6話
「さて、それじゃあ、プレゼンしてもらおうかな」
シャワーを浴びた俺は身支度を整えて、白衣を身にまといながら眉を顰める。
「プレゼンなんて言わないでいただきたい。それは俺のような開発者の仕事じゃないでしょう」
「まあまあ、いいから進めたまえ」
「はあ」
俺はノートパソコンを操作し、資料をスクリーンに映す。
「とりあえず、今回の目標はオーパーツに含まれている機能の解析ということでよろしかったですよね?」
「うん、そうお願いした」
華夜が頷いたのを確認して資料を捲る。
「とりあえず、オーパーツには大きく分けると7つの機能があります。事前に華夜に渡された資料には6つと書いてありましたが.......どれかと機能を混同させた可能性があります」
「ふむふむ。まあ、全部資料に書いてあるから、とりあえずそれはいいや」
「え」
俺は呆然とする。わざわざ資料をpc内に取り込んだのだが......。
「ごめんね、克志。実は、事前に情報は聞いてあるの」
「なんだと!?」
「まあまあ、竹君。今回の依頼人は華夜だから。お金を貰ったわけでもないし、華夜に機能を一々説明しても寝てしまうだけだろう」
「寝ないけど」
「君のおかげでオーパーツの機能を使って新しい機械を作るチームが出来上がっている。ただね、問題はそこじゃないんだ」
「と、いうと」
「私が教えた、最終目標は覚えてる?」
華夜が尋ねてくる。そういえば......
「オーパーツを、破壊すること」
「そう。データはどう使ってもらっても構わない。ただ、オーパーツは破壊してもらわなくちゃいけない」
「そう言われてもだな「竹君。ダイヤモンドを加工するのに使うのは?」
悩んでいる俺に天草社長が声をかけてくる。そんなもの、決まっている。
「ダイヤモンドを加工できるのはレーザーかダイヤモンド粉末で加工したカッターですよ......まさか、ですが」
「君が調べてくれたオーパーツの機能の一つに、認識阻害があるよね? 実は、オーパーツは他の場所にも存在していることが分かっている」
「そこへ行って、オーパーツを手に入れて、.......あれ、オーパーツが二つあっても、片方がもう片方を破壊するだけでは?」
「それは大丈夫だ。というか、完全破壊と華夜が言うから語弊があるんだ。『使えない状態』にすればいいとは思わないかい?」
「まあ、できれば破壊してほしいけど」
「......とりあえず、ほかにできることがなさそうなので、もう一つのオーパーツを探しに行きます」
「出発はいつにする? というか、華夜はどうするんだい?」
「ん、付いて行く。連絡先、交換しよ」
「ああ、分かった。......これで良し、だな。さて、場所はどこだ? すぐに出発しようか」
「「今すぐ!?」」
「あ、ああ。善は急げって言葉もある。それに、取りに行くだけならそこまで時間はかからないだろう?」
「はあ、竹君。とりあえず今日は家に帰って寝なさい。疲労している状態では危険なんだ」
「しかし」
「それでは、業務命令だ。今日と明日は休暇だ。そもそも、一週間連続で働いていたんだ、振替休日を作ってやらないと労基に何か言われては困る」
「はあ。とりあえず、分かりました。それでは今日はこれでお先に失礼させていただきます。それで、休日が終わったらどこに行けば」
「私が知ってるから。とりあえず、帰ろ」
「そういうことだよ。はあ、私ももう帰って可愛い妻に甘えてこようかな」
「天草は今日私を運んだだけ。もう少し仕事しなくていいの?」
「う」
天草社長は痛いところを突かれたようで、溜息を吐いた。
「まあ、少し業務してから帰るよ。それじゃあ、任せたよ、竹君。ああ、そうだ。華夜に会いに行った時みたいにスーツを着て行かなくていいからね。普段着にスニーカーで行くといいよ」
「分かりました。それでは」
俺は華夜と一緒にいつもより少し早く会社を後にした。
ダイヤモンドの加工方法を何となく知っていたので、無理やり結び付けました。曖昧なので一応調べましたが。