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転生したら劉備の弟だった  作者: ほうこうおんち
番外編:青州牧劉叔朗の日々
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劉亮には難しい事

番外編です。

本編より1話あたりの文字数は少なくなります。

転生ものなら恒例の、未来知識を使って何やら作るシリーズです。

本編でちょいちょい登場した物の開発秘話になります。

 劉亮、ひいてはその前世の金刀卯二郎は全くもって全能ではない。

 彼の中には、前世の記憶があり、それがこの時代においてアドバンテージになってはいる。

 しかし、そのままでは使えないのがほとんどだ。

 彼は醸造酒を作ったが、それとてこの時代の人間の助けが無いと出来なかった。

 まず彼は酒造そのものが出来ない。

 一式全てが揃っていれば出来ただろうが、一から全て集めるのは無理がある。

 だからビール醸造には失敗した。

 そこで、出来た酒を蒸留してアルコール度数を高める事と、劣化しにくくする事を考えた。

 そしてやっと成功する。


 後漢時代の職人のレベルは高い。

 この後、三国時代、五胡十六国時代、南北朝時代、隋唐革命期と乱世が相次いだ為、漢全盛期の国力に戻ったのは盛唐期と言われている。

 この間に様々な技術が失伝してしまったのかもしれない。

 まだ技術を維持していた時代である為、青州の金属加工職人たちは劉亮の中の人の曖昧な記憶を元に、汽鍋よりもっと気密性が高く効率が良い金属製の蒸留器を作ってしまった。

 これにより酒の製造が捗るようになった。

……後に劉備が曹操に対し

「ふざけた事言ってると、青州の酒造所破壊するからな!」

 という脅しが出来る程に。


 このように劉亮は、この時代に落とし込むのに成功し、かつ協力者が居る場合に「未来知識」を形にする事が出来ている。

 逆に言えば、劉亮が思う事であっても、この時代に合わせられないものは実現出来ない。

 協力者が居なくても無理だ。

 実情に合っていない場合もそうである。


 劉亮は渤海艦隊構想を練った。

 これはかつて、公孫瓚が青州と幽州の通路を遮断して劉亮を幽州に封じ込めた事が発端だ。

 陸路の冀州渤海郡は袁紹の領土であり、かつ公孫瓚との戦場であった。

 故に、陸路が使えない場合に海路を使おうと考えたのである。

 構想自体は、聞かれたら理解出来るものであるが、実現は無理。

 まず船が造れない。

 当時、漢帝国は海の彼方と交易する必要が無かった。

 大型の商船なんかが存在しない。

 漢における水上交易とは、黄河や長江を使ってのものだった。

 河川用の船と海用の船は違う。

 河川用のを使えない事も無いが、それは長江沿岸の郡県が持っているもの。

 青州にそんな大型船は存在していなかった。


 次に海軍というものが存在していない。

 水軍にしても、河川流域の諸郡や県を任された将が個別に持っているに過ぎない。

 それも、馬の代わりに船を使っているだけの歩兵である。

 大規模に船を操り、水上戦闘を行えるのは荊州や呉くらいなものだろう。

 そして呉では、諸将に分散運用させるのではなく、統一指揮する形になっている。

 青州でもそれをしたかったが、将も兵もノウハウもなかった。


 そして船を造るなら、港湾が必要である。

 海外との交易を必要としていない漢に、大規模な海港は存在していない。

 いくら劉亮の中の人が、青島だの威海衛だのと思い出してみても、そこは寂しい海浜に過ぎない。

 そして使いもしない港に資金投入するのは、皆が反対した。

 莱族は島伝いに遼東半島と交易していたが、彼等も軍に入るのは嫌がった。

 こうして劉亮の海軍・渤海艦隊構想は頓挫してしまう。


 上記「渤海艦隊構想頓挫」でも分かるが、劉亮は軍事にはかなり疎い。

 中の人も、前世で軍隊と関わった事が無い。

 こちらの世界に来て、それなりに陸戦を経験していたが、それで将として有能かというと違う。

 確かに地図を見て地形を読み、彼我の部隊の時間ごとの配置を予想して、有利な態勢で戦えるという「有能な将軍の能力」の一つは持っている。

 そういうのと「将器」「将才」というのは違うのだ。


 劉備は現在、「史実」を上回る兵力を有し、流浪の一介の傭兵隊長ではなく、幽州・青州に地盤を持つ群雄になっている。

 その兵力は、「史実」なら曹操が得る青州兵という黄巾軍崩れを、四割程いただいて出来たものだ。

 劉亮の献策により、曹操がやるより先に黄巾軍崩れの受け入れと屯田政策をしたからだ。

 だが曹操も同じ黄巾軍崩れを、史実の六割強ではあるが持っている。

 元は同じ劉備と曹操の元黄巾軍、それが現在では異なる強さになってしまった。


 曹操軍の青州兵は精強である。

 徐州侵攻を始め、各地で曹操の指揮の元戦い続けたからだ。

 しかし青州にいる屯田兵は弱兵になっている。

 青州牧の劉亮が、生活の安定を第一に、豊かな生活をさせているというのも一つの要因。

 最大の原因は、劉亮が厳しくなかったからである。


 劉亮の前世では、ブラック企業というのが問題になっていた。

 劉亮の中の人こと金刀卯二郎の勤めていた会社も、相当にそれに近い。

 だから上司になった劉亮は、そういう事をさせないよう配慮する。

 自分が嫌だったハラスメントは決してしたくない。

 唯一、遅刻早退欠勤には煩いから、動員を掛ければすぐに集まる。

 故に戦闘となれば、三々五々ダラダラ集まる事はなく、定刻通りに決まった数が集結。

 その様子に、外部勢力は「優秀な兵、士気が高く練度も相当なもの」と錯覚してしまう。

 恐れを為した敵は、戦わずに崩れてしまったりする。

 だから、招集された兵もきっちり戦場に駆け付ければ戦わずに済むと学習してしまい、時間遵守だけはしっかりするようになった。

 しかし実態は

「怪我をしたらすぐ治療の為に交代してしまう」

「満足に食糧が無い場合は、戦わずに退く」

「必ず休憩を取り、無理な行動はしない」

 といった感じで、とても戦う顔をしていない。

 戦わずに勝つ事に慣れて、実戦ともなれば心もと無さ過ぎる。

 これについては、青州の軍を預かる太史慈が猛烈に批判をしていた。

 軍隊は泥水を啜り、敵の血で乾きを癒し、千里の行軍に耐え、目を射抜かれたなら

「父の精、母の血、捨つるべからず」

 と言って目玉を飲み込んで戦うくらいでないと。

 それにはむしろ、パワハラ級の訓練しごきに耐えないとなるまい。

 劉亮は余りに優し過ぎる。

 過保護な兵士等役に立たない。

 それを、当の兵士たちすら疑問視していた。

 彼等は優しい上司より、恐ろしい指揮官を望む。

 生き死にに関わるのだから、ビシバシ厳しく接し、偉そうにふんぞり返って、兵士の不満等耳に入らないくらいの方が、結果的に勝利をもたらし、生きて家族の元に戻してくれるのだ。


 だが、これは屯田兵の話。

 それとは別に、劉徳然が預かる劉家の部曲、太史慈が指揮する青州の正規兵、更に劉亮の私兵たる烏桓兵はしっかりと訓練されている。

 ここでも劉亮は軍隊経験が無いから、妻の白凰姫や執事の樓煩に一切を任せているのだが、烏桓の大人たいじんの娘及び大人直々に選ばれた執事の訓練は中々凄まじい。

 こちらは戦う集団であると共に、戦場の内外で情報収集を行う偵察部隊でもある精鋭部隊だ。

 文句が有るのは、強さと共に野蛮さも維持していて、普段から銭を払わずに酒食をしたり、喧嘩をして市場を破壊したり、酔って辺り構わず放尿したりとやりたい放題な所だ。

 州牧自ら尻拭いし、謝って歩いている。


「どうにかならないのですか?」

 と太史慈が劉亮に言ってみたが、

「指導に従って大人しくなった烏桓兵は高確率で戦死してしまい、補充でやって来た者は北の気風そのままだから、どうにもなりません……」

 と、この分野での無能さを露呈している。

 野性を失った烏桓兵は、やはり弱兵化するのだ。


「必要な時に大軍を動員出来れば、それだけで戦わずして勝てます。

 だから遅刻・欠勤だけは厳しくしています。

 戦わずに相手を退けられたら、後は里に戻って農業をして貰います。

 屯田兵はそれで良く、彼等が戦わなくて良い様に対処したいものです。

 彼等は元々は彷徨いの果てに、人の形をしたイナゴとなった者たちです。

 二度と飢えさせない、飢えた者が持つ攻撃性等無用だと考えています」

 劉亮はこう言い、太史慈も志は立派だと思っている。

 そしてその言葉を実践するかのように、劉亮は青州に敵を入れる事無く、内の盗賊は烏桓兵を使って速やかに鎮圧し、農兵には頼らずに処理して来た。

 しかし今は乱世。

 優しさは時に害悪となる。

 十万と号する劉備軍の「元黄巾軍」が、今では文明化した弱兵になっているとバレてしまえば、青州とて危うかろう。

 太史慈は、気骨や志は賞賛に値する州牧の弱い部分を補う為、彼の部下や州正規軍を鍛えに鍛え、戦を外で終わらせるべく軍事力の強化に励むのであった。

おまけ:

張飛とか下に厳しい、鞭打ちとか苛烈な人ですが、あの人を殺したのは配下の指揮官級で、兵士に裏切られてないのはやはり

「理不尽に見えるくらい怖い将軍」

こそ求められているって事かもしれません。


次話で番外編終わります。

21時投下です。

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[良い点] 第100話到達、おめでとうございます!
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