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ヒカリの怪獣、倒すべし  作者: Yellow Kicks
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第一章 人工ギフテッド ③

 クラス中の目が人工ギフテッドくんに集中する。もちろん、その中には私も含まれていた。

 人工ギフテッドくんの見た目はある一点を除いていたって普通だった。髪型はセンターパート、細身で紺色の制服を上手く着こなしている。クラスに3人は居そうなかっこいい知的男子。そんな感じだ。ただ一点、髪色が濃い青色なことを除いて。

「なにあれ、かっこよくない?」

 左隣の席の亜季が机を寄せて話しかけてくる。

「そうだけど、なんか変な感じ。アニメに出てきそうっていうか」

「そこがいいんじゃん、わかってないな〜」

 流石は超能力者推しだと感心しながら、私はどこか劣等感に近いものを抱いた。どこにでも居る茶髪ショートヘアの私じゃあ、青髪の人工ギフテッドくんには敵わない。第一印象は完敗だ。

 謎の対抗心が芽生えようとしたちょうどその時、担任かつ歴史の先生が紙の束を重そうに抱え入室してきた。

「あれ?2時間目は数学じゃなかったっけ?」

 亜季が首を傾げる。確かに、本来ならば2時間目は数学の時間だ。「教室でも間違えたのかな?」と私は呟く。

 結果から言うと、その予測は大外れだった。先生は資料の山を教卓にドサっと置くと、白チョークで黒板に文字を書き始めた。それに合わせ、人工ギフテッドくんが教壇の上に行儀よく立つ。よくある、転入生の自己紹介タイムだ。

「え〜、皆さんも既にご存知かもしれませんが、今日からA組に新しい仲間が増えます。じゃ、自己紹介を」

 先生の声が高らかに響く。黒板には『蒼井怪斗』という4文字が縦にならぶ。ご丁寧に『あおいかいと』とルビまで振られている。

「蒼井怪斗です。よろしくお願いします」

 怪斗の声はどこか控えめで、高くも低くもない一般的なものだった。

「蒼井くんは人工ギフテッドだけど、みんなも仲良くするように」

 先生はそう言うと、教卓の上の資料を生徒全員に配り始めた。片面カラー刷りのその紙には、人工ギフテッドとの接し方がイラスト付きで長々と書かれていた。互いの能力を尊重すること、いじめないこと、自分に劣等感を感じないこと。小学生ですら知ってそうなことばかりだ。

 適当に目を通し顔を上げると、先生の指が自分の方を指していた。少しドキッとする。

「蒼井くんの席はあそこ、竹中さんの隣ね」

 ――竹中……自分!?鼓動が更に高ぶる。怪斗は声もなくうんと頷くと、机の間を縫って歩いては私の右隣の席に腰掛けた。

「よ……よろしくね、蒼井くん」

 私は若干震えた声で挨拶をしたが、怪斗は振り向きもしなかった。

 ――無愛想なやつ!私は心の中で唾をペッと吐いた。先生が言葉を続ける。

「それじゃあ、今日は怪獣が東京に上陸した日だし、怪獣と人類の歴史について授業しましょう」

 私の顔が反射的に黒板の方へ向く。気づけば目をキラキラと輝かせている自分が居た。

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