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第19話 可愛いは癒しです! ほっこりですわ。

短めです。

 その日の夜。いつものように寝る用意をしてクローディアの部屋を訪れたエルネスト。

 当然のようにベッドに上がり、彼女の横に来る。

 クローディアは眉間に手を当て、無言で俯く。

 確かに許したのは自分であるが、このままでいいのか。

「クローディア、どうしたの?」

 枕を抱え、小首を傾げるエルネスト。

 くっ。可愛い。可愛いは正義、癒しである。

「いいえ、何でもありませんわ」

 まだ幼児の域をでない子供である。自分のためにもよしとする。

「ララ、ごめんね。呼び出してしまって。どうしてもお話したいことがあったの」

<いいよ~。クローディアに会えるのは嬉しいし~>

 くっ! 膝の上から見上げてくるララが可愛過ぎる!! 何ここ楽園か? 可愛いが溢れている。

「どうしてもお話したい事って?」

 くりんとした目でクローディアを見つめてくるエルネスト。頭をぐりぐりしたい可愛さである。しかし幼児とはいえ、同い年の男の子においそれと触れない。我慢だ、クローディア。

「はい。今日、午後に貴族街の端の方にあるマーテンシャル教会行った時の事です」

 それからクローディアは精霊の赤ちゃんが生まれた経緯を語った。

(こて)と石がぶつかって、火花が飛んでそれが、精霊の赤ちゃんになった?」

「はい」

「そんな簡単に精霊って生まれるのかな?」

<そーねー。森の中でなら、ぽわぽわっと生まれたりするわね~>

「そうなんだ! じゃあ同じような状況を作れば、また火の精霊の赤ちゃんが生まれたりするの?」

 <んー。ここでは難しいわー。地力(ちりょく)が悪すぎるから。今回はたまたま日と時と場所と光や風そういった要素が上手く重なり合って生まれたのじゃないかしら>

「そうなんだ」

 エルネストはララの言葉に残念そうに眉を下げる。

<今回は、万分の一の偶然が重なったってことねえ>

 ララがエルネストが抱えた枕にちょこりと座り、クッキーを頬張る。

 何これ。2人の可愛さ増し増し。

 クローディアは顔を保つのが難しい。加え、話に集中するのも難しい。いかんいかん。

<それにもしまたどこかで生まれたとしても、すぐに消えてしまうでしょうね。今日はクローディアがいたから、その子は命を保てたんだと思うわ>

「そんな儚いものなのね」

 クローディアは平静を装い、相槌を打つ。

 ちゃんと話は聞いていましたよ。私。

<うん。生まれたばかりだとね~。普通の火と同じよ~。風に吹かれれば、消えてしまうわ>

「そっか。じゃあ、神様に預けてよかったのね」

<ん! 正解だったと思うわ! でなければ、ここに着く前に、その子は消えていたでしょうね>

「やっぱり」

<今頃神様がちゃんと面倒みてくれてるでしょ~>

「よかった」

 うむ。我の判断に誤りなし。

 クローディアは少し胸を張った。

<それ以外は、何か変わった事はなかったのー?>

 ララが二枚目のクッキーを手に取り尋ねる。

「ええ。残念ながら、収穫はなし」

<そ。じゃ、私、温室に戻るわね。おやすみー>

 ララはクッキーを小脇に抱えると窓から出ていった。

 男爵領や侯爵領ではいつも一緒に寝ていたが、ここのところ最小限しか温室から離れない。やはり王都は妖精には住み辛いのかもしれない。

 ちょっぴり寂しいが、王都にいてくれるだけで心強いのだから、贅沢はいえない。

「おやすみなさい」

 クローディアは窓を閉めて、ベッドに戻る。

 と、口を尖らせたエルネストがいた。

「僕、その火の精霊の赤ちゃん見たかったなあ。僕も一緒に外出したかった」

「そうですわね。私も一緒に教会に行けたら楽しかったと思います。ですが、エルネスト様がガーブス様について王城で隣国に行けるよう頑張ってくれているから、私はリフレッシュすることができました。ありがとうございます」

「僕、クローディアの役に立てた?」

「ええ。よい気分転換ができました。もしかしたら、よい考えが浮かぶかもしれません」

「なら、いいか」

 いいのか。君に働かせておいて、私はリフレッシュ散歩に繰り出していたんだぞ。

「僕、いつもクローディアには助けてもらってばかりだから」

 エルネストがはにかむように微笑む。

 くう。よい子である。うむ。もうエルネスト様、君はもう知人ではない。友達だ。

 ほっこりと心が温まったところで、眠気が来る。

「エルネスト様、明日も早いですし、もう寝ましょうか?」

「うん!」

 エルネストはとっぷりと布団にもぐりこむ。

 その顔には不安はない。

 クローディアも身体を横たえる。

「おやすみなさい。エルネスト様」

「おやすみ、クローディア」

 2人顔を見合わせつつ、目を閉じる。

 明日はよい考えが浮かびますように。

 そう心で呟いたのを最後に、クローディアの意識はすうっと落ちた。

エルネストはクローディアと2人きりの時には、年相応になりますね。

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