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アリス・ザ・ラビリンス  作者: かい・
6/9

6---赤の女王---

森の中、白馬に跨ったプリスと王子が駆けていた。

時折、襲いかかってくる兵士たちを次々と薙ぎ払いながらどんどん奥へ奥へと進んでいく。

「光が見えた!森を抜けるぞ!」

プリス王子が叫んだ。

眼前、森の裂け目から篝火の様な灯りが見えた。

アリスは直感する。

そこに赤の女王がいるのだと---

「危ない!」

森を抜けた刹那だった。矢の雨が大量に降ってきた。

我々がこちらに向かってることを報告を受けたのか待ち伏せされていたのだ。

その矢の数本が白馬に刺さり、崩れ落ちかけた時、プリスはとっさにアリスを庇う様に抱き上げ、馬から飛び降りた。

慣性には勝てず、抱き抱えられたままコロコロと転がる。

やがて、停止し、プリスを見るといくつもの矢が刺さっていた。

「申し訳ない。僕はここまでの様だ---」

プリスは力無く呟いた。

徐々に淡い光に包まれ、消えていく。

「そんな・・・王子様・・・!」

それ以降は絶句して言葉が出てこなかった。

プリスはアリスの腕の中で淡い光だけ残して消滅した---


「一人やり残した様ね」

声がする。

そこには全身赤のドレスを見にまとった気品のある女性がレイピアを携え、立っていた。

彼女が赤の女王なのだろう。

「どうして・・・どうしてこんなことをするの!?」

アリスは叫んでいた。

「罪のない人々を苦しめ、領地を奪ってあなたは何がしたいの!?」

そんなアリスを見て赤の女王はクスリと笑う。

「世界の全てを赤に染める。それが私の野望であり、この世のルールなのよ」

「そんなの間違ってる!」

アリスは赤の女王の自己中心的な態度に憤怒した。

「赤一色の絵本なんてつまらないに決まっているじゃない!いろんな色があってこそ人と人の物語は輝くのよ!」

アリスは精一杯凄んで見せたが表情からは恐怖の色を読み取れた。

「知らないわね。この世界は私のモノよ!ルールを守れない者には、たっぷりお仕置きをしなきゃね」

レイピアを構え、赤の女王がゆっくり近づいてくる。

その後ろに禍々しい鏡の破片がチラリと見えた

アリスもノートと色鉛筆を取り出した。

しかし、何を書けば・・・

恐怖にうまく頭が回らない。

赤の女王がもう目の前まで来ていた。

何か描かなきゃ・・・何か描かなきゃ・・・

そう、脳が急かすがうまく体に伝わらなかった。

赤の女王がゆっくりレイピアを引き、刺殺の構えをとった。

アリスは思わず目を閉じる。

しかし、一向に貫かれる気配はなかった。

おそるおそる目を開けたアリスの目に飛び込んできたのは真っ白なスーツを身に纏ったあのウサギだった。

なんと、広げた傘でレイピアの刺突を受け止めているようだった。

「やれやれ、情けないですね。落ち着いて周りに集中してみなさい」

ウサギに言われた周りに気を配ってみる。

うぉぉぉ!と猛り狂う声が聞こえてくる。

みると、みんなが--

アリのヘンリーが槍を構え、兵士と奮戦している。

子豚のルルが杖を片手に魔法を詠唱している。狐のジョンが傷ついた動物たちの治療をしている。

「みなさん、あなたの為に戦っているのですよ。それをあなたは何を怯えているのです」

赤の女王がチッと舌打ちをしてバックステップで距離を取った。

そして、今度はちゃんとレイピアを構えた。

ウサギは赤の女王から視線は向けたまま、アリスに一つのフラスコを手渡した。

「これは・・・?」

「おばあさんから預かった追加の薬です。それを飲めばより魔法の力が強まるでしょう」

アリスはそれを一気に飲み干した。

すると全身に力がみなぎるのを感じた。

と、同時に赤の女王が突っ込んでくる。

これでは描いてる暇はない。

しかし、次の瞬間アリスの体から光が溢れ出した。

それが光弾となって赤の女王に飛び掛かる。

「なんだ!この力は!」

流石の赤の女王もこれには困惑しているようだ。

「これが私の新しい魔法・・・?」

アリスが願うと次々と光弾が赤の女王を襲った。

赤の女王がそれをいなし、あるいは交わしていたがそのうちの何発かが赤の女王に直撃する。

ついには赤の女王が片膝をついた。

「あの鏡の破片を割れば・・・」

アリスは意識を集中させると光弾は弧を描き、赤の女王の背後の鏡の破片に直撃し、パリンと音を立てて砕けた。

それに呼応し、赤の女王もその場に倒れ込む。

「これで終わったの・・・?」

アリスはホッと息をついた。

見ると、動物たちも全ての兵士を無力化させたようだった。

アリスの問いかけに答えるようにウサギが言った。

「戦いはこれで終わりです。ですが貴方にはまだやらなければいけないことがあります」

それだけ言い放つとついてこいと言わんばかりにゆっくりとウサギは歩き出した。

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