5話
「克志、怪我してない?」
「ああ、問題ない」
俺は日本刀にスマートフォンをかざす。そして、液晶に表示された『モード終了』という文字に触れると、日本刀が分解されて、キューブの状態に戻った。
俺はキューブに戻ったオーパーツを握りしめて華夜に尋ねる。
「俺は、これをどうすればいいんだ?」
「あなたにはそれの解析を行ってもらう。資料はあるけれど、それが確実であるとは限らないから」
「なるほど。そして俺は最終的にどうすればいいんだ?」
「オーパーツの完全な破壊。......それは、人間が持っていていいものじゃない」
「......」
華夜が寂しそうにつぶやく。なにかあったのだろうか。ただ、それを聞くほど野暮ではない。
「とりあえず、解析をしてくれたらその知識はどう活かしてもらっても構わない。新しい技術とか一杯詰まってるよ?」
「それは楽しみだ。それでは、持って帰らせてもらおうか」
「ん。時間は......半年ぐらい、かな?」
「分からん。まあ、気長に待っていてくれ。出来上がったら......持ってくればいいか?」
「ん、大丈夫。天草に報告してもらえば、天草から私に連絡が来る。そしたら、私がそっちに行くから」
「分かった。それでは、また今度会おう」
「またね。頑張って」
「ああ」
俺はキューブを握りしめて黒神社を後にした。
プルルルル、プルルルル、プルル、ガチャ
「もしもし、羽白です。......天草、どうしたの? え、え、え、もう終わったの? データは全部手に入れて、解析も終わった? う、嘘、一週間しか経ってないよ? う、うん、わかった、そっちに行くね。送迎?......できれば、お願いしてもいい? いろいろ聞きたい。うん、うん、分かった」
「......ここにいるの?」
「そうだ。さあ、入ってくれ」
「ん、お邪魔します」
違う、こうじゃない。この部品はここじゃなくてここに......いや、違う。そもそも形状を間違えているのか? とりあえずここの表面性状は......? 違う、違うぞ、違うぞ!
「クソッ!」
俺は立ちあがって飲み物を取りに行こうとして、ようやく二人の訪問者に気が付く。
「どうも、竹君。調子はどうだい?」
「天草社長、と華夜。進捗の確認ですか?」
「まだ終わってないの? なら焦らなくてもいいよ?」
「いや、解析は終わっている。天草社長に結果は渡している」
「確かに受け取っているよ。とりあえず、もう引きこもるのは終わりにすることだ」
「そうは言われても、『発想はすぐに現実に起こせ』とは社長のお言葉では?」
「はあ......。まったく、君だけの部屋を作ったのは失敗だったようだな。とりあえず、風呂に入って来い。言いづらいが、臭いぞ。私のように香水をつけたらどうだい?」
「全然言いづらくないじゃないですか......まあ、確かに白衣に臭いがしみ込んでいそうですしね。とりあえず、シャワーを浴びてきます」
「というか、寝かせた方がいいんじゃないの? 目の隈、ひどいよ?」
「まあ、これから少し話をしてもらわないといけないからね。それが終わったら好きなだけ眠ればいいさ」
「それでは、少し失礼します」
「うむ。私たちはここにいるから」
「分かりました」
俺はぼさぼさの髪の毛をわしゃわしゃと掻きながら部屋を後にした。
解析に半年も必要ない。