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お題シリーズ

神への供物

作者: リィズ・ブランディシュカ



 村のはずれの宮には、神様が住んでいるらしい。

 神の姿は見えないけれど、いつでも私達人間を見守っているのだとか。


 しかし、神様は気まぐれ。

 人間が定期的にご機嫌をとってあげないと、見守ってくれないらしい。


 だから私達は、食べ物がなくなった時や災害が起きた時、神様に守ってもらうために、ご機嫌取りとして定期的に供物をささげている。


 そういうわけだから、供物として与えられた私は、宮に踏み入れた。


 供物になった人間は二度と、宮の外には出られない。


 宮から出た者は、今まで一人もいないらしい。


 けれど、それでも皆のために、犠牲になる事を決めた。


 踏み込んだ宮の中にいたのは、小さな女の子だった。


 普通の人間と同じような姿・形をしていた。


 誰かが間違って入ってしまった?


 混乱する私に、その女の子は「遊ぼう」と言った。


 私は、女の子の遊び相手をしながら、周囲をよく観察していた。


 しかし、神様らしい存在はどこにもいない。


 やがて、小一時間ほど遊んだ後、女の子は「あきた」といった。


「もういいよ」と背中をおされて、宮を出る。


 すると、私の視界には、数々の背高のっぽの建物があった。


 見た事が無い色と模様の建物ばかり。


 頑丈そうで、透明な部品は、太陽の光をうけてきらきら輝いている。


 空には鈍色の物体が浮かんでいて、真っ青な背景に白い筋をつけながら、ゆっくりどこかへ向けて飛んでいた。


 私は「何が起こったの?」と宮の中にいる女の子に尋ねた。


 すると、女の子はこう言った。


 今まで人々を守っていたのは私が好きでやっているだけ。


 無償の愛を分け与えたに過ぎない。


 けれど、大きすぎる力には恐怖がつきまとう。


 だから、ずっとずっと昔に、その恐怖にかられた誰かが供物を差し出す事を決めたのだとか。


 しかし与えられた側は、その供物をまさか本当にどうにかするわけにはいかない。


 幸いにも供物にされるのは、人々の間でやっかい払いされたものばかりだった、だからその供物を、うんと未来の時代に移動させる事にしたのだと。


 私も元の居場所に未練はない。


 納得した私が、次に女の子に視線をうつした時、そこには誰もいなかった。


 女の子は、いいや神様の愛は、これからも供物を生み出し続けるのかもしれない。


 でも、そのそのたびに神様は、供物を助け続けるのだろう。


 そう思った私は、その場所を見守り続ける事にした。

 そして、自分と同じ供物が未来にやってきたときは、記憶の定かでない行方不明者として保護し、戸籍を与える活動を行う事になった。



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