第2話:初めての任務
「蒼井二士、レーダー照準!」
艦橋に響く艦長の指示。
蒼井 雫は、緊張しながらも、目の前のモニターに集中する。
今日はいずもにとって、初めての本格的な任務。
近海での警戒任務だ。
「目標、距離10、方位270!」
雫は、データを入力し、レーダーを目標に合わせる。
「海崎二士、目標の識別をお願いします」
艦長が、隣に立つ海崎 翔に指示を出す。
「了解しました」
翔は、双眼鏡を手に取り、目標を凝視する。
「目標は、国籍不明の漁船です。現在、接近中です」
翔の報告に、艦長は頷く。
「蒼井二士、引き続きレーダー監視を頼む。海崎二士、臨検の準備を」
「了解しました!」
雫と翔は、それぞれ持ち場に戻り、任務に備える。
緊張が走る艦内。
雫は、モニターに映る漁船の動きを、息を詰めて見守る。
(初めての任務…!しっかりしなきゃ!)
その時、背後から優しい声が聞こえた。
「蒼井さん、落ち着いて。大丈夫ですよ」
翔が、雫の肩に手を置いた。
「海崎…」
「緊張するのは分かります。でも、焦るとミスに繋がります。深呼吸して、一つずつ丁寧に」
翔は、そう言いながら、雫のパソコン画面を指差した。
「ここ、データ入力ミスしてますよ。確認してください」
雫は、翔の言葉にハッと我に返り、画面を見直す。
確かに、入力ミスをしていた。
「ありがとうございます…!」
雫は、翔に頭を下げた。
「気にしないでください。僕たち同期なんですから、助け合いましょう」
翔は、そう言って微笑んだ。
その笑顔に、雫はドキリとした。
(海崎…やっぱり優しい人だな)
その後、臨検を終えた翔が戻ってきた。
「艦長、臨検終了しました。漁船には、特に問題ありませんでした」
「ご苦労。蒼井二士、レーダー監視はどうだ?」
「異常ありません!」
艦長は、二人の働きに満足げに頷いた。
「よし、これより帰港する」
「「了解!」」
任務を終え、安堵の空気が流れる艦内。
雫は、翔に話しかけた。
「海崎、ありがとう。助かったよ」
「どういたしまして。でも、蒼井さんも頑張ってましたよ」
「そうかな…」
「はい。それに、蒼井さんは、僕よりも早くミスに気づきました」
「え?そうだった?」
「はい。僕が双眼鏡で確認している間に、蒼井さんがレーダーで異常に気づいたんです」
「そうだったんだ…全然気づかなかった」
「でも、それが大切なんです。常に周りを観察し、変化に気づくこと。それが、自衛官として大切な資質です」
翔の言葉に、雫はハッとした。
(そうか…海崎は、私のこと、ちゃんと見てくれてるんだ)
その夜、自室でベッドに横になりながら、雫は今日の出来事を思い出していた。
(初めての任務…緊張したけど、海崎のおかげで、何とか乗り越えられた)
翔の優しさ、頼りになる姿、そして、自分のことをちゃんと見てくれていること。
雫の心は、翔への想いでいっぱいになっていた。
(もしかして、私、海崎のこと…)
考えれば考えるほど、胸がドキドキする。
(ダメダメ!今は訓練に集中しなきゃ!)
雫は、慌てて頭を切り替える。
しかし、一度意識してしまうと、どうしても翔のことが気になってしまう。
翌日、訓練場で翔を見つけた雫は、思わず声をかけた。
「海崎!」
「おはようございます、蒼井さん」
翔は、いつものように爽やかな笑顔で答えた。
その笑顔に、雫はまたドキリとした。
(やっぱり、海崎のこと…)
雫は、自分の気持ちに気づき始めていた。
第3話へ続く