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第7話 侯爵家産のお子様はやはりハイスペックです。く、くやしくなんてないんだから!!

 パースフィールド侯爵一家とプラスワンでの朝食後。

 窓から降り注ぐ日の光の中、クローディアとエルネストの2人は3階の廊下を歩いていた。

 2人といっても、もちろん、少し離れて後ろからミカと他メイドが一人に護衛が着いて来ている。

 なぜここを歩いているか? それは首無し騎士の亡霊の捜索の為である。

 亡霊は夜に現れるのでは?と心配することなかれ。昨日も普通に昼間に出現していたし、クローディアがここ屋敷(タウンハウス)にやって来た時も、ちゃんと昼に視えていた。それで恥をかいたのは苦い思い出である。

 要は人間と同じである。朝が弱いがちゃんとそこに存在するし、行動もしているのである。ただ、ちょっと夜の方が活発になるだけで。

 ましてや首無し騎士ほどの亡霊だ、朝日でその存在を薄くなるなんてあり得ないだろう。

 だから視える者にとって、怖くて問題なのである。

 歩きながら、クローディアは横にいるエルネストに語り掛ける。

「あの圧倒的な存在感。エルネスト様の言う通り、きっと名の知れた武将だったに違いありませんわ」

 クローディアは女子である。あまり、騎士の事には詳しくない。だが、それでもあれだけ威風堂々としているのだ。並みの騎士ではないだろう。きっと指揮官クラスの騎士だったのではないだろうか。

 その特徴も亡霊を視ていればこそである。言葉だけきいたら、抽象的過ぎて絞り切れない。パースフィールド侯爵に聞くにしてもどう聞けばよいのか。全く見当がつかない。

 自分たちに視えても、普通の人には視えないのだから。

 相手に見た事のない人物を説明するのは難しい。

 うーんと首をひねったところでひらめいた。

「そうだわ! 首無し騎士の亡霊を絵に描いてみましょう! その方が、きっとわかりやすいわ!」

「そうだね! いい考えだ! それとダメで元々だけど、話かけてみよう」

「話しかけるんですか?」

 クローディアは首を傾げる。

「うちの領地の屋敷にいた亡霊は、全然話が通じなかったけど、もしかしたら話が通じるかもしれない」

「エルネスト様、亡霊に話しかけた事があるのですか?」

 初耳である。

「話しかけたというか。来るな! あっちへいけ! とは叫んでみたよ。全然反応なくて効果なかったけど」

「そうでしたか」

 確かに怖いものをみれば、拒絶の言葉は自然口から出てしまうものである。

 亡霊とは元生きている人間である。今までの亡霊がリアクションがなかったからと言って、今回もダメとは限らない。亡霊のランク?が違えば、言葉が通じるかもしれない。そうであれば、教会へお引越ししてもらうように説得できる。

「わかりました。試して損はないですもの。わかりました。まずは話しかけてみましょう、それから絵を描くことに致しましょう。ならば一度部屋に戻って紙とペンを、あ!」

 そう話しているうちに前方に首無し騎士を発見。紙とペンを取りに戻っている暇はない。

 また姿絵を描く間、首無し騎士がじっとしてくれている筈もない。

 ならば。

「エルネスト様! 後で絵に起こす為に、なるべく首無し騎士の亡霊の姿を記憶しましょう!」

 クローディアは少し駆け足になりながら、エルネストに提案する。

「わ、わかった!」

 首無し騎士をみつけた途端、顔色の悪くなったエルネスト。

 多少耐性がついたとしてもやはり、恐怖心はぬぐえないのだろう。

「エルネスト様! 未来の心の平穏の為、頑張りましょう!」

「ああ! クローディアと一緒なら耐えてみせる!」

 うん。いつか一人で耐えられるようになりますように。いや、なって欲しい。

「行きましょう!」

 クローディアはスルースキルを発動させつつ、首無し騎士の亡霊に追いつくべく、足を更に速めた。


「全く反応なかったですわね」

 午前中、家庭教師が来るまでの短い時間、時間の許す限り、首無し騎士に観察した。

 話しかけもしたが、成果は得られなかった。

 その後、時間もない中、記憶が薄れる前にと、2人は無言でそれぞれ首無し騎士の亡霊を紙に描いた。家庭教師がエルネストの書斎にくるギリギリまで。その為、家庭教師が来るまでで、クローディアの脳はすでにフル回転しすぎてヘロヘロになっていた。

 お茶を飲む間もなく、授業に突入。なんとか授業を終え、昼食を急いで食べて、今エルネストの書斎に戻り、お茶をして一息ついている。侯爵夫人フロレンシア様が午前中から外出していたのが幸いである。若様は一緒だったものの、それほど緊張することなく、昼ご飯が食べられた。

 この時間で、写生の答え合わせをした後、エルネストは王城へ、クローディアはニコル叔父の商会へと行く予定である。

 あまり時間はない。

「では、エルネスト様、描いたものを見せてください」

 2人はそれぞれ自分が描いたものを相手に渡す。

 結果。クローディアには、全く絵の才能がないことがわかった。

 描いた当初はよく描けたと思ったのだが、いざ改めて見てみるとダメダメである。

 辛うじて鎧とわかるものの、そのほかは全く役に立ちそうになかったのである。

 更にエルネストの描いた絵を横に置くと、クローディアの絵のダメさが浮き彫りになる

 いや、比べるのもおこがましいレベルにエルネストはうまい。

 流石エルネスト様、パースフィールド侯爵家産のお子様はハイスペックである。

 ここでも才能を発揮。寸分たがわぬ首無し騎士の姿を再現したのである。

 ふん。悔しくなんかないんだから!

 と内心悔しくなったのは内緒である。

 そのエルネストの絵の中で、手掛かりになりそうなのは、やはり紋章だろう。

 鎧の胸の中央に大きく描かれている紋章

 その紋章を調べれば、きっとどこの家の者かわかる。そしてきっと首がない理由も。

 侯爵家に仕えている騎士たちの名簿などを調べればわかるかもしれない。

「エルネスト様、今日これから王城に行かれるんですよね」

「うん。王子たちと年の近い子供が呼ばれている。なんで今日なの? 僕行かなくてもよくない?」

 よくないだろう。侯爵家の子息が不参加はまずかろう。きっと将来王子様方の力になれる人物を見定める集まりだろうから。

 とは思ったものの、そんな余計な事は言わない。

「大変ですね。でも、今回はちょうどよかったですわ。絵を持って行って、お知り合いに見せれば何か手がかりが掴めるかもしれません」

「そうだね。父上にも聞いてみる」

 侯爵アウグスト様とは、朝食時しかお会いできない。それも話す間もなく朝食を取り終えると席を立って行ってしまう。

 きいたところによると、王城での仕事がかなり忙しいようである。

 おそらく、エルネストの引きこもりの件で、侯爵領に帰っていた為、仕事が溜まってしまったのかもしれない。

 侯爵様、お体ご自愛を。

「あの、お仕事のお邪魔にならない範囲でいいですから」

 うむ。侯爵にはこれはという時のみ頼りたい。働きすぎ、絶対ダメ。

「わかった」

 そうエルネストが頷いたところで、メイドが彼を呼びに来た。

「じゃあ行ってくるね」

「はい! よろしくお願いします!」

 うむ。検討を祈る。

 クローディアもエルネストに合わせ立ち上がった。

「さあ、わたくしもニコル叔父様へ会いに行きましょうか」

 はしたなくも、クローディアは右の拳を左の手のひらにぶつけた。

なかなか先に進みません(´;ω;`)

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