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転生したら劉備の弟だった  作者: ほうこうおんち
第四章:董卓時代の劉亮
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袁紹と曹操

 洛陽に上った劉亮は、任官の挨拶を終えると、今度は個人的な交際をしている者たちに挨拶に行く。

 劉亮の前世の職業は、人間との関わりが大事であった。

 挨拶回りは欠かしてはならぬものと、魂に刻み込まれている。


「で、本初(袁紹)の所に行くのか。

 俺の所は後回しとは、随分寂しいではないか」

 そう言って曹操が声をかけて来た。

「一体いつから私の事を見ていたんですか?」

「北部尉の時だから、十三年前かな」

「いや、今の話です!

 官舎を出た時からですか?」

「それなら、本当に偶々(たまたま)だよ。

 俺も本初と話そうと思って、向かう途中だったんだ。

 で、俺の所には何時遊びに来るんだ?」

「遊びじゃないですよ。

 でもまあ、美味しい物は最後に取っておくと言いますし、最後でいいでしょうね。

 曹操殿は逃げませんから、後回しにしても問題ない。

 大体、曹操殿も本当は大して順番なんか気にしてないんでしょ」

「ハハハ……。

 まあそうだな。

 誰の後だから気に食わんとか、つまらん見栄だ。

 それにしても『美味しい物は最後に取っておく』か、面白い事を言うな。

 それもそれでアリだな」

 儒学的には序列こそ大事である。

 最後に回されたなら

「自分の事は軽視しているのか!」

 と怒ったりする者も多い。


 謎の納得をした曹操と共に、劉亮は袁紹の邸に向かった。

「横に居る強そうなのが、烏桓の兵か?」

「そうです」

「烏桓の娘を嫁にしたそうだな」

「はい」

「抱かせろ!」

「はいと言うと思ったか!

 なんですか、それは!」

「待て、刀から手を離せ!

 相変わらず董卓から貰った羌族の刀を使っているな。

 威力がありそうだし、俺が死ぬからやめてくれ」

 曹操が劉亮を制するが、口調とは違って大して慌ててはいない。

 そして何悪びれる事無く

「俺は人妻も好きなんだ。

 そして、お前の妻のような大女はまだ抱いた事が無い」

 なんて言って来やがった。

「……私を敵に回す気ですか?」

「いや、やめておく。

 俺は女よりお前さんの方を選ぶよ。

 この話はまたにする」

「……撤回しろよ」

 そんなやり取りをしながら袁紹邸に到着。


「私の事を忘れずにいてくれて有り難いよ、劉叔朗殿。

 叔父上(太傅の袁隗)から挨拶に来るという事は聞いていたし、君を待っていた。

 で……孟徳、お前は何しに来た?」

「どうせ眉間に皺寄せながら不穏な事を考えているんだろうな、って思ってね。

 遊びに来たんだよ。

 気分変えないと良い考えは浮かばんぞ。

 で、叔朗とはさっき偶々会ったから、一緒に来た」

「叔朗殿、孟徳に待ち伏せされたのか?」

「私もそれを疑っているのですが、曹操殿は偶々だと言って譲らなくて」

 はあーっと溜息を吐く袁紹。

 まあ入って話でもしよう、と曹操共々招き入れた。


「今日は珍しい客と……毎度の厚かましい客とが来られた。

 まずは劉亮殿に青州と幽州の話を伺いたい。

 さっき厚かましい方の客から、気分を変えた方が良い考えが出るだろうと言われたんでね。

 ひとまず董卓の事は横に置いて、劉亮殿の話を皆で聞きましょう」

 そうは言われても、劉亮は張純の乱の時はほとんど北方に居た。

 烏桓の話くらいしか出来ない。

 そう言うと一部はガッカリした表情になったが、袁紹がテーマを与えてくれる。

「烏桓族と張純は繋がっていたのだろう?」

「そうです」

「烏桓族は何故、張純のような者と手を組んだのか、そこを教えてくれないか?

 無論見て来た事だけで良い」

 それならば話す事が出来る。

 なにせ劉亮が居たのは、烏桓の大人・丘力居の側だったのだから。


 簡単に言えば、丘力居は漢と対等になろうと思っている。

 それは鮮卑や匈奴、羌族も同じだと丘力居が言っていた。

 更に言えば彼等は、天からの恵みで生きず、農業なんかをして暮らす漢人の方を哀れな民族と見ているのだが、それを言うと余計な敵愾心を植え付けてしまうから言わない。


「そんな塞外の民が臣従していたのは、これまでの漢が強かったからです。

 黄巾の乱で漢弱しと見たから、襲い掛かって来たのです。

 劉虞様が幽州に赴き、彼等の希望を聞くと、すぐに帰順しました。

 張純については、彼等にしたら道具のような扱いです。

 要は誰でも良かったのです」

 そう言うと、誰かが

「羌族は董卓に従っているが、それも誰でも良い、なのか?」

 と質問して来た。

 恐らく違う。

「自分は羌族と話した事がありませんから、確かな事は言えません。

 ですが臣従する相手は誰でも良い訳ではないです。

 組む相手は誰でも良いですが、仕えるなら話が違います。

 彼等も人を見ています。

 幽州の劉虞様、涼州の董相国、相手を見て従っているように思います」

「要は強い方につくってだけだろ、浅ましい」

(お前らもなー)

 内心ツッコムが、毎度の事口には出さない。


 話を黙って聞いていた袁紹は

「劉亮殿が言われた事は興味深い。

 董卓の人柄を見て羌族が従っているのなら、あの男は遥かに手強い事になる。

 羌族が簡単に裏切ったり逃げ去ったりする事はなく、不利な状況でも董卓に従って苛烈に戦う事も厭わないだろう」

 そう話すと、「毎度の厚かましい客」こと曹操が口を開けて大笑いした。

 不快そうに見る一同に対し、曹操は

「まるで董卓を武力で打倒したいような口ぶりではないか、本初。

 勇ましい事だな」

 と核心を衝いた。

「孟徳、ハッキリと口に出すな。

 誰が聞いているか分からんだろう」

 今更小声で注意する袁紹に、曹操は笑いを止めない。

「宦官を皆殺しにした経験がまだ忘れられないか?

 宦官誅殺如きは、少数の手練れによる暗殺で十分だった。

 ああやって事を大袈裟にしたから、董卓を呼び寄せてしまったんじゃないか。

 失敗は反省しないとダメだぞ」

「そうは言うがな、孟徳。

 奴は先帝陛下を廃した逆臣だ。

 このまま放置したら、更なる暴政を敷くかもしれぬぞ」

「本初、君は今の主上に反対なのか?」

「そうは言っていない」

「今の主上を認めるなら、董卓を逆臣等とは呼べない。

 そして今の所、奴の専横は宮廷の外には出ていない。

 気に入らん廷臣を追放しているが、その結果として君たちが願っていた清流派が続々と復帰している。

 何が気に入らん?」

「孟徳、お前はあの逆臣を認めるのか?」

「質問を質問で返すなよ。

 まあ、今の言葉で何となく分かった。

 お前は、董卓というとんでもない男ではなく、自分が同じ事をしたかったんだな。

 要は『やってる事は認めるが、やってる奴が気に食わん』って事だな」

「違う!

 まあお前がそう思うなら、それが答えで良い。

 では私の質問にも答えろ。

 お前は董卓を認めるのか?」

「俺はお前とは反対だな。

『誰がやろうが構わない、何をやっているかが問題だ』って事だ。

 今の所、董卓のやってる事は、多少問題があるが大筋間違っていない」

「多少じゃないだろ!

 先帝を廃したのだぞ、丁原殿を殺したのだぞ!」

「丁原を殺したのは呂布だな。

 まあそんな事は置いて、先帝を廃した以外に天下を害する事はしたか?」

「いや……」

「多くの士大夫が董卓に従っている。

 さっきの叔朗の話ではないが、彼等も人を見ている。

 怖くて従っているばかりではないぞ。

 現にここに、怖くて従うというのを拒否した者たちが集っているじゃないか」

 サロンは静まり返る。

「まあ俺は、早晩ボロを出すとは思っている。

 だが今はまだ出ていない。

 だから、今の所は董卓を認めているのさ。

 将来は分からん。

 ボロを出して害悪となるなら、俺が討つ。

 これで満足かい」

「ああ、全面的に董卓に従う気は無いって事を確認出来た。

 それならば孟徳は引き続き私の友だ」

「寂しい事言うなよ。

 敵味方に分かれても、友は友じゃないか。

 で、その友から袁本初に忠告したい」

「なんだ?」

「もしも董卓相手に戦いを挑むのなら、いつまでも洛陽に居るべきではない。

 さっさとどこかに拠点を作り、挙兵の準備をすべきだ」

「勝手に挙兵すると決めるな」

「いや、挙兵の準備は必要だ。

 董卓の力の根源は、この洛陽における圧倒的な兵力にある。

 洛陽に居たって、それは覆せないぞ。

 宦官誅殺の時のように、宮中に殴り込んでも返り討ちに遭うだけだ。

 更にこちらが一枚岩ではない。

 お前の一族の多くは董卓派だ。

 お前は真っ先に一族によって始末されるだろう。

 だからお前が朝廷における力を取り戻すには、洛陽に居るのではダメだ。

 董卓と同じ事をすべきだ。

 つまり、地方に居て兵を養い、時機を待つ」

「一理ある」

「だから今日は、送別の宴の前祝いの、更に前祝いの、支度の為の景気づけで遊びに来たのだよ」

「孟徳!!

 だから勝手に私が洛陽を退去すると決めつけるな!!」

「いや、早く出た方が良い。

 董卓がまだ正道に踏み止まっている間に、な。

 今ならお前は、袁氏に対する董卓の気遣いから、その地の太守なり相なりに追認される。

 董卓と袁氏の関係が拗れたら、逃げた瞬間に捕まってそのまま殺されるだろう。

 董卓が狂えば、洛陽に残る者は皆危うくなろう」


 サロンの皆は息を飲んだ。

 確かに皇帝を廃位するような男だ。

 今はまともな政治をしていても、すぐに暴虐な面を覗かせるかもしれない。

 その時、洛陽に居ると捕縛の対象になるだろう。


「孟徳、本当に董卓は危険なんだな?

 お前は董卓がボロを出すと思っているんだな」

「ああ」

「根拠はあるのか?」

 袁紹の矢継ぎ早の問いに、曹操はニカっと笑って

「無い!」

 と答えて、またもやサロンの面々をズッコケさせた。

 そのまま笑いながら

「強いて言うなら、俺の直感だな。

 奴がまともなまま終わる可能性もあるんだ。

 ある事以外は、まともな廷臣、清流派に囲まれているから、その補佐を得れば真っ当な政治を続けられる」

 それでは結局、董卓は暴走しないだろう、と周囲は呆れている。

 今までやり取りを黙って聞いていた劉亮は、「ある事以外」というものに心当たりがあった。


「曹操殿、その『ある事』というのは、通貨政策ですか?」

 曹操がニヤリと笑う。

「やはりお前さんは面白い。

 いや、前に俺が言った事でもあったな。

 そうだ、銭の問題だ。

 中央に集まり過ぎ、地方では枯渇している銭。

 これをどう再配分するか。

 儒学コテコテの清流派には分からんだろうなあ。

 むしろ宦官たちの方が、銭の使い道を知っていたかもしれない。

 使う事をしっかり指示すれば、あいつらの方が上手く使っただろうな。

 にしても、そこに気づくとはお前さん、他の連中よりも賢いぞ。

 董卓の属僚にしておくのが惜しい、いつか俺の下に来い!」

 そう言って曹操は劉亮の肩を叩いて賞賛する。


(褒められたけど、俺は単に答えを知っていただけだしなあ)

 カンニングなのに賞賛させたような心地悪さを味わう劉亮であった。

おまけ:

実の所、主人公よりも曹操の方が書いてて楽しい。

主人公、歴史をどこまでいじって良いのか結論出せずに愚図愚図してますが(そういうキャラですんで)、曹操の方はそういう躊躇が無いので、こっちの方が未来知識与えたら発展させまくりそうです。

寧ろ、未来知識を与えた曹操こそ「なろう系主人公」化するのでは、と。

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― 新着の感想 ―
[一言] 次回作で 曹操に転生したを期待してます 未来知識ある曹操 未来知識ある信長と同じく絶対に止まらないだろwww
[一言] 曹操本人が曹操に逆行転生なら、なろう主人公足り得るとは思う。 けど、曹操に劣る人だと曹操がやれたことが出来ないで詰む可能性もあるのでは? 理由:なろう転生主人公(ハイファンタジー)の大半がコ…
[一言] (吉報)曹操、エッチ大好き♡ 一見平穏だけれど一つでも地雷を踏み抜いたら一気に洛陽が地獄と化す感が凄い 未来知識無しにこの時期の洛陽の政治闘争を生き残るのは困難でしょう
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