的にとらえていた。
それが、恐怖を伴う事であるとも知らずに。
最大30人ほど居た迷惑な男達が10人ほどに減ったとき、それは聞こえて来た。
『君につきまとうゴミ虫共を排除したよ。
後、10人ほど始末したら僕と会ってくれるかい?』
と言う声が聞こえた気がした。
【比奈美】は最初、警戒したが、迷惑なストーカー達に悩まされていた彼女は藁にも縋る思いで、
「会うくらいなら・・・
迷惑な人達が居なくなるの?」
と聞いてみた。
その声は、
『居なくなるよ。
そいつらはみんな僕が食べちゃうから・・・』
と答えた。
【比奈美】はそれを冗談ととらえて、
「食べてくれてるんだ?
ありがとね」
と返した。
その後も1人、また1人とストーカー達の影が消えていったので、彼女はそれを良いことだと思っていた。
だがそれは違っていた。
間違っていた。
ストーカーを食べていた。
ストーカーを始末した。
と言うのは本当の話だったのだ。
声の主はストーカー達を食べる事によって、ストーカー達の邪な気持ちを吸収し、増大させて行った。
最悪なのはストーカー達の抱いていた、【比奈美】への邪な気持ちは声の主の元で生きていると言う事だ。
ただ単に悪意がまとまって増大していただけだった。
何も好転していなかったのだ。




