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2.アル・クロスナーside

 ヴィエラザード──。

 そう呼ばれる世界で、俺ことアル・クロスナーは、勇者──ではなく、その仲間の魔法剣士をやっている。

 いや、勇者とか無駄に目立つポジションより、仲間の魔法剣士ぐらいのポジションの方が俺は合ってるんだ!

 世間では、魔法も剣も中途半端で器用貧乏な職業だと言われているが、ちゃんと役立ってるんだぞ!

 多分だけどな!


 さて、俺が今何をしているかと言うと、街を襲って来た魔王軍の幹部である、暗黒司祭グラフと配下の魔物供を追い払っている真っ最中だ。

 雑魚の魔物供はメイジのラーナと剣士のジェイクに任せて、俺は勇者ウェイン、ヒーラーのアリスと共に、暗黒司祭グラフの元へ向かう。


「グラフ! もう逃げ場は無いぞ!」


 グラフを追い詰めた勇者様が、剣を抜き臨戦体勢を取る。

 剣を構えるウェインは闇夜を彷彿とさせるような黒い髪に、それと同じような漆黒の瞳でグラフを睨む。

 吊り上がった鋭い目つきにその整った顔立ちは、誰が見ても美青年だと感じるはずだ。


「アリス、下がってろ」

「はいっ」


 俺は戦闘能力の無いアリスを守る為に、アリスの前に出る。

 俺の後ろで杖を構えるアリス。

 肩ぐらいまで伸びたサラサラの銀髪は、月の光を反射して蒼白く輝き、幻想的な雰囲気を醸し出している。

 幼さを感じさせるタレた目尻と力強さを感じさせる紅く煌めく緋色の双眸を携えた美少女。

 年相応に発育した体、そこから伸びる手足はか細く弱々しい。

「何としても守らなければならない」と、思わせるような可憐な姿。

 戦闘中でなければずっと見ていたいものだ。

 そう、俺はこの娘に片思いしている。

 そして、この戦いが終わったら、告白するつもりでいるんだ。


「ええい……忌々しい勇者め」


 おいおいおいおい、何で勇者だけ忌々しいんだ?

 俺様は眼中に無いってか?

 ナメ腐りやがって!


「この根暗野郎! このアル様が直々に叩っ斬ってやる!」

「待て、アル! 奴はどんな暗黒魔法を使ってくるか分からないんだ! 迂闊に動くな!」


 勇者様に叱られてしまった!

 全部この根暗野郎の所為だ!


「アル、冷静になって!」


 アリスにそう言われてしまっては冷静にならざるを得ない。


「しかし、このまま睨み合っていてもラチが開かないぜ?」

「ダメだ、油断してはいけない」

「追い詰められたヤツ程、何するかわからんってか?」


 勇者様は慎重過ぎるんだ!

 こんなもん、サクッと斬って終わりだってーのによぉ。

 俺は早く終わらせて、アリスちゅわんに思いの丈をぶつけたいんだよ。


「ククク、どうした? 臆病風に吹かれたか勇者ウェイン」


 追い詰められた子羊が、一丁前に勇者様を挑発している。

 ふん、ウチの勇者様はそんな安い挑発に乗る御方ではないのだ。


「でもウェイン様、アルの言う通りこのままではラチが開きません。 それに、北門で魔物を抑えているラーナとジェイクも心配です」

「っ……確かに」


 いくら相手が雑魚とは言え、数で攻められればあいつらでも危ない。


「あまり時間をかけていては、街の被害も大きくなります」

「くっ!」

「おい、ウェイン!」


 こんだけ言っても、まだ目の前の敵に躊躇してるのか?

 さすがにビビり過ぎだぜ勇者様よぉ。

 どんな暗黒魔法使ってくるか分からない?

 そんなもんありゃ、とっくに使ってるだろう。

 無い物にビビって及び腰になるのは冷静とは言わないぜ!


「ウェインがやらねーなら俺がやる!」


 俺は剣を構えて走り出し、グラフの懐に飛び込んだ。


「アル! 待て!」

「待てねぇよ!!」


 俺はグラフに斬りかかった。


「阿呆め!」

「何?!」


 無詠唱魔法だと?!

 しかもなんだこれは!? 見た事もない魔法だ!


「アル!」


 クソ、しくじったか?!

 ウェインの言う通り、隠し魔法があったとは!

 俺は未知の魔法の衝撃に耐える為に瞬時に魔力の壁を張り防御体勢を取る。


「どんな魔法かはわからねーがこれで──」

「アルゥー!!」


 その未知の魔法に飲み込まれて、世界が真っ暗になった瞬間、アリスが俺を呼ぶ悲鳴のような声が聞こえた───。






 どれぐらい気を失っていたんだろうか? 数秒? 数時間?

 わからない。

 少しずつだが、体に力が入るようになってきた。

 体に痛みは無い。 まだ戦える。

 なら、眠ってる場合じゃない。

 戦いがどうなったかも分からない。 起きて確かめなければ!


 俺は、目を開けた。

 そこには、見たこともない天井が視界に広がっていた。


「うおおおおい! ここはどこだぁ!?」


 知らない場所だった。


「びっくりしたー! あ、目、覚めましたか?」


 不意に右横から女の声がして、俺はそちらに視線を向けた───。


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