2話
「オーパーツ......」
俺はその単語を口の中で転がす。
オーパーツ。それは遥か昔に人類が作ったと考えられる技術の結晶。だが、俺はここまで近未来的なオーパーツなんて見たことも聞いたこともない。発見されたオーパーツはほとんどが錆びていたり、あるいは土偶のようなものであったり、壁画、本であったり......確かに奇妙なものではあるが、俺はどうしても今の科学と比べてしまい、あまり惹かれるものではなかった。
だが、これには何かある。奇妙を通り越した何かが。
「これには、どんな機能があるんだ?」
震える声で尋ねる。自分でも動揺が隠せない。
「機能は1つじゃない。けれど、今あなたに知ってもらいたい機能は2つ」
華夜が人差し指を立てる。
「1つ。それは装着することによってとてつもないパワーを生み出す。それを装着した状態なら、山も破壊できる」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。『装着』? このキューブをか? もしこのキューブのことを言っているなら、それはあり得ない。この世の中には質量保存の法則というものがあって、これが装着するための体積になるには、厚さも考えると......」
焦って華夜の意見を聞かずに講釈を垂れ始める俺。そんな俺を華夜は落ち着かせる。
「克志。とりあえず、私の話を聞いて」
「......」
俺は華夜の言葉通り黙って、もう1つの機能を尋ねる。
「もう1つの機能は、絶対に壊れない」
「そんな馬鹿な」
それは、どういう意味でだ? 硬度の意味でか? 熱で溶けることもないのか? 俺の頭が悲鳴を上げる。とりあえず、考えるのはやめよう。
「......華夜。これが、なぜオーパーツだと言い切れるんだ?」
「それは、資料が残っているから。オーパーツが置いてあった台座の下に置いてある」
俺はいったんどいて、代わりに華夜が本殿の前に立ち、ゴソゴソと資料を探す。
「これ」
華夜から数十ページにも及ぶ厚さの本が手渡される。受け取り、ざっと中身に目を通す。
「確かに、オーパーツのようだ」
とりあえず、小難しい場所を読み解くのはあとにしよう。俺はこれがオーパーツであることを確認した。
「これでようやく次の話に行ける」
華夜が口を開こうとした瞬間、鳥居の方から声が聞こえてくる。
参拝客ではなさそう。