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あとがきとおまけ:転生した世界の「三国志演義」

※この「あとがき」は、もしも続編を書く事になった場合、しれっと無かった事にします。

これにて一旦終了します。

再会の予定は……商業化が決まって続編まで書いて「完」と欲しいとかなったら、にします。

一応コンテストとかには出しますが……まあ無理でしょうね。

最終章は相当ネタに走って、終わらせにかかった部分があるので、前書きに書いた通り何かあったらこの章はガツっと書き直します。




さて、どうしてこういう終わりにしたか。

「三国志」と言いつつ、三国時代になってないだろ、と自分でも思ってます。

構想は一去年頃に既に有って、

「もしも劉備が蜀に行かず、袁紹の領域を丸々乗っ取っていたら?」

というプロットで話を進めていました。

要は、三国志の350年程後の南北朝時代後期「北斉・北周・陳」の三国時代、もしくはそのちょっと前の「西魏・東魏・梁」の三国時代を三国志の人間使ってやったらどうなるか、ってものでした。

そこで、劉備が北に残るのなら協力者は誰?

劉備の親族は?

となって、ネットで調べていたら劉亮という存在を見つけた訳です。

そして、北に残るのなら遊牧民との関係強化しないと、軍事力で曹操に負けるな、と遊牧民関係の書籍を読む。

劉備の親族って、実際の所どうかは分からないけど、このままじゃ誰も役に立たない。

だから転生者にして、死ぬ運命を変えつつ、ちょっとでも有能にしておかないと意味が無い。

ただ所謂チート転生者(ステータスとかがウィンドウで見えたり、万能過ぎたり)を自分は書けないから、現代なら有り得る能力でも過去ならチートっていうのに落とし込んで……と話を作っていきました。

そして、河北を乗っ取り、江南が一つに纏まろうとしている辺りまで書きました。


劉亮がやっと(ようやく)色々吹っ切って、意識の底までこの世界の人間になったとなれば、

「歴史マニアの未来人が過去に転生して、歴史改編の魅力と恐怖を同時に感じ、

 大好きな歴史上の人物や発生する事件に振り回されながらフラフラ生きる」

という設定(プロット)は終了した事になります。

中途半端な覚悟と未来知識を当時の人間に上手く利用され

「どうしてこうなった?」とか

「なんでだぁぁ」とか

「勘弁してよ……」てな描写が無くなってしまいます。

この後は、違った形で天下三分した中国で、劉亮が未来知識を使って容赦なく歴史に関わる事になります。

浮ついた部分が無くなれば、結構容赦なくなるでしょう。

もしもこの先で司馬懿(結論として転生者ではない)が敵なら、全力で持てる知識使って対抗するでしょうし。

となると、自分的には逆に「そんな魔王劉亮に抗う」方を主役にしたくなりまして。

そういうのを書くのなら、世界線は一緒で別作品にした方が良くないですか?

ラスボス劉亮を倒しにいく物語。

ありゃ、袁尚が主人公になってしまう(書きたくねえ……)。


……というのが、この時点で話を一回終わらせた理由の一つです。




他の理由ですが、裏テーマとして「成長と変化」「大器とは」というのを扱いました。

霊帝はフォローしようが無い暗君だったのか?

董卓は最初から暴虐だったのか?

袁紹は優柔不断なのに何であんな大勢力になれたのか?

というのを書きたくて、「状況が彼等をそう変化させた」とした訳です。

そうなると「大器」とは?

人の意見を容れつつも、自分は変わらず、人を活かし続けられる存在。

これを書いていたら、もう曹操・劉備はこれから先も余り変わりそうもないので、書き切った感じになりました。

劉備は何が器に入っても変わらないし、曹操は器に入れるのではなく、目をつけた人の首に縄つけて全速前進するタイプだし。

会った事がない呂布、袁術、孫権の人格描写は意図的に省きましたが、彼等にも彼等の行動原理と成長や変化があります。


そんな中で劉亮がさっぱり変化しなかったのも、狙いの一つではありました。

オッサンになるまで歴史マニアの日本人として生きて来たら、もうそこから変わらんだろ。

人間、幾つになっても変化出来る人もいますが、基本三十代までで変化が終わってしまって、子育てとかし終わった五十代とかだと、変わりたくても変われないんじゃないかな、と。

主人公の前世の年齢設定の理由がそこで、もっと若ければさっさと踏ん切りついて、転生後の世界の住人に変われたでしょう。

環境に合わせる事は出来ても、自分は自分のまま。

でも、司馬懿のあの言葉でやっと覚醒。

きっかけを得て、やっと変われた。

劉亮の「中の人」ってのは、どこか自分の居る時代を他人事として見ている「自分は本当は未来の日本人だ」という深層心理でして、これが有った間は精神上の異邦人のままでした。

ある意味「中の人」が足を引っ張っていたので、覚悟が決まった後の回からは「中の人」という表記を出さなくしました。


劉亮叔朗、というかその「中の人」こと金刀卯二郎の優柔不断な性格上のモデルは、結局作者自身ですかねえ。

能力や実績の部分は違います。

あんなに語学力は無いし(サツマン語とかもいい加減だし)、書類とか書きたくない人だし、足りない物は買って来るから自分で作ったりしないし、劉亮みたいなチートじゃないです。

自分は社畜でもなく、むしろ仕事ブッチして小説書いてるようなダメ人間なので責任感無し。

歴史マニアで、例えば曹操とかに憧れて、超えるだけの能力があったとしても絶対に超えたくない、カンニングで認められるのは失礼……って部分が投影した部分です。


(ただし自分は、さっさと他の世界の住人になって、世界をしっちゃかめっちゃかにしても気にしないタイプ。

 以前の作品でも書いたのですが、生きるには突っ張り続ける、歴史の揺り戻しなんて有るか分からないけど、絶えずチェストし続けないと呑まれてしまう、って思考があるので)


「中の人」の能力的な部分は、2ちゃんまとめサイトとかで出て来た「伝説の日本人」とか「凄い先輩」って人のキメラ合成。

なお、よく「作者以上のキャラを書く事は出来ない」と言いますが、そこは歴史上の人物をモチーフにしたので、劉亮はともかく、曹操は「史料通りに書けば」作者を超えていると思いました。


劉亮の経歴部分のモデルは、五代十国時代に五朝八姓十一君に仕えた宰相・馮道。

劉虞→董卓→袁紹(名目上は主君は劉備)→劉備(袁家乗っ取り)→曹操と変わって来ているので。

幽閉されたり、左遷されたり、遊牧民の長に気に入られたり、毀誉褒貶が激しいって部分は、そのままですね。

正史が書かれるなら劉亮も

「歴史の発展に寄与した面は認めるが、人間性は褒められない」

という評になりそうです。

もしかしたら、馮道単体で転生チート無しで作品書けるかもしれませんな。




ついでに「後漢時代の官吏の面倒臭さ」も、盧植とかその辺を通じて書きました。

「実物よりも、名声や悪名がものをいう」社会。

硬直した儒学とか、正史関羽から想像した面倒臭さとか。

それぞれに行動原理があり、それに沿って動くから全体ではカオスになる群雄たち。

そういうのがある程度収束し、僅か三勢力+αになってしまいました。

こういうカオスを楽しく描く時代は終わり。

この先は人間描写よりも、合戦や謀略、駆け引き重視になりそうだったので、一旦切った訳です。

こういう状態に設定した上で、ゲームの「三国志」をリプレイして書くような感じになりそうですし。


ゲームの「三国志」とかでも分かりますが、端っこを抑えて安定させてしまったら、後は徹底的に強くする為の内政フェーズと、強化された戦力で国境からじわじわ押していく展開が続いて、つまらなくなりそうです。

だから「弱小の劉備が袁紹の領域奪うまで」が楽しかったかもしれません。

ここからの先の展開を書く場合、劉亮固定目線にせず、孫権の方のキャラ、曹操もしくは劉備の方のキャラ、更には袁尚視点でも書く群像劇になり、小説としてはやはり別建てが良い。

以前の自作「1940アメリカ消滅」のようにある回を分岐点にして……てのはもうやらない。

もうここが句読点打つ良い場所だったかも。


そういや最後の北方での戦いは、既存のゲームでは表現できない部分ですね。

劉亮を遊牧民統一国家の大単于として、チンギス・ハーンの先取り……とかやめておきます。

(ただ何となく、劉備は烏桓や鮮卑の方も合同して、南宋と対峙した金みたいな勢力圏になるんじゃないかな(ボソ))




劉亮以外の個別の人物設定。


劉備は行動深掘りすると、かなり危なっかしい事繰り返すから「平時のポンコツ」にしました。

劉亮も初期は劉備しか側で見てないので「劉備、凄え!」になってますが、段々他の群雄に近侍するにつけ「もう少しこうしてくれよ」ってのを持つようになりました。

「演義」だと親族無し、地盤無し、宗族って血縁が微妙にあるだけの庶民が、逆境の中でゼロから国を作り、朝廷に忠誠を誓った形だったので主人公になりましたが、この作中の親族も地盤も経済も揃った群雄が順調にいったら主人公にはなれないでしょうね。

……絶対、順調にいってる名士とかって好かれませんから。


関羽は「正史」の表記そのままで。

どこかで「荊州を守った関羽は、劉備の部下よりも対等の同盟者に近く、だから好き勝手やった結果、呉との外交を破綻させた」ってのを見たので、それを使いました。


張飛は第一章で書いてた、書道や美人画が得意って線から。

「正史」には酒乱とは書いてないし、武廟六十四将に選出されるくらいなので兵法も学んだ人にしました。

なお、作中ではまだ成長途中です。

史実だと漢中戦の辺りで完成した感じですので。


曹操は……ぶっちゃけ「蒼天航路」の曹操から電波具合を抜いた感じですかね。

あの作品の曹操は、読んでてよく意味が分からん事も言ってましたし。

出したのは少ないですが、単に劉亮を面白がっている、可愛がっているだけではなく、裏切ったなと判断したら殺そうとする冷酷さも持っています。


袁紹ですが、以前中国で放送されたテレビドラマ「三国志」の官渡の戦いの回で、戦う直前に袁紹と曹操が巨大な馬車に一緒に乗り、サシで飲みながら昔語りしていたのを見まして(その時も曹操がおちょくっていた)、それで曹操との関係性をああしました。

あとは、若い時は短気で果断なのに、官渡の頃の優柔不断さはどういう事だ? という所から拡大解釈しました。


董卓は、儒学的には悪人でも実は民にそれ程迷惑かけてないんじゃないか? と思った事であのキャラになりました。

そうしたら、むしろ死んだ後に劉亮に影響を与えるキャラになり……。


こういう転生もので、第二の転生者とか、ぽっと出の特殊能力持ちの強キャラとか嫌われるのは知ってます。

ただ、「正史」でも「演義」でも司馬懿自体がそういうキャラ、気づいたら居た強キャラなので、その通りに使いました。

最終章になっていきなり出て来た「未来知識を持っている?」(かどうかは不明です)のは、ある意味司馬懿の描き方としては忠実かも。

ヒキニート設定はお遊びです。


多分色々文句がありそうな趙雲の扱い。

あれは最初からそうするつもりでした。

何かするなら、必ず反作用がある。

この物語のラスボスは人ではなく、何かを成したら出て来る反動・反作用・反感という概念。

その具現者として取って置いたキャラです。

あとは、某カ〇ーユの台詞じゃないですが、基本主君とか権力者とかの脇で中途半端に何かやらかし、自分はさっさと引き上げてしまう劉亮を徹底的に否定する役回り。

ネームドの中で色々探したら、彼に行き着いたまでです。

(実は、面倒臭くて気が合わなそうな関羽が劉亮と敵対し、旧価値観全てを糾合したラスボスになる設定も考えました、没にしましたが)




とりあえずやる気が満ちている間に、一気呵成に30万文字程書き上げました。

誤字脱字が多いのも、一気に書くスタイルのせい。

人物の呼称でツッコミ受けましたが、修正量が膨大になるので改めませんでした。

その後、付け足しを書いたり、表現が上手くない部分を加筆修正したりで、番外編追加したりで、結局48万字にまで膨れ上がってしまいました……。

1話平均3,000字で書いていたのに、毎話1,000文字以上書き足してるって、未完成に近かった訳じゃないか。

「三国志」ってのも詐欺なら(まだそこに達していない)、30万字ってのも詐欺でした、申し訳ございません。


てなわけで約二ヶ月半の集中連載でしたが、ここまでご愛読ありがとうございました。

「おまけ」部分が今回の本編となりますので、とりあえずはそこまでよろしくお願いいたします。

おまけ:

この西域、敦煌には漢を分割して私物化する悪人に追われた者たちが集まっていた。

もうこれより西には行かぬ。

彼らはそう決意を固めていた。

そんな敗北者たちの中で、この男、袁尚は一際漢への忠義の心が篤い。

彼の家は、漢で四代に渡り宰相を輩出した名門。

彼の父、袁紹も幼い皇帝を我が物とし、好き勝手に政治を行う逆臣曹操と戦って、国を元に戻そうとした忠臣であった。

しかし袁紹は志半ばに斃れる。

それは曹操以上の悪人、劉魎(Liu Liang)という者に苦しめられた末の事である。

劉狼はあろう事か、烏桓鮮卑匈奴羌族契丹柔然といった蛮族を引き連れ、袁家の領土を荒らし尽くしたのだ。

そして袁尚の兄二人を操り、挙句に家を乗っ取る。


「あの奸佞邪智の輩を許す訳には行かぬ」

そう劉狼に対して闘志を燃やす偉丈夫、この者の名を常山の趙子龍という。

趙子龍は元々、袁尚の父とは敵対する公孫瓚に仕えていた。

公孫瓚は常々、蛮族に気を許すなと語り、子龍もその意志を継いでいた。

だが、あの劉魎が全てをぶち壊す。

彼の悪人は、公孫瓚と席を並べて兵法を学んでいた。

学友を裏切り、公孫瓚を背後から討って幽州を奪った。

この悪人に比べれば、袁紹とは正々堂々の対決であり、そこに恩讐は存在しない。


袁尚と趙子龍、かつての敵同士は共に悪党どもと戦うべく手を取り合う。

そしてもう一人豪傑が。

獅子面の兜を被る美男子、人呼んで「錦馬超」。

かの漢の名臣馬援の末裔である。

馬一族は、朝廷を蔑ろにする悪宰相曹操に対し、正々堂々の戦いを挑んだ。

だが結果は悲しいものである。

曹操は狡猾にも、父の友である韓遂を誑かした。

欲に目が眩んだ韓遂によって父馬騰は殺されてしまう。

「父の仇は一人韓遂のみに非ず。

 曹操こそ真の仇なり」


家を奪われた貴公子、主君を殺された豪傑、父を失った猛将はこの敦煌の地で、運命を共にせんと誓い合った。

「我ら産まれた日は違えども、死す時は同じ日、同じ時を望む」


黄河の北を支配する劉魎の兄の劉備、黄河の南を支配する曹操という強大な敵。

そして長江の南には、何を考えているのか分からない、不気味な孫権。

敦煌三兄弟は百八人の壮士と共に、この三国に対して「尽忠報国の志」を持って戦いを挑むのであった。



次回「左慈登場」




という貴種流離譚で、架空歴史で、武俠要素があり、仙術大戦的な「演義」が後世作られましたとさ。

(おしまい)

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― 新着の感想 ―
4ヶ月ぶり3度目の読了。 次は晋最後の名将、中山靖王劉勝の子孫劉琨なんてどうでしょう? 若い頃のニート生活のつけでラスボス劉淵が荒らし回る并州にとばされ、 ドラえもん的存在の鮮卑拓跋猗盧となんとかかん…
すごく面白かったです 続きがあったら是非読みたいものです
[良い点] 完結おつかれさまでした。 感想を書くのがとても遅くなってしまいましたが、毎日の更新を楽しませていただいていました。 好きな人物は、劉亮、曹操、董卓、袁煕でした。
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