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潮風の伝言  作者: AIR MILE
7/8

第4話:届かない距離



「海崎…」


医務室のベッドで眠る翔の顔を、雫は静かに見つめていた。


昨日の訓練での事故。


翔は、かすり傷だと言っていたが、実際はもっと酷い怪我をしているのではないか。


そう考えると、雫は不安でたまらなかった。


(海崎…どうして、私を避けるの?)


第3話の最後で、翔は、過去のトラウマを抱えていることを告白した。


しかし、それだけが理由ではないような気がして、雫は納得できなかった。


(もっと、海崎のことを知りたい…)


雫は、翔の過去について調べ始めた。


同期の神宮寺 麗に相談すると、意外な事実が判明した。


「海崎くん…実は、過去の任務で、大切な人を亡くしたことがあるみたい」


麗の言葉に、雫は息を呑んだ。


「そのことが、彼にとって、大きなトラウマになっているみたい」


麗は、そう付け加えた。


(やっぱり…)


雫は、翔が抱える心の傷の深さに、改めて気づかされた。


同時に、翔のことをもっと支えたいという気持ちが強くなった。


翌日、雫は、再び医務室を訪れた。


翔は、ベッドに座り、窓の外を見つめていた。


「海崎…」


雫の声に、翔はゆっくりと振り返った。


「蒼井さん…」


「調子はどう?」


「ああ…だいぶ良くなった」


翔は、そう言いながら、腕に巻かれた包帯を見つめた。


「あの…昨日のことだけど…」


雫は、昨日の訓練での事故について切り出そうとした。


しかし、翔は、それを遮った。


「昨日のことは、もういい。気にするな」


「でも…」


「もう、過去のことなんだ。忘れたい」


翔は、そう言い残し、立ち上がって部屋を出て行った。


雫は、翔の背中を見つめながら、言葉を失った。


(どうすれば、海崎の心の傷を癒せるんだろう…)


その夜、自室でベッドに横になりながら、雫は悩んでいた。


(海崎…私にできることは、何もないのかな…)


そんな時、ふと、あることを思い出した。


(そうだ…手紙を書こう)


雫は、便箋とペンを取り出し、翔への手紙を書き始めた。


(海崎…あなたの過去を知って、ますますあなたのことを好きになったよ)


(辛い過去を抱えているあなたを、私は支えたい)


(もし、私にできることがあれば、何でも言ってね)


雫は、自分の素直な気持ちを、手紙にしたためた。


そして、翌朝、翔の部屋のドアに、そっと手紙を挟んだ。

5話へ続く

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