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転生したら劉備の弟だった  作者: ほうこうおんち
番外編:青州牧劉叔朗の日々
101/112

礼楽なんざ知った事か!

番外編です。

本編より1話あたりの文字数は少なくなります。

転生ものなら恒例の、未来知識を使って何やら作るシリーズです。

本編でちょいちょい登場した物の開発秘話になります。

 時間を飛ばす。

 袁紹・劉備連合と曹操の戦いはグダグダな中途停戦となってしまった。

 その元凶とされる劉亮は

「俺は無実だぁぁぁ!」

 と人が居ない場所で叫んでいる。

 実際、彼の仕掛けた事ではないが、彼のせいではある。


 係争地の一つ、徐州は西側は曹操領、東側は劉備領と分割されている。

 徐州は悲惨だ。

 僅か七年の間で陶謙、劉備、呂布、曹操、劉備と領主が変わった後に東西分割となった。

 その間に、曹操の侵攻、袁術の侵攻、呂布の籠城戦、劉備と曹仁の戦いと荒らされ続けた。

 この荒れた徐州復興に、青州牧のままで劉亮が赴任して来た。

 下邳城には関羽が居て、東徐州牧となっているが、彼に内政は出来ない。

 そこで青州から劉亮と陳羣が来て、東徐州別駕(副知事)の糜竺や典農校尉の陳登と協調して行政を行う。

 長江と接する東徐州に来た事で、劉亮は対岸の呉の孫権とも外交を行う事になった。




「それで、この娘たちは一体?」

 陳羣は、孫権から贈られて来た女性たちを眺めていた。

 劉亮の妻・白凰姫は異民族で、しかも大柄でいかつい。

 漢人の感覚では醜女である。

 だが、劉亮はこの妻を愛していた。

 その情報を中途半端に仕入れた孫権の幕僚たちは

「醜女を妻にしているのだから、美女を贈ろう。

 妻が異民族なんだし、こちらが贈る女も百越族にしよう」

 となってしまった。

「で、この四人なんですか?」

「そうみたいです」

「妾になさるので?」

「いやいや、私は妻一人で十分だよ」

「州牧殿の奥方に関しては……確かに十分ですね」

 儒学の基本は「孝」にあり、それには先祖代々の血筋を絶やさないというのがある。

 だから子をなるべく多く残す事が先祖への「孝」なのだが、白凰姫の場合は多産で、しかもこの年三つ子まで産んだのだ。

 烏桓の価値観的に「健康な子を沢山産める」のは最高の女性である。

 身体が大きい白凰姫は安産型。

 それでも三つ子は流石に未熟児だったようだ。

 未熟児は成長せずに死ぬ可能性が高かったのだが、そこは未来知識を持つ劉亮の子である事が幸運する。

 大した医療知識がある訳ではないが、それでも水や栄養、疾病対策に気を使っていれば危険な時期を脱し、次第に普通の乳児くらいに身体が大きくなっていく。

 以降も白凰姫や周囲は心配し、蒸留水を使って洗濯した衣装を着せ、食事も未来知識に基づく栄養管理をしっかりする等、上の子たちとは違う過保護な育児となっていた。


……という育児に気を使っている事と、わざわざまだ隣に敵が居る地に妻子を呼ぶ意味が無かった事で、劉亮は単身赴任をしている。

 白凰姫の場合、劉亮の軍事面での補佐役だから、来ても足手纏いにはならないのだが、それでも今は青州で育児に専念していた。

 そして白凰姫は後漢期の女性、しかも単なる女性なら男性の持ち物とされる遊牧民出身だけあり、単身赴任の夫に対し

「第二夫人、第三夫人を迎えて下さい」

 と言って来ている。

 愛情が無いわけではなく、寧ろ愛情深い方なのだが、こういう事を平気で言えるのは価値観の違いであろう。

 それでも劉亮は妻は一人だけとし、更に

「見た目だけの女は見て楽しめば良く、妻は自分に合った女性が最良」

 とか言っている為、周囲からは曲解されて

「州牧様はブ〇専」

 とか陰口を叩かれていた。


 だが、そこまでは孫権も情報収集した訳ではなく、今回は南方系美女四人を贈って来た。

 なお劉亮は、前世の反省もあって美人だからと言って溺愛する事はなく、ちょっと苦手になっているだけで、毛嫌いしている訳ではない。

 それと、細い腰回り、白く透き通った肌、大きな目、そして小さな足が美人の条件である後漢時代において、目は大きいが色黒で、足腰が丈夫そうなこの娘たちは「北方では」不美人の部類である。

 南方の趣味は違うかもしれない。

 また美人の条件の一つ「黒く艶やかな髪」に対し、天然パーマ気味なのも気になるかもしれない。

 顔つきが美人なのは確かだ。


(もしかして、ダンスグループとかいけるんじゃね?)

 一回劉亮の中の人がそう思ってしまったら、もういけない。

 そういう方にプロデュースしていく。

 時間がある時に、歌妓としてレッスンさせる。


 なお、こういうのは半分以上は趣味だが、公的に不要な事でも無い。

 儒学には礼楽というのがある。

 音楽も儒学的に重要なものとされる。

 客を出迎える際に、調和の取れた音を奏でて心地良くさせるのが礼法であった。

 その音曲に合わせて歌妓が舞う。

 だから客が来て、振る舞いをする必要がある身分の者は、音楽や舞もそれなりのものを用意しておく必要があった。

 なお余談だが、前漢高祖の臣であった陸賈という男は、引退後五人の息子に財産を分け与え、年に二、三度訪れるからもてなせと言っていたのだが、その訪問時は楽団を引き連れて音楽を奏でながら行ったという。

 その仰々しさを隠れ蓑に、高祖死後に専横した呂氏打倒の密会を仲介していたのだが。


 そうした音楽について、劉亮はこれまで無頓着であった。

 孔融等に紹介して貰った楽団を持ってはいたが、雅楽は彼の好みではない。

 そこに良い素材がやって来た。

 家族を青州に置いて来た為、プライベートな時間を趣味に割ける。

 南方四人娘に対し、思いっ切り自分が前世で見て来た音楽とダンスを押し付けたのだ。

 まあ、南方娘たちも漢風の間延びした音楽やゆったりした舞よりも、16ビートで激しく跳び回る「新感覚音楽」の方が楽しいようだった。

 まあ田植えの際に神に捧げる舞とか、収穫祭とかの踊りは賑々しいものであるのだし。

 次第に劉亮は、鬼プロデューサー化するのだが、四人娘たちもそれに着いて来た。

 そうして仕上がった四人娘に

「スピ……じゃなくて、神速という集団(ユニット)名にする」

 と告げ、早速孫権からの使者に対して披露した。


「これは……」

 と孫権陣営の中では新しい物好きで、派手好みな魯粛が息を飲む。

 自分の知っている物とは違い過ぎて、評価しづらいし無条件で受け容れている訳ではないが、それでもどこか心に引っ掛かったようだ。

 一方、価値観が古い諸葛瑾は、何とも言えない表情をしている。

 このユニットは、劉亮も披露する相手を選んでいる。

 袁紹や劉表からの使者や、面会希望の学者に対してはきちんとした礼楽を執り行う。

 しかし劉表との差別化もあって贈り主の呉の使者とか、訪ねて来た烏桓・鮮卑の者たち、商人たちといった儒に気を使う必要が無い相手とは、ダンサブルな激しい音楽を楽しむ事にしている。


 やがて劉亮の新しい音楽を伝え聞いた烏桓族単于の蹋頓は

「うちからも、馬や羊の世話をさせたら役立たずな女を贈るから、歌でも歌えるように仕込んでくれ」

 と、基本は拉致した漢族の女性なのだが、そういうのを送りつけて来た。

「徐州は音楽スタジオではないのだが……」

 と、調子に乗ってプロデューサー気取りをした事を後悔するのだが、そこはきっちりレッスンをつけてみる。

 やがて新ユニット蒲公英を結成する事になる。


 なお劉亮の音楽事業だが、

「曹操には決してバラさないように」

 と周囲に釘を刺していた。

 曹操が知れば、また何を言って来るか分かったものではない。

(ややこしい今の時期だけでも曹操の介入を受けたくない)

 曹操をよく知る劉亮にしたら、いずれバレるのは分かっているのだが、一段落着くまでは時間を稼ぎたかったのである。


 だが劉亮はまだ甘い。

 曹操は間者を使って、既に劉亮式新感覚音楽(ポップミュージック)の情報を入手していたのである。

 和議が成ったとはいえ、まだ劉備陣営とは緊張状態だから手控えていただけで、既に

「音楽の練習場所を作れ。

 激しい舞のようだから、特に床をしっかり作れ。

 あと、そんな大きい柱はダメだ。

 死角になってしまう。

 いや、待てよ。

 死角になる席の者は安くしようか。

 死角狙いの『柱の会』なんてのも面白いかもな。

 太学の学生は学割料金」

 そうノリノリで、劉亮式音楽を取り入れる準備を進めていたのであった。

おまけ:

賈詡「殿に紹介したい者がおります。

 この者、姓を(しゅう)、字を元康(げんこう)と申し、音楽関連の一切を担当したいと申しております」

曹操「……知ってはいる。

 音楽よりも、女性に手を握らせる事で儲けている方でな」

賈詡「されど、それもまた才」

曹操「む!」


曹操がこの者を雇ったかは記録に残っていない。



もう一個曹操ネタ。

「世説新語」から。

曹操の歌手集団プロダクションに、抜群に歌が上手い女性が居たが、いわゆる塩対応であった。

殺そうと思ったが、その歌の才能は惜しんでいた。

そこで曹操は、女性百人をオーディションで集め、見所がある女性を自ら特訓レッスン

彼女を代わりとなる完璧で究極の歌妓アイドルに育てあげると、塩対応のメンバーには

「今までお疲れ〜、君卒業ね」

とこの世からも卒業させたのであった。


(原文:魏武有一妓、聲最清高、而情性酷惡。

 欲殺則愛才、欲置則不堪。

 於是選百人一時俱教。

 少時、果有一人聲及之、便殺惡性者)


……曹操は創作しなくても、古典の中にネタになる逸話が転がってるんだよなぁ。




という訳で、本編でチラチラ使ったネタの回収としての番外編を終わります。

明日から(暫定)最終章に入ります。

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― 新着の感想 ―
[一言] え…最終章…? もっとこのとっくに史実とかけ離れた三国志の世界に浸っていたいのですが…
[良い点] 秋元康にフイタwww 確かにそう切れば中国人に見えますね
[良い点] いつも面白いです。 [気になる点] どこまで史実なのかわからなくなってくる曹操の多才っぷりがいい目眩ましになってあったかもしれない感が増すのがいいですね。
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